産婦人科に戻る若手医師 支援策が効果、増えた学会新規会員
9月15日7時57分配信 産経新聞
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(写真:産経新聞) |
[表でチェック]全国の医師数の推移
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■10年以上前から減少
産婦人科の医師不足は18年2月、福島県立大野病院で手術を受けた産婦が死亡し、執刀医が逮捕された事件(20年9月に無罪確定)をきっかけに表面化。勤務医の過酷な労働状況や医療訴訟リスクの高さなど産科医療を取り巻く厳しい環境が明らかになり、若手医師の産科離れが進んだといわれる。
しかし、実際には事件の10年以上前から産科を敬遠する医師は増えていた。厚労省の調査では、18年までの10年間で医師の総数が約15%増える一方、産婦人科は6%減と右肩下がり。日産婦の新規会員数も医師免許を取ったばかりの医師に2年間の臨床研修を義務づける制度が導入された16年度まで減少傾向をたどった。16、17年度は新制度導入で研修中の医師の入会が減ったため激減。18年度から増加に転じ、20年度にようやく制度導入前の15年(415人)を32人上回った。
■やりがい大きい
8月上旬。長野県松本市のホテルに約300人の研修医と医学生が全国から集まった。日産婦が主催するサマースクールに参加するためだ。1泊2日の日程で、講師を務めるのは大学病院の教授や中堅・若手医師。参加者は新生児の蘇生(そせい)法や超音波診断の実技に取り組んだ。
サマースクールは今年で3年目。最初の年に87人だった参加者は翌年174人に増え、今年は約300人に拡大した。男性研修医(29)は「参加者が多いので驚いた。命が誕生する瞬間に立ち会えるのは産科だけ。その分やりがいも大きい」と希望を語った。
若手医師離れに危機感を抱きサマースクールを発案した富山大産科婦人科学の斎藤滋教授は「どうしたら産婦人科の魅力が伝わるかプログラムを真剣に考えた。1年目は手探りだったが、2年目に参加した研修医(129人)の7割が産科医になっている。産科医は少しずつ増えている」と話す。
一方、大学病院も医学生獲得に動き出している。横浜市立大の産婦人科には今年度15人(関連病院も含む)の若手医師が入った。2年前の3人に比べると大幅な増加だ。
■都市部に風
若手医師が戻りつつある背景について、同大産婦人科の宮城悦子准教授は「『少ない、大変、入らない』の悪循環が続く中、医学生に声をかけ、産婦人科の魅力をみんなで懸命に伝えてきた。地方はまだ厳しい状態が続いているが、都市部には風が吹きつつある」と語る。
国が産科医の待遇改善策に乗り出し、医療現場に安心感を与えたことも影響しているようだ。
厚労省は今年から出産時のトラブルで新生児が重度の脳性まひになった場合、母親側に総額3千万円を支払う「産科医療保障制度」をスタート。医師に対する分娩(ぶんべん)手当や研修医への手当ての支給も助成している。
日産婦の吉村泰典理事長(慶応大教授)は「待遇改善の影響は大きい。学会としても女性医師が働きやすい環境整備などさらなる改善に取り組んでいきたい」と話している。
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最終更新:9月15日12時59分
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