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2007/10/18

失われし時を求めて

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今は亡きスカンジナビア号の甲板にたたずむ喪服の女という、なんだか微妙な構図なんだが、まぁ、アレだ、伊豆箱根鉄道のチョンボでスカンジナビア号が沈む直前に撮った、おいらなりの挽歌です。スカンジナビア号というのも、昭和の伊豆を代表する名物だったな。クルーズ客船「ステラポラリス」として世界を周遊していたこの船が、沼津の木負という、あまりパッとしない田舎の港にやってきたのは、昭和45年、大阪万博の年だ。ビートルズが解散し、宇多田ヒカルの母親、怨念少女の藤圭子が「圭子の夢は夜開く」で世に出て、白いギターを抱えてオカッパ頭に似合わぬドスの効いた声で「ワタシの人生暗かった」と唄い、佐藤栄作がまだ首相をやっていた時代だ。で、おいらの専門分野は、実は日本エロ本史なんだが、1970年というとまだ松尾書房の「下着と少女」は刊行されていない。当時は、エロ本というと「実話誌」だった。実話誌とは何か? 嘘ばっかりの体験告白手記と、フェロモン系の化粧の濃いお姉さんヌードで成り立った雑誌であって、場

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末のバーの女給みたいな女が真っ赤な口紅を塗って出ている。実に泥臭い作りであって、「田舎のトラック運ちゃんが読むんだから、そのつもりで作れ」と、エロ本編集者だったおいらも良く説教されたもんだ。で、スカンジナビア号が伊豆の田舎にやってきて、萬屋錦之介や石原裕次郎一行が借り切って遊ぶとか、まぁ、一時は大変な人気だった。欧米の豪華客船というので、ステータスだったわけだな。

で、右の写真は凄いぞ。こんなモノを発見できるのは、日本一のエロ本研究家にしてスカンジナビア号保存運動にもたずさわったおいらならでは、なんだが、今は亡きスカンジナビア号で撮られた松尾書房のグラフ誌だ。1978年の発行なので、この船がもっとも人気があった時代になる。上のカットはスイートルームだろうし、下のカットはレストランで間違いない。

松尾書房というのは、泥臭い他社のエロ本と違って、フェラーリを小道具に使ったり、飛行場でセスナをバックにパンチラを撮ったりと、都会的なセンスを売り物にしていた。モデルの女も「少女」というのをキーワードにしていて、もっとも少女と言っても普通の20歳前後の女なんだが、実話誌の、真っ赤な口紅を塗って二の腕が太いモデルとは一線を画していたわけだ。で、当初は平凡パンチや週刊プレーボーイみたいな作りの雑誌をやっていたのだが、1971年あたりからグラフ誌の通信販売に全力を尽くすようになる。で、この松尾書房を契機にして日本のエロ本の世界は大きな転換点を迎えるわけなんだが、そこら辺はこっちでやってます。1000冊ほどのグラフ誌のデータがあります。まぁ、昭和の、この、オリンピックから大阪万博に至る時代というのは、あちこちで、この泥臭い田舎と欧米的な都会の相克というのが存在していて、日本を動かす原動力になっていたような気がするんだが、いやいや、今にして思えばなかなか楽しい時代だったです。つうか、この写真が撮られた頃のおいらは、既に、エロ劇画誌の編集者やってたんだよね。で、カメラマンが持ち込む使い古しのポジをセレクトしながら、いつかは自分も生身の女の裸を見てやる、と誓っていた日々だったような気がしますw

新宿の女 新宿の女
価格:¥ 1,800(税込)
発売日:1999-05-21

コメント

トップ画像の衣装とヘアスタイルは誰が作ったんですかね?

本人。ゴスロリ娘です。

わ、プルーストかと思ったら…

こう、上唇のちょっとめくれた感じって、ぐっときます。

素敵な時代だったのですね。

エロと芸術の・・・現代と違って。

バイクで西伊豆へ出かけて、
戸田から沼津方向へ走ってくると、
スカンジナビア号が目に入ったの覚えてます。

ホテルとして営業していたらしいけど、
食事もできたのかな。
一度くらい入ってみればよかったと思う今日この頃。

実話誌の表紙、書体が部分的に手書きのレタリングなのが時代を感じます。値札シールも値打ちもんですね。

アレは描き文字屋さんという人が出版社をまわって描いているんだよ。劇画のタイトルで3000円くらいだったな。

トップ写真のイメージは山口百恵かなと思いました。

地元の女子高のマナー教室でフレンチのフルコース食べたって三島のスナックのおねーちゃんが言ってたよ。
その子と駐車場から見たけど中には入らなかった。沈んじゃうならお茶ぐらい飲めばよかった。

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