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[社説]高谷市長再選 政令市岡山の存在示せ

 政令指定都市となった県都・岡山市の向こう4年間のかじ取りを担うリーダーに、多くの有権者が求めたのは現行政の継続だった。

 任期満了に伴う岡山市長選は13日に投開票が行われ、無所属で現職の高谷茂男氏が、無所属の元職や新人の対立候補との戦いを制して再選を果たした。目標とする中四国地方の活力ある拠点都市づくりへ向け、政令市のメリットをどう生かしていくのかが問われる。手腕に期待したい。

 今回の市長選には戦後最多の6人が名乗りを上げた。8月30日の告示日まで衆院選が行われ、活動が大幅に制約された。それだけに各陣営は街頭演説や個人演説会、電話作戦などを駆使して精力的に支持を訴えてきた。

 しかし、政権交代を実現した歴史的な衆院選に関心を奪われたことや「選挙疲れ」からか、有権者の反応はいまひとつ盛り上がりを欠いた。

評価された実績 

 4年前の前回市長選に初当選以来、高谷氏は行財政改革や都市ビジョンづくりを市政の中心課題に据えてきた。

 行財政改革ではコンパクトな市役所を志向し、専門職を除く職員の新規採用を3年間凍結した。市の事務事業を必要性や効果などの観点から見直す「事業仕分け」も進めた。選挙戦でも高谷氏は一層の改革を進め、生まれた財源を都市ビジョンで描く「水と緑が魅せる心豊かな庭園都市」「総合福祉の拠点都市」などの実現に活用するとの考えをあらためて示した。

 こうした高谷市政1期目の総括と、今後の方針の是非が問われたのが今回の選挙だった。高谷氏勝利の要因は現職としての知名度に加え、行財政改革への積極姿勢や、念願だった政令市誕生にこぎ着けた実績などが評価された結果といえよう。他候補も施策や手法の違いなどを軸に支持を訴えたが及ばなかった。

 多数の対立候補が出馬し、批判票が分散したことも現職にとって有利に働いたといえる。衆院選最優先で支援の方向を示さなかった民主、自民、公明各党が結局自主投票となったことも微妙に影響を及ぼしたのだろう。

山積する難題 

 2期目に臨む高谷市政に求められるのは、政令市になったことによって新たに得た権限や財源を活用し、希薄な県都・岡山市の存在感をどう高められるかである。

 高速交通網の結節点に位置し、自然や医療、教育環境などにも恵まれた好条件を生かし切れていない。潜在能力を存分に引き出して独自色ある魅力的な県都に磨き上げる具体的な手だてが問われる。

 行財政改革では2005〜08年度に年間約231億円の行革効果を生み出し、市の借金も減る傾向にあるという。しかし、台所事情の厳しさに変わりはない。行革の継続と必要な施策への積極的対応のバランスが必要となろう。

 岡山大と連携して、いつでも受診できる岡山型ER(緊急治療室)などからなる岡山総合医療センターの具体化や中心部の集客機能づくり、岡山操車場跡地の有効活用といった重要課題も実現が迫られる。周辺地域の振興策も欠かせない。個々の地域特性を生かした発展があってこそ都市の厚みが増す。

市民参加高めたい 

 政令市岡山は、いよいよ未来へダッシュする時を迎えた。いかに勢いをつけて早く発展の軌道に乗れるか。

 大きな鍵を握るのは市民の理解と主体的な参画である。だが「区ができた以外に政令市になって何が変わったか分からない」という市民も少なくない。政令市になったメリットを一人一人が実感できる市政の展開が必要となる。

 そのためにも、住民が市政に参画しやすい環境づくりが欠かせない。市民の中には日々の生活や活動を通して、まちづくりや子育て、環境問題などさまざまな分野で豊かな知識やアイデアを持っている人も多い。行政に関する情報を積極的に開示するとともに、市長が市民と接し、市民の提案を吸い上げて政策に反映させる機能を強めていくことが大切だ。

 高谷市長は選挙で投じられた批判票の意味をしっかり受け止め、活力ある開かれた市政に努めてほしい。目指す政令市岡山の都市像に向けて大胆な発想ときめ細かな配慮がにじむ改革が求められる。


【詳しくは山陽新聞紙面をご覧ください。】

(9/14 9:11)

 社説
  高谷市長再選 政令市岡山の存在示せ (9:11)
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