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住友銀行名古屋支店長射殺事件:14日時効 企業テロ?謎のまま 拳銃所持の男病死

 住友銀行(現三井住友銀行)名古屋支店長、畑中和文さん(当時54歳)が94年9月、名古屋市千種区の自宅マンションで射殺された事件は14日で公訴時効を迎える。凶器の拳銃を所持し、鍵を握るとみられた近藤忠雄受刑者は今年1月に87歳で病死。捜査を続ける愛知県警千種署特別捜査本部に新たな手がかりはなく、真相は今も闇に包まれる。【福島祥】

 「企業テロと金目的。捜査員の間には二つの見方があった」。元捜査幹部は振り返る。

 事件前年の93年2~5月、住友系企業を狙った発砲事件などが20件以上発生した。このため特捜本部は当初、射殺事件も企業テロとの見方を強めた。事件後に現場を視察した国松孝次警察庁長官(当時)も「暴力団対策法施行で追いつめられた暴力団の状況が背景にあると思う」と暴力団の関与を示唆した。

 捜査が動いたのは2カ月後の94年11月。近藤元受刑者が住友銀行本店(大阪市)に拳銃を持って現れた。大阪府警は近藤元受刑者を銃刀法違反容疑で現行犯逮捕。この拳銃の線条痕が射殺事件の弾丸と一致した。

 近藤元受刑者は捜査員の間では知られた存在だった。77年に愛知医科大の関係者を拳銃のようなもので脅し約3億円を奪った強盗傷害事件で逮捕され、懲役13年の刑に服した。特捜本部内では、この事件と同じ構図で金目的の強盗との見方が浮上した。

 近藤元受刑者は逮捕直後に「名古屋の事件は自分がやった」と供述したとされる。捜査関係者によると、94年12月に府警から愛知県警に移送された後、関与を認める自筆の文書も残したという。だがその後の供述は変転を重ねた。銃刀法違反などの罪で実刑が確定し、岐阜刑務所に収監されたが病死。捜査幹部によると、遺品などから真相をうかがわせるものは見つかっていない。

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 ■ことば

 ◇住友銀行名古屋支店長射殺事件

 支店長の畑中さんが自宅マンション10階で94年9月14日早朝、頭を撃たれ死亡した。同11月、凶器の拳銃を所持していた近藤元受刑者が銃刀法違反容疑で逮捕され、95年2月には近藤元受刑者にこの拳銃と実弾を渡した元暴力団幹部の男も同容疑で逮捕されたが、男は射殺事件への関与を否定した。

毎日新聞 2009年9月7日 東京朝刊

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