高校3年になる春休み、野球部で打撃投手をしていて、打球を右目に受けた。鼻を骨折、網膜にも穴が開いていると診断を受け、入院した。医師は「視力は回復する」と言ったが、不安で夜は眠れなかった▼先日、県立盲学校で、全盲の津軽三味線奏者、踊正太郎さんの演奏会を取材した。スピード感のある激しい演奏は、目が不自由だと感じさせなかった。高等部2年の女子生徒は、視力を失う前からピアノを弾いており「見えなくなって演奏の幅が広がった」と笑顔で話していた▼一つの感覚を失うことは、恐ろしいことだろう。障害を乗り越えた人の話には感動させられる。そういう人たちをもっと取材し、感じ取ったものを発信していきたい。【宮本翔平】
毎日新聞 2009年9月15日 地方版