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慈善事業としての募金活動で完成した「自社ビル」には違和感を持つ人もいる(円内は澄田智会長)


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 陰に隠れるように影が薄くなった赤い羽根共同募金




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[慈善活動]

日本ユニセフ協会の一人勝ちで
その募金活動に出始めた“反発”

■澄田智・元日本銀行総裁を会長に、評議員には皇太子妃雅子さまのご母堂のほか、全国知事会から大手マスコミ各社まで首脳の名がズラリと並ぶ日本ユニセフ協会には、やり手がいる――

なぜか一般公開されない
DM送付のリスト入手先


 ボーナス・シーズン近くになると舞い込んでくるのが、日本ユニセフ協会からの寄付依頼のダイレクトメール(DM)。同協会に寄付経験のない人のところにもDMが寄せられることでも知られる。同協会が寄付とグリーティングカード・グッズ販売で年間に集める金額は167億円余(2004年度)。マーケティングには中堅企業顔負けの3億円以上を使い、NPOの中では一人勝ちの存在だ。東郷良尚・専務理事体制下で巨大化する同協会の募金活動は、「日本の寄付文化を変えた」との前向きな評価もある。だが、実は反発も思いのほか多い。善いことをしているのに、なぜなのだろうか。時あたかも、歳末助け合いの季節。その成果との格差にも驚く。
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 日本ユニセフ協会は、国連児童基金(ユニセフ)の支援を行っている財団法人。世界37カ国に置かれているというユニセフの国内委員会の一つというのが同協会の謌い文句だ。だが、ユニセフ本部直轄のユニセフ駐日代表部とは別組織で、前者が民間対応、後者が日本政府に対する協力要請を行っている。親善大使も、ユニセフでは黒柳徹子氏、日本ユニセフ協会ではアグネス・チャン氏と異なる。
 同協会は、1950年2月に発足した任意団体の日本ユニセフ協会を母体として、55年2 月に財団法人化し、現在に至っている。同協会の募金額が急増し始めたのは、東郷平八郎元帥の係累にあたる東郷良尚氏が専務理事になった92年度以降のこと。日本航空のサラリーマンから同協会に転じた東郷氏は、それまでの橋本正氏(橋本龍太郎・元首相の母)の下で行われていた慈善事業的な運営手法の代わりに、企業的な経営手法を導入した。この結果、協会が募金から年度ごとにユニセフに拠出する額は、92年度の26億5000万円から2000年度には103億5000万円と100億円を突破、04年度には136億円に達している。
 募金額急増の中心的役割を果たしたのがDMによる募金集めだ。日本ユニセフ協会はそのホームページ(HP)で、DMによる募金は、欧米で実施されていることを根拠に93年から本格実施しているとしている。
 問題はその送付先名簿の入手方法だという指摘がある。同協会では、DMは「これまで協力いただいていない方にも」送られ、宛て名は「電話帳やDMを取り扱う会社の各種名簿を基にお送りしています」と説明している。だが、NPO、特に国際関係の社会福祉に係わるNGO関係者の間では、日本ユニセフ協会が信販会社などから顧客名簿をもらっていることは周知の事実だという。善意の寄付を募るためと思えば、当然、疑問も湧くだろう。かつてはダイヤモンドビッグ社発行の『地球の歩き方』の読者37万人の名簿を日本ユニセフ協会が入手したことが明るみに出て、問題化したこともある。

巧妙になっているDM手法への反発も

 では、その入手先を公表しているかというと、個人情報保護法に沿っているので問題はないという姿勢で、取材にもそれを明かさない。「DMを受け取られた個人の方から当該個人データのリスト基の照会があれば、個別に開示しております」と言うだけである。
 DMには「3000円で100人の子どもに抗生物質を5日間投与できます」などといった文言が印刷され、送付された個人が使うようにと、その個人の住所、氏名が印刷された差出人用シールまでが入っている。DMはニューヨークのユニセフ本部から送られている。
 マーケティング的には、日本ユニセフ協会のDM手法は巧妙。思わず、3000円を寄付する人は多く、中には「ここまでされると気味が悪いから寄付した」という声も聞く。かと思えば、継続寄付者の中には「ユニセフに寄付した」と誇らしげに語り、寄付行為によって社会的なステータスが上がったような感じを持っている人も見受けられる。さらに、差出人シールを使うことで、知らず知らず自己PRと日本ユニセフ協会PRをしている人も出る。
 もちろん、ノーブレスオブリージ、今風に言えば社会貢献ということは、すばらしい習慣だ。しかし、これがユニセフ独特のマーケティングとセットになっていることを振りかえると、その精神の喚起手法に疑問符が付くのも否めまい。むしろ、その精神からは遠ざかっているように思ってしまう人がいるのも現実である。
 前述のように日本ユニセフ協会は、名簿の入手は問題がなく、その管理は入念に行っているため、個人情報保護法上も問題がないという立場をとっている。しかし、これは思い上がりだろう。確かに人道支援の理念は立派だ。アフリカやアジアなどの、飢えやエイズに苦しみ、就学機会を奪われている児童の支援、といわれると、私たちの琴線に触れるものがある。といって、本人が知らないところで、登録した目的と異なることに氏名、住所が使われることは、名簿業者の暗躍する世相からしても違和感を覚える。まして、公表はしないが、あえて「個人から問い合わせがあれば答える」という名簿利用の姿勢には、善意に基づく行為を求めるのとは逆の思惑が感じられる。
 欧米ではDMによる募金活動は一般的というが、欧州では個人情報保護の動きは強まっている。日本ユニセフ協会は何よりもまず、過去にさかのぼって、これまでのDM送付の名簿入手先を明らかにすべきだと思うのだが、いかがなものであろうか。

募金を活用した相続対策も指南

 日本ユニセフ協会の募金手法はDMだけにとどまらない。旅行で持ち帰った外国コイン募金、月極めの寄付額の銀行・郵便局の口座からの自動引き落としもあり、インターネットによるクレジットカードでの募金手法も用意している。外国コインの搬送では航空会社が協力しているし、自動引き落としでは、全国の取扱額が大きいだけに、銀行、郵便局ともに日本ユニセフ協会には特別の協力を行っている。同協会HPのインターネット募金の欄には、ほとんどのクレジットカード会社の名前が連なっている。さらに企業には、従業員が寄付した額と同額を上乗せするマッチング・ギフト採用を呼びかけている。
 同協会は最近、遺贈プログラムにも熱心だ。「ユニセフ・相続セミナー」と銘打って、遺産、相続財産への対処を指南している。同協会は、国税庁が認定している認定NPO。認定NPOは約2万のNPOのうち、36法人に過ぎない(05年8月末段階)。認定NPOは、個人、法人が寄付した際に、所得控除、損金算入を受けられる対象となり、遺産相続の際にも寄付額の控除を受けられる。遺産相続時の寄付額では3000円ということは考えられない。寄付の名誉と税控除を同時に実践するという、実に巧みなマーケティング手法だといえよう。
 東郷平八郎元帥の係累にあたる東郷良尚・専務理事の下で巨額の募金組織となった日本ユニセフ協会の役員名簿を眺めると、錚々(そうそう)たる名前が並んでいる。会長は澄田智・元日本銀行総裁で、評議員には皇太子妃・雅子さまのご母堂である小和田由美子氏のほか、全国知事会、全国市長会、全国銀行協会、日本証券業協会、小中高の各校長会、連合、全国地域婦人団体連絡協議会、大手マスコミ各社首脳などの名がズラリと並ぶ。評議員の数は52人に及び、影響力のある団体、企業のトップを評議員にしている。ここまで陣容を整えたNPOはない。巧妙なマーケティングに加えた、セレブ、職能・利害集団の影響力の行使だ。専務理事以外は全員が無報酬のボランティアだというが、その存在感は単に名前だけというレベルではない。
(以下、本誌をご覧ください)
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