北野武監督(62=ビートたけし)が通算15本目の新作映画(タイトル未定)の撮影に入っていることが13日、分かった。新作はヤクザの激しい権力闘争を描くバイオレンスアクション。登場人物全員が悪人のヒーローがいない異色作でたけしが主演する。出演者には悪役イメージのない三浦友和(57)椎名桔平(45)加瀬亮(34)北村総一朗(71)らを起用し、新しい北野流バイオレンスを目指す。ワーナー・ブラザースとオフィス北野の共同配給で来年公開。
撮影は8月23日から始まった。ヤクザが登場するバイオレンス映画は米国で撮影した01年「BROTHER」以来9年ぶり。北野監督は「久々だけど、やっぱりバイオレンスものは面白い」と強い手応えを感じている。これまでの作品で独特の感性が反映された暴力描写は、国内外で高く評価されている。監督デビューからちょうど20年を迎え、新作は得意ジャンルながらも、過去にはなかった作風に挑む。
今作はヤクザたちの生き残りをかけた権力闘争を描く。ルール無用で理不尽な裏切りや駆け引きがノンストップで展開。登場人物らは、相手を殺さねば自分が殺されるという極限の緊張を強いられながら、延々と戦い続ける。北野監督はこれまで、暴力描写の裏側にその人間の悲しみなど感情的な要素をさりげなく盛り込んできたが、新作について製作関係者は「勝ち負けは善悪で決まらず、ただ強ければ勝つという闘争本能むき出しの弱肉強食の世界を描き、そこにヒロイズムは存在しません」と断言。北野バイオレンスの新境地を目指すという。
その決意は配役にも表れている。メーンキャストはいずれも北野作品初参加の面々。ほぼ全員がヤクザの設定だが、三浦をはじめ、椎名、加瀬、北村ら、悪役イメージからほど遠い俳優を起用した。三浦は、現実味のない暴力描写の作品を見る機会が多かったらしく「北野バイオレンスは爽快(そうかい)」と新鮮さを感じながら撮影に没頭している。北野監督は「役者もピッタリな顔ぶれがそろったし、すごくいい感じだ」と話しており「自分でも、今から仕上げが楽しみ」と、気持ちは早くも編集作業にも及んでいる。