新年早々、不穏な題名ですみません。
誰も御存知無い、という可能性が想定されたので、新TOP絵の解説です。
鵜堂刃衛(うどう・じんえ)は、後に超有名マンガとなる 『るろうに剣心』(和月伸宏・集英社)が、まだどマイナーマンガだった 頃に登場した仇役のキャラです。コミックスでいうと2巻、9話〜15話に登場。
アニメ化されたりゲーム化されたり巻頭カラーの常連だったりで、一時は少年ジャンプの屋台骨を支えて いたこのマンガですが、開始当初は本当に危機的状態でありました。どのぐらいかというと、掲載場所は常に 巻末〜+3という、ジャンプ打ち切り圏内。おまけに、“新人・当時のジャンプで受けそうにない絵柄・ 同ストーリー”、と三拍子揃っており、もう「いつ打ち切りになってもおかしくない」という超低空飛行に 片肺飛行にきりもみ飛行であったのです。
おそらく作者の和月伸宏自身も、いつ終わってもおかしくない、という気持ちで連載していたかと思う のですが……その状況で、渾身の力で描きたいように描きまくったのが、この <黒笠>編でありました。
白装束・黒いマフラー・黒笠、おまけに白黒反転目で、「うふわははははは」とか嗤いながら人を斬りまくる というマッドっぷりが、もう最高です。
絶対にジャンプでは“受けないキャラ・受けないストーリー”からして、どう考えても開き直って 描いたエピソードとしか思えないのですが、それが結果的に、ごくごく一部に熱狂的ファンを産み出す結果 になってしまいました(笑) マンガ自体の人気が出てくるのは、四之森蒼紫の登場を待たなければいけ ませんが。
正直、この当時の『るろうに剣心』が好きな人間にとって、この後、特にアニメ化しだして色々と作者 自身もばたばたいてくる頃からのこのマンガは、ジャンプにどんどん潰されて、どんどん駄目になっていき 続けたマンガなのですが……厳しい事を言えば、潰される方が悪いのかもしれませんが……それでも、この <黒笠>の時に見せてくれた和月伸宏という漫画家の懐の深さに、私は未だ期待しています。新作の 『ガン ブレイズ ウェスト』はあっさり打ち切りくらいましたが、それでいい形に開き直って、また 帰ってきてくれればいいなーと、思っております。
後の『るろうに剣心』でも部分部分で見せた、この作者の黒く冷たい部分、そういった所を再び花開かせて くれはしないかと、応援している漫画家の一人です(その為には究極的には秋田書店あたりに移るのが良い かとは思いますが)。
川辺で刃衛を待ち受ける剣心。そこに薫がやってくる。刃衛と戦う為には薫が身近にいると危険だとさとし、 薫が家に帰るように説得する剣心。その時――!
「うふふ。うふわはははあ!!」
大雨で増水した川を小舟で駆け下りながら通りすがりに薫をさらっていく刃衛。
更に、
「見たぞ見たぞ抜刀斎!! この小娘、お前の女と見た!!」
ひと一人抱えて小舟で激流を下りながら台詞を残し、
「ここで待つぞ抜刀斎!」
と果たし合いの待ち合わせ場所を書いた“紙切れ”を川辺に投げつけ、とどめに
「うふわはははははは!」
と嗤いながら去っていく。この間、ずっと効果線つき。
ああ最高、最高です刃衛。
(2002年1月4日)
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