Jリーグコラム Jリーガーの素顔
Jリーガーの素顔「中村憲剛選手編」
2009年9月14日
1、サッカー小僧のまま大人に…
現在、スカパー!にご加入されていますか?
『スカパー!サッカー』の取材だから言っているわけではなく、スカパー!はすごく活用していますよ。家でも大体、スカパー!のサッカー中継にチャンネルを合わせています。海外サッカーからJリーグ、J2までサッカー全般を観られるようにしています。
中村選手はバルサがお好きなのですよね?
バルサは好きですね。前はCLでバルサの試合をチェックしていましたが、今はスカパー!でもリーガが映るようになったので、よく観ています。
お気に入りの選手はいますか?
やっぱり、シャビやイニエスタは好きです。フィジカルをウリにしていないというのは、自分にも通じる部分がありますし、そういう選手が世界のトップにいるというのは何か理由があると思うんです。それを少しでも見抜ければいいのですが、わからないんです。いや、わからないというよりも、わかりきっている部分しかわからない。結局、技術が高いとか、戦術案が豊富にあるとか、そういった表面上のことしかわからないんですよね。
海外サッカーはリーガを中心に観ているのですか?
プレミアもセリエもリーガも観ますし、あまりリーグにこだわりはないです。だから、今から家へ帰ってミランの試合がやっていたら観ます。ただ、その中でもバルサが好きというだけです。
試合をご覧になっている時はどのような視点で観ているんですか?
自分のプレーの参考にするために集中して観ている時もあるし、そうでないときもあります。でも、ボーっと観ていても自然と中盤の選手には目がいきます。僕の中ではサッカーを観るというのは、リラックス方法の一つなんです。
家でもサッカーモードだと頭の疲れというのはないのですか?
最近はそういった生活が続いているので、さすがに慣れました。練習場を出たらサッカーから離れるという選手もいますが、僕は自宅でサッカーを観ますし、サッカーゲームもやります。完全にサッカーが生活の一部になっているんです。プロに入った最初の頃は練習場から出たらサッカーと離れるようにしようと思っていたのですが、結局、サッカーが大好きだから無理なんです。
仕事も趣味もサッカーという感じですか?
まさにそうですね。仕事も趣味もサッカー。基本的にサッカー馬鹿であってサッカー小僧。小僧って年齢じゃないけど、サッカー小僧のまま大人になってしまいました。自分で言うのもなんですが、こんなにサッカーが好きな人はいないと思いますよ。
中村選手はご自身が出場した試合は絶対にビデオでご覧になる、というのを伺ったのですが、それはいつ頃から続けているのですか?
小学生の頃からです。昔は父兄がハンディカメラで撮ってくれた試合の映像を観ていました。今はスカパー!で生放送を録画して自宅へ戻ったらそれを観るという感じです。基本的に自分のプレーを観るのが好きなんです。上手くいったプレーも良くないプレーもビデオを観ないと改善できないと思うんです。ただ、絶対に観なければいけないと決めているわけではないんです。いつの間にかそういう習慣になっていただけですよ。
そういった中で毎回、課題を見つけていくのですか?
課題よりも反省ですね。無茶なところでターンをしていたり、トラップの場所など反省点を見つけることで絶対に次の試合に活きてくると思うんです。
海外サッカーを観て、自分の試合を観て、さらにJ2まで観ているんですよね?
J2も観ちゃいますね。大学の後輩とか知っている選手が多いのでつい気になって…。湘南の田村(雄三)には観た試合のことなどよく電話で話したりもします。
元々FWだったと伺ったのですが、今も海外サッカーを観ているとFWの動き出しなど気になったりしますか?
FWだったのは小学生の頃だけですから、今は気にならないです。海外サッカーなどを観ていて「うわ〜、上手いな〜」とは思うけど、それが自分のプレーに活かされるわけではないので、それだったらパスを出すタイミングに注目していた方が参考になります。ただ、自分のチームのFWの動きはメッチャ観ます。気になったらすぐに言えますからね。
2、GPS的な視点の秘密
中村選手のプレーについて他の選手に訊いてみると、ピッチを俯瞰しているような視点でプレーをしているという声が多くあります。そういった視点でプレーするために意識していることはありますか? そう言われるのは十何年も自分のプレーをビデオなどで観ているから、感覚として染みついているのかもしれませんね。確かに、こういうイメージかなと考えてパスを出すこともありますが、特別意識していることはないです。あと、ビデオはもちろんだけど、サッカーゲームの影響というのは確実に大きい。ウィイレ(ウィニングイレブン)は自分でも相当役に立っているな〜って感じます。その話を以前、コナミの人に話したらすごく喜んでくれました。
ゲームはチームメイトとも対戦したりするのですか?
今はあまりやっていないですね。皆、今はドラクエに忙しいみたいだから…。
プロサッカー選手がウィニングイレブンをやると自分のプレースタイルが出ますか?
サッカーゲームは本番の試合よりも自分の意思が反映するので、プレースタイルは出ると思います。現にワンツーを駆使して、いいリズムで展開している時、うちの奥さんにゲーム画面の11人全員が中村憲剛のようだと言われたこともあります。
ここまでお話を伺っていてすごく明るい人柄というのが伝わってくるのですが、ご自身ではどういった性格だと思いますか?
よく普通のお兄ちゃんのようだと言われますが、フィールドの中では結構、豹変します。試合では絶対に負けたくないので、思ったことは言うし、時には厳しいことも要求する。だけど自分も頑張らないと示しがつかないので、勝つために努力します。プロの選手は皆そうだけど、まず負けず嫌い。そうじゃないとプロは務まらないと思います。
サッカーゲームでも負けず嫌いですか?
今はちょっと大人になりましたが、学生の頃は負けると悔しくてコントローラを投げていました(笑)。本当に負けたくなかったんですよ。実際、その負けず嫌いの性格のおかげで結構、強くなりました。
中村選手が、サッカーから離れるときはどういったときですか?
サッカーのことを考えないときはないです。特に今は連戦中だし、それでいいと思うんです。でも、僕にとって試合を観たりすることは、サッカーから離れている感覚なんです。
現在、7連戦の真っただ中で身体も気持も相当疲れていると思いますが、練習にも試合にも多くのサポーターが応援に来てくれると頑張れるという気持ちが出てきますか?
はい、お客さんあっての僕たちですからね。スタジアムにもたくさんのサポーターが来てくれるし、練習場にも多くの人たちが足を運んでくれる。その分、頑張らないといけないし、プロとして楽しいものを見せなければいけない。グラウンドではチームの勝利のために全力を尽くしますが、結果として、それがサポーターの喜びに繋がるのだから頑張ろうと思います。その気持ちは日本代表でも同じです。サポーターはありがたい存在ですよ。自分はプレーをしないのに応援してくれるんですから、本当にすごいし、ありがたいです。
3、プロとしてのこだわりとチーム内の流行り
小学生の頃から、サッカーをやってきて、ずっとプロになれると信じてプレーしていたのですか? 「プロになりたいな〜」と、ばく然と考えていましたが信じてはいなかったですね。実際、プロになれる力がないというのは自分で知っていましたから…。
しかし、今は川崎や日本代表で中心選手としてプレーしています。学生の頃、現在のこういった状況を想像していましたか?
自分でさえ、こうなるとは予想できませんでした。だから、僕の当時を知っていて今の姿を想像できた人がいたら相当すごいですよ。プロに入るのも難しいという状況でしたから。実際、プロに入って4年目で日本代表に呼ばれた時、奥さんと「4年前はただの学生だったのに誰が想像できたんだ!?」と言っていました。本当に何が起こるかわからない! あとは、プロに入ったもん勝ち(笑)。そこから努力するか、しないかは本人次第ですからね。僕の場合、いいチームメイトやいい監督と出会えたというのもラッキーだったと思います。
それを引き寄せるだけの力が中村選手にあったんじゃないですか?
そういう運をもっているのなら、もっと早くプロになっていたと思いますよ。ただ、学生の頃からプロになった今でも全く変わらないのは、好きでボールを蹴っていること。だから、こうして毎日サッカーをできるなんて本当に最高ですよ。好きなサッカーをして、お金をいただいて、生活できているんですから、本当に申し訳ないですよ(笑)。
そこまでお好きだと、オフなどを利用して草サッカーをしたりもするのですか?
身体を休ませないといけないのでやらないですね。練習でしっかりやっているので、ここ(練習場)から出たらほとんどサッカーはしません。頭と心はサッカーモードでもいいんですけど、身体は動かしません。怪我するもの怖いですから。そこは若干、プロっぽい部分かもしれません。
中村選手は大きな怪我をしないというイメージがあるのですが、何か特別なことをされているのですか?
確かに、今のところ大きな怪我はないですね。でもフィジカルコンタクトは嫌いじゃないんです。僕にとっては特別なことではないけど、家でストレッチしたり、バランスボールに乗ったりはします。子供が小さい頃は、抱っこしながらバランスボールに乗って寝かしつけたりしていました。「一石二鳥じゃん!」とかいいながら(笑)。
何かの達人のようですね(笑)。他にプロサッカー選手としてこだわっている部分はありますか?
ご飯を食べて、ゆっくり寝て、思いっきりサッカーをやることの繰り返しなので、特別なことは何もないです。もちろん、その中に試合があるのでビデオで研究したり、それを練習で試してみたりはしますけどね。
食事など気を使っている部分はありますか?
食に関してはプロサッカー選手の中でもストイックな方ではないです。皆さんと何ら変わりない食生活ですよ。間食はせず、奥さんの作った食事をおいしく食べるということくらいです。
現在、チーム内では空前の丸刈りブームですが、中村選手はやらないのですか?
絶対にしない! なぜか流行っていますが、いい迷惑です。周りからも言われますが絶対にしません。この間の山形戦(8月23日)も田坂が2点獲ったら僕が坊主にならなければいけないとチームメイトから言われていましたが、1点だけだったので助かりました。
中村選手は運動神経がいい雰囲気がするのですが、他のスポーツにチャレンジしたことはあるんですか?
野球、バスケ、卓球など他のスポーツはびっくりするくらいできません。かなり海へ行っていそうな肌の色をしていますが、泳げませんからね。本当にサッカーだけしかできないんです。でも、いいんです。僕はこれでご飯を食べているから(笑)。
4、代表への想いと今季の目標
中村選手がサッカーを始めたきっかけは何だったのですか?
サッカークラブに入ったのは母親のすすめでした。でも、直接のきっかけは86年のW杯を観たことですね。
そのW杯に来年、出場するかもしれないというのはどういうお気持ちですか?
まだ、出られるという保証は何もないです。予選に出ていても本大会のメンバーに入らなかった人をたくさん観ているし、そういう経験をしている人たちにも直に会っていますから、来年どうなるかは本当にわかりません。
では、そのW杯を目指すため、もっと伸ばしたい部分はどこですか?
基本的には全部。もっと上手くなりたいし、もっと色々なことができるようになりたい。どこっていうより全般を伸ばしたい。今の代表だと攻守の切り替えの早さ、ディフェンスの球際の激しさ、パススピードや質、挙げたらきりがありません。いきなりグンと上手くなることはないから、それは日々、チームでの練習を大事にして力を伸ばしていけたらと思います。でも、ここまできたらW杯に出たいです。実際、W杯みたいな大会は、代表の常連のような選手たちが出るところだと思っていたんです。だから、“そういう人たち”においていかれないように必死でやってきた結果、ここまで来たので…。今でも常に危機感と隣り合わせで、いつ落ちてもおかしくないと思いながらやっています。
日本代表に最初に呼ばれた時、どう思いましたか?
今まで一回もそういったカテゴリーの代表に入ったことはなかったので嬉しかったですよ。あとは大丈夫かな、という不安と心配ですね。でも、グラウンドに入ってボールを蹴ってみると、そういったコンプレックスは解消されました。
中村選手を初めて代表に抜擢したオシムさんとの出会いは、やはり大きかったですか?
サッカーについてすごく考えさせられました。僕もそういうつもりでサッカーをしていたのですが、オシムさんはもっと奥が深かった。「考えて走る」というのは当たり前の話で、その質を求められました。とにかく僕はよく怒られましたよ。監督でもあり、先生でもあるという感じです。オシムさんが一番勉強しているので、僕らは太刀打ちできない(笑)。本当に、あんな人は他にいないと思います。
日本代表としての国歌斉唱は感慨深いものがありますか?
あれはヤバいです。日本代表として初めてグラウンドで国歌を歌ったのがインドだったのですが、異国の地で『君が代』を聴いた時は、これまで以上に自分は日本人だというのを実感しました。
中村選手にとってサッカーとはどういった存在ですか?
すべてです。サッカー抜きで人生を語れない。例えば、あなたの人生をサッカー抜きで話してと言われたら生まれてから3〜4年しか話せない。それ以後はサッカーと出会って一緒に生きてきました。こんなに楽しいものは他にありませんよ。
今シーズンも後半戦に入りましたが、目標をお聞かせください。
当然タイトル獲得です。今はそれに向かってチームとして動いています。そして、個人的にはもっと上手くなりたいし、怪我をせずに無事にシーズンを終えたいです。
それでは最後にスカパー!をご覧の皆さんにメッセージをお願いします。
スカパー!最高です。こんなにサッカーを観られるところはないですから、僕はすごく好きです。皆も絶対に楽しめると思うので、加入していない人は入ってほしいです。僕はあまり観ませんが、サッカー以外にも色々なチャンネルもあるみたいですしね。何かしら好きなチャンネルあると思うので、ぜひ!