September 13, 2009

で、昨日の投稿の続きですが、ものすごく長くなってしまったので、続きを読むに載せます。原稿用紙10枚近いかも。でも、これでも省略しまくったので、こちらの気持ちがうまく伝わるか不安です。


して、『マンガノゲンバ』の取材、放送を中止してもらった理由ですが、この番組の取材、ほんっっっと〜〜〜〜に不愉快だったからです。びっくりしました。
なんというか、インタビューが誘導尋問的なんですよ。ディレクターさんがなをさんに質問し、それになをさんが作画しながら答えるというところを撮影してたんですが、なんか、このディレクターさん、勝手に頭の中で「ストーリー」を作っちゃってるんですよね。唐沢なをき像というか。

なをさんは子供の頃から、ずーっと特撮の舞台裏の漫画を描くことだけ考えてた人で、ほかの漫画は全部イヤイヤ描いた漫画で、今、『ヌイグルメン!』で特撮の舞台裏が描けて幸せだあ! 

ってな感じの筋立てになってるようでした。
この撮影する前に事前取材があったんですが、そのときにこちらが言ったことを、勝手に解釈して話を考えて、番組の流れを作ってるんですね。ちょっとなをさんの漫画を追いかけて読んでくれている方ならば、「なんだこれ?」と思う「ストーリー」だと思うんですが。

で、インタビューでディレクターさんの質問に対し、なをさんが彼の考えた「ストーリー」に反する答えを言うとします。すると、彼はがっかりした顔で苦笑しつつ、「いや、そういう答えじゃなくて〜」と、別の答えを要求するんです。自分の「ストーリー」に即した答えを言うまで許してくれないんですよ。自分のインタビューに対する答えを、質問する前から想定してるんです。
で、結局、なをさんがストーリーに合わない答えしか言わないと、「あー、それじゃあですね!」と、なんかあからさまにイヤそーに別の質問に切り替えたりして。
このイヤそうな態度を見てると、「この漫画家、使えない答えしか言わないなあ」って思われてるような気がしてきて、早くこの場から逃れたい、解放されたいという気持ちになって来るんですよ。「ちゃんとした、良い答えがいえない俺……」って、罪悪感を感じてくるんですよ。で、つい、相手が望みそうなことを、本意でないのに言ってしまうという。……誘導尋問的じゃない?

なをさんは、別にヤラセに対して否定的ではありません。『とりから往復書簡2』でも、そういうこと書いてますよね。出演者も楽しい、視聴者も楽しい、というヤラセのウソはアリだと思います。だから、「NHKの番組のヤラセを怒るということは、唐沢なをきの漫画はすべて真実なのだな!」と極端に考えられては困ります。
テレビ番組で素人使うとなったら、絶対になんかしらヤラセはやらざるを得ないでしょう。ヤラセまで行かなくても、事前に流れを決めてそれに沿ってしゃべってもらったり、とかね。
『マンガノゲンバ』はドキュメントっぽいけど、別にドキュメント番組というわけではない(と、思う)ので、ヤラセとか仕込みがあっても、なんとも思わないです。というか、あって当然です。
しかし、その仕込みやヤラセに協力させたいならば、ちゃんと漫画家に事前に協力要請するべきではないでしょうか。放送前に、どういうビデオを流すか確認させてくれるわけじゃないんだから。
なをさんの本意でないことを言わせて、それを放送したいならば、ちゃんと事前に
「ウソなのはわかりますが、視聴者に夢を持たせるために、子供の頃に怪獣倉庫を見に行ったと言ってください」
とか、要請するべきでしょう。で、納得させてからやるべきですよ。(あ、念のために断っておくけど、もし、こんな内容の要請をされても、承諾しないですけどね。すぐバレるウソだよ)

前の投稿でも書きましたが、撮影の直前に番組の進行表を渡されて、こちらは読む間もありませんでした。あとで読み直して、「こりゃねーだろ?」と驚いた次第。せめて前日にファクスなりなんなりして、内容の確認させてくれれば、こんなことにはならなかったと思うんですが。

オイラ的に、最高にツクリだなあ、と思ったのがコレです。
下取材で
「オイラとなをさんで話し合いながら『ヌイグルメン!』のネームを考えている」
「オイラが加わることで、漫画がマニアックになりすぎないようになっているところはある」
と、言いました。
その言葉を受けて、オイラとなをさんがネーム会議をやってるシーンも撮影する、と進行表に書いてありました。それはいいんですが、このディレクターさんは、ネーム会議についてこんなストーリーを勝手に考えてきたんです。

なをさんと奥さんで漫画のネームの打ち合わせ。なをさんが考えたネームを奥さんに見せてチェックさせ、それに対して奥さんが「こんなのマニアック過ぎて、わかんないよー」と意見する、など。

へにょへにょへにょー。
これじゃ、ネーム会議じゃなくて、編集のネームチェックですよ。
本当はどうやってるのかというと、ページ真っ白な段階から、二人で一緒に考えます。今回の話のメインになるネタ、話の流れ、クライマックス、オチを話し合います。で、なをさんがコマ割ってネームを描き始めてるときも、一緒にセリフを考えます。完成したネームをチェックするのは、あくまで編集者の仕事なんです。
伝わんなかったのかなー。こんなの勝手に考えてくる前に、どういう風にネーム会議やってるのか、なぜ聞いてこないんだろう。
で、「唐沢さんが考えたマニアックすぎるネームを奥さんが指摘して、修正させたシーンは漫画のどの部分ですか?」とか聞かれたり。
で、特撮オタク的な意味で、修正したようなシーンは無い、と答えると、また「えーっ!?」とか言われて、イヤな気持ちにさせられ……。ネームはこういう風に作ってるんです、と上記のような説明をしても、「あー、はいはい」って感じでしっかり聞いてくれないし。自分のストーリーに合わないことには、聞く耳持たない人だったんですよ。

幸いなことに、このシーンは別の日に撮る予定だったので、ヤラセをやらされずに済みました。っていうか、ヤラセでもこんなこと言われたら、なをさんは傷ついただろうな。

このディレクターさん、あまり漫画の制作現場にも興味がないのかな、と思いました。
このネーム会議のシーンの撮影で、実際に漫画に使うネームを考えてくれ、と言われたんです。で、こちらは「撮影されつつ、ネーム考えるなんて無理です。事前に考えて演技しますから」と言いました。すると、「いや、それじゃリアルじゃないから、その場で考えてください。で、そのネームを実際に漫画に描いて雑誌に載せて欲しい」と、返されました。
なんで、そこまで指示されなきゃなんないのー? 

指示されるというと、別の日に、なをさんがとあるスーツアクターさんに取材をしているシーンを撮影する予定もあったんです。なをさんは当初、もうちょっと違う取材を撮影して欲しいと頼んでたんですが、『マンガノゲンバ』側の要請で、スーツアクターさんに話を聞く、ということになりました。
まあ、実際に話を聞いてみたいアクターさんだったので、それはいいんですが、ディレクターさんがその取材について、こんな風に言ってきたんです。

このスーツアクターさんに取材したおかげで、漫画の主人公のイリヒトが成長したって感じにしたい。このスーツアクターさんの言葉が、実際に漫画に影響を与えた、という流れにしたい。

で、実際に取材が反映された漫画のページを放送したかったみたいです。これこそリアル、と思ってるっぽかった。
でもさ、そうなるかどうかなんて、実際に相手に話を聞いてみないとわかんないですよね? なんで漫画の内容にからむようなことまで、言われなくちゃならないの? テレビ番組のために、なをさんの漫画の内容を変えろというのでしょうか。

でも、番組ディレクターがこう考えてるってことは、もしも実際の取材がまったく漫画に影響を与えない結果になったとしても、「影響を与えた!」という流れになるように適当に会話を編集されて、放送されちゃうってことです。
このディレクターさんの目線で編集された映像が、なをさんの漫画制作の現場の真実として放送されるなんて耐えられないと思いました。

まあ、ともかく、ほかにも誘導尋問的な質問などがあり、なをさんが本心ではないようなことを答えてしまいました。
当然、ディレクターさんが「そうじゃなくてぇ〜」と否定したところは編集でカットされちゃいますから、お茶の間で見ている人は、誘導尋問的に言わされたなをさんの本意でない言葉を、編集された言葉を「真実」だと思うでしょう。

残りの取材は2日やる予定だったんですが、きっとまたこういう態度で取材されるんだろうなあ、また本意でないことを言わされるんだろうなあ、と思ったら、涙が出てきた(まじで)ので、お断りしました。
もちろん、断る前に「オイラたちが気にしすぎただけで、別にあのディレクターさんの態度はイヤなものじゃなかったのかな?」と何度も考えました。が、撮影現場に同席していたアシスタントさんたちも「あの取材……なんかおかしいですよね?」と言っていたそうなので、やっぱり客観的に見てもひどかったと思う。

そして、「絶対に放送されたくない!」と思わせる決定的な誘導尋問がひとつあったんですが……それ、今月の『まんが極道』のネタ、というかオチに使ってしまったんですね。
だから、ちょっとココには書けません。すみません。

と言うわけで、長々と書いちゃってすみません。放送中止になったことでご迷惑をかけてしまった方には、再度お詫び申し上げます。お騒がせして申し訳ありませんでした。


Posted by oomeshi (15:42)

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔