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過労死自殺から10年…医師の労働環境改善訴える/横浜
- 社会
- 2009/09/13
過労などが原因でうつ病になり自殺した50人の遺書や家族写真、遺族の手記などを紹介する「私の中で今、生きているあなた」。大阪市内のNPO法人が県内で初めて開いたこの展示会に、遺族の1人で東京都在住の薬剤師、中原のり子さん(54)が来場し、勤務医だった夫を死に追いやった過酷な労働環境の改善などを訴えた。
展示会最終日の12日午後。会場となった横浜市中区の横浜産貿ホール2階で、中原さんは夫の「死」について語り始めた。
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小児科医の利郎さん=当時(44)=が勤務先の都内の総合病院の屋上から飛び降り、命を絶ったのは10年前の夏。医師不足の中で当直を月5~6回、多いときには8回こなし、当直明けでも休めず、32時間連続で働くことも。遺書には「閉塞(へいそく)感の中で私には医師という職業を続けていく気力も体力もありません」とつづられていた。
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過酷な医療現場の勤務実態。それを”告発”した夫の最期のメッセージを社会に伝えることが使命だと確信し、講演などでその改善を訴え続ける。
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2007年3月には、利郎さんの自殺は過労が原因の労災だとする東京地裁の判決を勝ち取った。だが、病院を相手取った損害賠償請求訴訟は地裁、高裁とも病院側の安全配慮義務違反を認めず敗訴。昨年11月には高裁判決の見直しを求め、最高裁に上告受理の申し立てを行っている。
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この10年、医師の労働環境は勤務医不足に歯止めがかかっていないこともあり、改善どころかむしろ悪化しているというのが中原さんの実感だ。それを放置してきた政治にも、厳しいまなざしを向ける。
10日には、今回の総選挙で当選したみんなの党所属の衆院議員の勉強会で講演。「国はようやく医師不足を認めて医学部の定員を増やそうとしているが、一人前の医師になるには10年かかる。その間も現場の医師の疲弊は続く」と訴えた。
展示会会場には、中原さんの長女で、横須賀市立うわまち病院の勤務医、智子さん(27)も足を運んだ。2歳の男児の母親。院内に整備された保育所に子どもを預けながら当直もこなす。利郎さんと同じ小児科医の智子さんは、遺影が掲げられた会場で力を込めた。
「医療現場の労働環境の改善は医師だけのためではない。子育て中のお母さんが安心して医者に子どもを任せられるかどうか。地域の基本医療を守る問題でもあるんです」
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中原さんの裁判を「支援する会」のホームページはhttp://www5f.biglobe.ne.jp/~nakahara/index.html
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