きょうの社説 2009年9月14日

◎金沢の魅力度 9位に満足せず、発信力強化を
 民間シンクタンク「ブランド総合研究所」が実施した地域の魅力度調査で、金沢市が9 位に入った。4回を重ねたこの調査で金沢は初回の12位から9位、10位と続き、トップテン10の常連になってきた。一つの指標と言ってしまえばそれまでだが、金沢の全国的な位置づけを知るうえでは興味深いデータである。

 とりわけ、調査では消費者が自治体に抱くイメージが重視され、地域の魅力がどの程度 、伝わっているかを知る判断材料になる。魅力度とは端的に言えば「人を呼ぶ力」であり、地域に対する期待値でもあろう。9位という結果に満足せず、金沢の発信力強化へ官民一丸となって知恵を絞りたい。

 自治体の魅力度調査は、全国の20〜60歳代約3万2千人にインターネットを通じて アンケートを実施し、1千の自治体を対象に認知度や魅力度、イメージなど63項目を点数化して集計した。

 1位は3年連続トップの札幌(今回2位)を抜いて函館となり、トップ10には小樽( 6位)、富良野(8位)を含めて北海道が4市を占めた。研究所が今回初めて実施した47都道府県の調査でも1位は北海道であり、地域全体のイメージが都市に重なり、相乗効果を生んでいることがうかがえる。

 北海道を除けば、金沢は京都(3位)、横浜(4位)、神戸(5位)、鎌倉(7位)に 次ぐ順位となる。都道府県別では石川県は17位であり、金沢が県全体の魅力度を押し上げていることは間違いないだろう。

 過去の調査をみると、金沢は京都、鎌倉などと並んで「歴史・文化のまち」というイメ ージが強い。いまだに「小京都」という代名詞で語られがちだが、魅力度をさらに高めるには「城下町」の代表格という個性を際立たせる必要がある。金沢という地名から「城下町」がパッと浮かび、そこから兼六園、伝統工芸、21世紀美術館などと連想が豊かに広がっていく。それが都市のブランド力でもあろう。

 100位までをみると、県内では輪島が58位、加賀が89位に入った。それぞれ浮上 できる可能性は十分にある。上位の都市がどんな戦略を講じているのか、これを機に分析してほしい。

◎介護施設整備 見直し必至の自治体計画
 自治体の介護施設整備の計画が政権交代で見直しを迫られている。民主党が、介護型療 養病床を2011年度までに廃止するという政府決定を凍結し、介護施設整備を従来の3倍のスピードで進める方針をマニフェストや政策集に掲げているからである。介護保険事業計画を担う自治体が混乱しないよう、これらの方針を具体化する道筋をできる限り早く示す必要がある。

 厚生労働省は先ごろ、全国の自治体が06〜08年度に計画した介護施設の整備状況を まとめた。それによると、3年間で計12万4千床を増やす計画のところ、実際に増えたのは約5万6千床で、計画達成率は45%(富山県69%、石川県14%)にとどまった。

 ただ、廃止が決まった介護型療養病床を除いて計算すると、達成率は71%(富山県8 6%、石川県55%)になるという。自治体が整備計画を策定する段階で、政府が新たに療養病床の削減を決めるというちぐはぐな対応があり、政府の方針転換が自治体に徹底されなかったため達成率に大きな違いが生じることになった。

 療養病床は慢性疾患の高齢者らが長期入院する病床で、医療保険が適用される医療型と 介護保険適用の介護型に分けられる。06年度時点で計35万床の療養病床のうち介護型を廃止し、12年度までに医療型のみの22万床に削減するのが現在の政府方針である。コストがよりかからない介護施設などへの転換を進めて社会保障費を抑制する狙いである。

 民主党はこの政策をさらに転換し、行き場のない「介護難民」を生んではならないとし て、介護型療養病床の削減を中止する一方、特別養護老人ホームなどの介護施設整備のスピードを上げる方針を打ち出した。

 介護施設の入所待機者は全国で約40万人ともいわれ、施設整備が急務である。しかし 、民主党方針には療養病床の維持や施設整備に必要な予算規模や財源は示されていない。入所者が増えれば介護給付費が増え、保険料にはね返るなど、具体化には詰めなければならない課題が山積している。