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きょうのコラム「時鐘」 2009年9月13日
千枚田や散居村を空撮した写真が紙面に載るたびに、鳥がうらやましくなる。人の暮らしが生む美しい風景なのに、特等席で鑑賞するには羽がいる
取材ヘリで、白山周辺を飛んだことがある。アリのように山頂まで連なる登山客が音を聞きつけ、次々と手を振ってくれた。あっという間に頂上まで上昇するのに、歓迎されるのは申し訳ない。そう思ったのだが、汗一つ流さないで山の魅力が分かるはずもない。手をひらひらさせて登山客に冷やかされたのかもしれない 鳥の目と虫の目とで物事を見ることが大切、といわれる。空の高みから全体を見渡すことと、地をはいずり回って細かなことも見落とさないこと。あいにく、私たちに羽はなく、地をはうよりも急ぎ足で過ぎる。二つの目を持つのは難しい 政権交代で、これからの暮らしが気になる。嵐の中を、政治はどうかじ取りをしていくのだろう。鳥と虫の二つの目を、為政者は働かせてくれるだろうか 地中を進むモグラの目もある。目先の小事にこだわるだけでは、めったに日は差さないし、視力も衰える。こればかりは、願い下げにしたい。 |