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2009年9月8日

このところ、思うところあってこのメールが書けず、ご無沙汰をしてしまいました。
「都合によりお休み」ということが何度もありましたが、結局、心のうちをぶちまけるのが苦しくて、書けなかった、というのが本当のところです。自己都合です。
今年も、たくさんのファンメールをいただき、叱咤激励されました。
ひとつひとつ、ありがたく読ませていただきながらも、それに応えること〜昇格〜ができなかったことを、心からお詫びします。
でも、皆さんの支えがなかったら、シーズン途中でリタイアしていたかもしれません。
それくらい、気持ちが追い詰められた2009年のシーズンだったのです。

昨日僕は最終戦を終え、その足でセントルイスに午前2時前に戻ってきました。
今朝、学校に行く寛を見送りもせず、寝たいだけ寝ました。しばらくは、何も考えたくありません。
身体中がぎしぎしと痛み、重石が圧し掛かったようにへとへとです。
でも、終わった。今日から、自分の野球人生でもっとも長いオフに入ります。

契約上の問題で、どんなにがんばっても昇格はない、と伝えられたのは、足の怪我から復帰して間もなくのことでした。
ピネラ監督をはじめ、スカウトの皆さんなどが後押ししてくださったとのことでしたが、40人枠に入っていない、ということがネックになりました。
メジャーにもう一度上がりたい、その気持ちだけでやってきた僕は、そのことを伝えられた日から、気持ちがぷっつりと切れてしまったのです。
メジャーにはもう上がれない。何をしてもどうやっても無理だ、という現実は、引退も考えさせるに十分なインパクトでした。それでは何を支えに、何を目標に、残りの長いシーズンを過ごせばいいのでしょう。
家族とも話し合い、僕はでも、アイオワで野球を続けることを選択しました。
とにかく野球が出来る、ということに感謝して、これもまた得がたい経験だと信じて、やっていこうと。
それでも毎日毎日、秒刻みでくじけてしまう気持ちをつないでくれたのは、
家族と、ボビー(ディッカーソン監督)でした。

昇格がない、もう今後もない、と分かったときのボビーは、とても申し訳なさそうでした。
「俺はちっとも力になってやれない。本当にすまない」
僕は、ボビーに謝らせてしまった自分が情けなくて、申し訳なくて、気持ちがますますめげました。
しかしその日から、僕たちはなるべく前向きなこと・・・たとえば将来的な話など・・・をしながら、毎日を過ごしました。若手の選手に関しての相談なども受けるようになり、ボビーが僕の気持ちをなんとか紛らわそうとしてくれているのがよくわかりました。
それまでは、僕の怪我がよくなっていくのを見ながら、
「シカゴが喜ぶぞ!」と励ましてくれていたボビー。でも、その日から一切僕たちの会話にカブスが出てくることはありませんでした。

ヨメは、「おかげで今後のスケジュールが立てやすくなったね」と笑いました。
それまでは、いつ上がれるか、いつクビになるか、と毎日を過ごしていたため、一週間先のことを聞かれても、どこにいて、何をしているか分からない、という状況でした。
寛の学校のこともあり、三者面談の予定を先生に尋ねられても、答えられない。
寛が友達の誕生会に呼ばれても、行けるかどうか分からない。そんな毎日は苦しかったと思います。
でも、もう上がらないのだから、そしてセプテンバーコールアップも間違いなくないのだから、アイオワカブスのスケジュールだけをにらみながら生きていればいい、そんなに簡単なことはない、それが、「メジャーには戻れない」と伝えたときの、ヨメの返事でした。

こうして、最終戦までのカウントダウンが始まったのです。

僕は「野球はこうである」とう常識にとらわれて、結果を残すことが出来ませんでした。
どこかで「メジャーの野球はこうである」というプライドにとらわれていたのでしょう。
マイナーには、いろいろな選手がいます。スタイリッシュな部分はまったくなく、ただがむしゃらにぶつかってきます。
セオリーは通用しません。
というより、セオリーがありません。
それに翻弄されて結果自分が打てず「あいつはセオリーどおりじゃない」と言っても、結局ただの負け惜しみなのです。
今年の僕が、まさにそれでした。柔軟に対応することなく、マイナーにいる、そしてもう上には行けない、というお先真っ暗の状態に腹を立てていただけ。それを自覚したのは、残念ながらシーズン終了の3日前でした。
自分の感情をコントロールできない弱さや、臨機応変に頭を切り替えられない不器用さが、今年得た課題となりました。ただ、すべてを切り替えてから最終日に打った2本のヒットによって、
「ああ、まだ現役でいられる」と思えたのは、野球の神様が僕に与えてくれたサインなのかもしれません。

さて、来年は?
僕はもちろん、まだ野球を続けたいと思っています。
自分の心と身体がくじけない限り、まだ現役でいたいと願っています。
その願いが叶うのならば。状況が許してくれるのであれば。
40歳という節目を迎え、「これから自分はどうなっていくのか。どうしたいのか」という現実問題に直面しています。誰もが一度は通る「引退」という二文字は、とても身近になってしまいました。悲しいし、寂しいですね。
だからこそ、与えられた、残された時間を大切にしたいと思っています。

このシーズンが終わったら、僕は一人、レンタカーに荷物を積み込み、自分の来し方行く末などを考えながら、静かにセントルイスへ戻るつもりでした。
きっと、そんなふうにデモインを立ち去るんやろうと思っていたのです。

ところが、友人家族が最終戦を見に来てくれることになったため、ヨメが16人乗りのバンを借りて、幼稚園バスの運転手さんのようにガタゴト登場したのです。
しかもそのバンは、僕らが遠征先で球場入りするのと、まったく同じバン。
静かに考えながら渋く立ち去るどころか、他の選手やクラビーさんたちに、
「まだ遠征に行くのか」とからかわれながら、一見大変楽しげにアイオワに別れを告げることになったのでした。

どうしてもかっこよくなれない僕の野球人生を象徴するような最終日。
おかげでなんだか、来年はきっと笑って野球ができる、そんな気がしています。

2009年も、変わらずそこにいてくださったファンの皆さん、本当にありがとうございました。

セントルイスの自宅にて 田口壮 

2009年9月2日

セプテンバーコールアップで、投手や野手が何人か抜け、
その穴埋めに、外部や下から知らない選手がやってきました。
つぎはぎだらけのアイオワカブスです。大変苦しい戦いです。

今日は、新しい選手の一人が、ユニフォームの上下をなくしてしまいました。
洗濯バケツとゴミバケツを間違えて、
ユフォームはゴミと一緒に収集されてしまったのです。
「ユニフォームが洗濯から返ってこない!」と大騒ぎの彼に、
「どっちのバケツに入れた?」と冷静なトレーナーのマット。
洗濯もの入れとなっているバケツには、小さくテーピングが貼ってあり、「ランドリー」とさらに小さく書いているのです。ちょっと見ただけではわかりません。
まして来たばかりの選手には、見分けすらつかないでしょう。
「えーと、こっち?」とゴミバケツを指す彼。
「じゃあ捨てられちゃった」とマット。
幸い背番号の入った上は球団が用意したものの、下に関してはもう間に合いません。
「誰か〜、サイズ38のジャージの下、ちょうだーい」とマットが叫ぶと、どこからともなく2本のジャージが揃いました。
「わあ、1本失くしたら2本になった!」と本人も大喜び。・・・よかったね。

あと残り5試合、というところで、シーズン開始直後のように初々しい選手がいっぱい。
どうなるアイオワカブス?お見逃しなく!

ネブラスカ州オマハにて 田口壮 

2009年9月1日

あまりに打てないので、もう自分に腹は立つし、
暴れようにも小心者なので暴れられないし、
「俺って本当にアカンよなあ」とヨメに愚痴っても、
「そんなこと自分で言わなくても、まわりはみんなそう思ってるから大丈夫!」などと言われ、挙句の果てに「打てないちゃん」というアダナをつけられてしまいました。
「打てないちゃん」・・・どんなにかわいく言われても、ちっと嬉しくありません。

今日はたまたまホームランを打ったものの、
「僕がホームランを打つと負ける」というジンクスは生きており、
アイオワカブスは負けました。この時期の一敗は、あまりに痛いのです。
そういえば以前マトゥーリア(投手)に、「頼むからホームランは打たないでくれ。負けるから」と言われたなあ。
今夜、僕を迎えるベンチが大変盛り上がっていたのは、(ちっ、余計なことを・・・)という気持ちを隠すためのものだったのでしょうか。
いや、そうに違いない。

ネブラスカ州オマハにて 田口壮 

田口選手宛のファンレターはこちらまで letter@taguchiso.com

 
   

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写真協力 St. Louis Cardinals / Scott Rovak / 報知新聞社 越川亘 企画・制作 Tentando Superabis, Inc.(TSI)

 
 
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