アルコールを検知するとエンジンがかからない装置に息を吹き込む運転手。結果はダッシュボード上の機器に表示される=諏訪市の南信貨物自動車諏訪営業所 |
県内運輸業界で、運転手の呼気に一定量以上のアルコールが含まれていると、車のエンジンを始動できない装置の試験導入が始まっている。価格の高さなどから業界に浸透するかどうかは未知数だが、全国で飲酒運転による事故が相次ぐ中、運転手の意識改革や運行の安全をアピールしようと考える事業者は、今後、本格導入に踏み切る構えだ。
装置は8月下旬から、バス会社「アリーナ」(長野市)がツアーバス2台、南信貨物自動車(諏訪郡下諏訪町)が大型トラック5台にそれぞれ試験導入した。ともに都内の開発メーカーが無償で提供。運転手が装置に息を吹き込み、アルコール濃度が呼気1リットル中0・05ミリグラム未満でないとエンジンが掛からない仕組みだ。エンジンを切って再始動する際に呼気チェックが必要になる時間の間隔は、事業者で設定できる。
国土交通省はバス、トラック、タクシーなどの事業者に対し、乗務前の点呼で運転手の飲酒の有無を対面で確認するよう省令で義務付けている。2006年に福岡市で幼児3人が死亡した飲酒運転事故を受け、確認にはアルコール検知器の使用が広がっており、同省は10年度から検知器による点呼確認を義務付ける方針だ。
県バス協会も加盟社に検知器を配布しているほか、乗務前の点呼ができない宿泊を伴う業務では、携帯検知器による確認に協力するよう宿泊先に求めている。県タクシー協会も加盟社に対し、勤務の直前、直後と勤務中の3回の検知器チェックを促している。
装置を導入した2社は点呼時の検知器チェックに加え、車載装置による随時チェックで万全を期す考えだ。装置は取り付け料を含めて1台30万〜50万円と高額だが、両社は飲酒運転につながりやすい仮眠を伴う長距離業務の車両に順次導入し、最終的には全車に搭載するつもりだという。
南信貨物自動車は、運転手以外の者が息を吹き込む不正を防ぐため、一部にカメラ付き検知器を導入済み。「個人の責任に任せるだけでなく、会社の責任として飲酒運転の100%防止にどれだけ近づけるかが大事。そのことで個人の意識改革にもつなげたい」(経営企画部)とする。
アリーナの宮沢将栄社長は、業界内で厳しさを増す競争も視野に「顧客に安心感を持ってもらうことで他社との違いも出したい」と話している。