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図書館チェンジ、「滞在型」 東京女子大、改装2年目

2009年9月14日

 お堅いイメージが強かった大学の図書館が変わり始めた。自由に使えるパソコンが並び、おしゃべりや飲食のできるコーナーがある。学習相談も受け付け、先輩が丁寧にこたえてくれる。目指すは「滞在型図書館」。学生たちに支持され、利用者が増えているという。改装して2年目を迎えた東京女子大(杉並区)の図書館を訪ねた。

    ◇

 ペットボトルの飲料やカップめんを持って入ってくる学生がいる。本や資料を見ながら談笑するグループも。約50台のパソコンは満席で、キーボードを打つ音だけが響く。

 同大の図書館(地上3階、地下1階)が、1階(約1400平方メートル)を中心に新しいスタイルになったのは昨年4月のこと。

 事務室のスペースを削って新設したのは、パソコンがあるメディアスペースのほか、飲食可能なリフレッシュルーム(約50席)▽会話をしながらグループ学習ができるコミュニケーション・オープンスペース(同)▽企画発表会などに使うガラス張りのプレゼンテーションルーム、など。2階には個室形式の閲覧ブース(8席)を設けた。

 「ニーズや用途に合わせ、いろいろな使い方ができる場所をつくれば利用も増えると考えた」と大田ヒロ子・教育研究支援部長。07年度に文部科学省の「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」に選ばれ、当初の計画を前倒しした。年間2千万円近い補助金を10年度まで受けられる見通しだ。

 運営面では、学生たちを活用する仕組みを導入した。

 大学院生の学習コンシェルジェ(8人)が、リポートや卒業論文を中心に学習全般の質問に応じる。学部生のシステム・サポーター(9人)は、パソコンをはじめ情報機器の使い方を担当。サポーター(32人)は本を書架に戻す仕事をしながら、資料探しなどの助言をする。

 これらアルバイトのほかに、利用案内のボランティア(7人)もいる。

 コンシェルジェの大学院修士課程1年、飯田百合子さんは「私の専攻が日本文学なので、卒論やリポートでどんな文学作品を取り上げ、どうアプローチしたらいいかの相談が多い。後輩の話を聞く機会になり、研究者を目指す私自身の勉強にもなる」と話す。

■「使える」、入館3割増

 新しい図書館に、学生たちはすぐに反応した。

 図書館のパソコンを使えば、データベースや蔵書を活用しながら卒論やリポートを書けるので、重い本を借りて持ち帰る必要がない。試験中や卒論の締め切り前は利用が殺到し、入れ替え制をとっている。

 2、3階と地下1階の従来型の閲覧席(計約450席)はそのまま残してある。図書館によく来るという1年生は「1人の時は2階の閲覧席、友だちと一緒の時はコミュニケーションスペースです」。従来の閲覧席が静かになる効果も出ているという。

 橋本春美・図書館課長は「学生たちが工夫して使い分けている。図書館が『使える場所』と知り、口コミで広がった」と分析する。

 活字離れやネットの普及で、閉館時間を遅くしても減り続けていた入館者数が、改装後は上昇に転じた。昨年度1年間で前年より32.5%増え、今年4〜6月も9.7%増加した。学外から注目され、昨年度は26件の視察を受け入れた。

 「本を増やした方がいい、という声がないわけではない。でも、実際に入館者が増えている以上、今後もニーズにこたえていきたい」と大田さん。橋本さんは「本や資料が充実している図書館ならではの学習支援をしていきたい」と意欲を燃やす。(小石勝朗)

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