今月、アフガニスタンでドイツ軍の司令官が確認をせず、空爆を要請した疑いが浮上して、ドイツ国内で波紋を広げています。
8日、ベルリンに海外で殉職した兵士らを弔う「栄誉の碑」が建てられました。ドイツでは戦後初めてとなる国際貢献をたたえる施設です。ここに、今月初めの空爆が暗い影を落としています。
4日、アフガン北部で国際治安支援部隊=ISAFがタンクローリー2台を狙って空爆を行い、反政府武装勢力タリバンら90人以上が死亡。直前に軍所有のタンクローリーをタリバン側に奪われ、自爆テロに使われることを恐れたドイツ軍が空爆を要請したものですが、死亡者には大勢の市民が含まれていました。
「ドイツのせいで罪のない死者が出たことを遺憾に思います」(ドイツ メルケル首相)
空爆の要請は正当だったのか。その根拠となる情報確認を怠ったのではないかと、ドイツメディアは軍を批判しています。
ドイツ軍の司令官は「現場にいる人間は全員がタリバンだ」という情報を得て空爆を要請したということですが、民間人がいないか確認を怠った疑いが浮上。
「空爆要請の際は複数の情報源に確認をとる」という、NATO軍の規約に違反した可能性があるほか、「そもそもタンクローリー奪還が目的なら地上軍の派遣で十分だった」という指摘も出ています。
ドイツ軍はアフガン北部を中心に4200人の部隊を派遣しています。学校や橋を現地につくる「民生支援」が活動の中心ですが、外国軍駐留に反対するテログループが警告を続けていました。
「ドイツ政府はこの戦争に参加する犯罪的な政府だ!」(イスラムジハードユニオンの若者)
死者が急増し厭線ムードが高まる中、民間人を死亡させた可能性が高い空爆問題が持ち上がり、アフガン撤退論に拍車がかかっているのです。
ドイツでは2週間後に総選挙を控え、アフガン駐留の是非が大きな争点になりつつあります。
「今、撤退すれば、女性はまた地下室に閉じ込められ、少女は学校に通えなくなる、農民は麻薬栽培を再開する。あと何年ドイツが(アフガニスタンに)駐留すべきか話し合う必要がある」(ドイツ シュタインマイヤー外相)
しかし、最新の世論調査では、国民の7割が早期撤退を望んでいます。今回の空爆問題はドイツの国際貢献のあり方そのものを問う議論を巻き起こしています。(14日23:13)