2009.07.17

社会主義的思想は今の日本を救えません!

 第171回国会も終盤を迎えるなか、東京都議会議員選挙で自民党は大敗を喫しました。私は、全党的に全力投球で都議選を戦い抜くべきとの考えから、都議選終了までは断じて総理の「解散」という言葉で政治が混乱すべきでない旨、都議選前から一貫して訴え続けてまいりました。しかし、それまでの地方選挙での5連敗が示す世論の動向に対して、迅速な立て直しのないまま都議選になだれ込んだ結果は痛恨の極みです。

 実際、都議選前からマスコミが「麻生降ろし」の報道を行っていました。私は「衆議院選のため顔を変える」短絡的な発想や、自民党の単なるコップの中の争いには賛同しません。しかし、国政を不安定にする要因が党にあるなら、国家国民のため、「党を正す」努力は必要だと思います。私が懸念したのは、いわゆる「麻生降ろし」というレッテル、このひとくくりによって、本来見つめるべき問題の本質に目が向かわず、建設的な議論が封じ込まれることでした。

 自民党が「国民の時の要請に応える政党として、党変革の道筋をどう打ち立てるのか。」すでに静岡県知事選で決定的に見えたこの課題は、続く都議選での結果を通じて、もはや自民党の範疇を超え、国家危機へと近づきました。「一度は民主党にやらせてみたらいい。」このごく安易な政治意識で、私たち日本人はみずから一触即発の国家危機の引き金を引くところにいるのです。

 都議選の「瞬間風速の結果」は、経済で例えれば、その時点の成長率が仮に1年間持続したとの前提(年率換算)で示されたものです。年率換算すると大きな数字になりますが、多くの場合その勢いは1年間も持続しません。ましてやこの瞬間風速の勢いで向こう4年間の都議会が固定されてしまうことを考えると、もっと慎重な判断が必要ではなかったか、と思う方も多いと思います。

 実際、都議会は今後、議席のバランスの問題だけでなく、質的にも大きな課題を抱えることになったでしょう。都議選選挙区の中には、長年しっかりと都政を支え多くから信頼を得ていた都議が僅差で落選となり、代わりに、民主党という名でにわかに立候補、自身が立って演説した駅の名前すら分からないまま当選を果たしたなどの新人候補もあったようです。「瞬間風速の結果」を、今後都民が4年間税金でまかない続けるあいだ、都政は政策的継続性など様々な問題を露呈することになります。仮に衆議院選挙で同じことが繰り返されれば、取り返しのつかない国家危機になるでしょう。

 長年培ってきた国創りの根本にある「保守の理念」。「相互扶助と自立の精神で互いに助け合い努力する、日本社会の繁栄の礎ともいえる思想。この保守理念のもと、政治は万民均等機会の提供に腐心し、そこから先一人ひとりの自由と尊厳ある営みにはできるだけ干渉せず、しかし機会に恵まれず助けを必要とする人たちには温かい支援を行う。」この基本的保守思想こそ、国民の思想的選択肢のひとつとして、自民党がきちんとその受皿を国民の前に堅持し続けていくことが大切です。

 戦後64年日本は豊かになる一方で、日本人の心は貧困化しました。公教育や家庭教育の荒廃を始め、本来誇るべき、日本人としての心の良識がもはや、日本人の行動規範として働かなくなっています。今こそ再び、公共心や道徳観を私たち日本人一人ひとりのなかに育て直す、社会を大切にする思想が必要です。これは、民主党が掲げる結果平等社会の裏にある実質的社会主義思想では、決して達成できない社会なのです。

 実際、民主党の政策は、戸別農家の所得補填制度の例にあるように、働く人たちの税金を使って手厚い所得再配分を行う「結果平等政策」です。このため、勤勉に働く人たちが勤労意欲をなくす問題を孕みます。学校給食代未納問題が示すように、外車に乗って負担能力があるのに子供の給食代を支払わない親たちがいる社会モラルの問題、こうした風潮を国民の税金投入でさらに増長させる政策になりかねないのです。

 今こそ、心の良識や勤勉さを尊ぶ社会的価値観を皆で確認し合い、その土壌の上に信頼社会を再構築する保守主義思想か、あるいは実質的社会主義思想か、を決断すべきです。「民主党に一度やらせてみればいい」などという軽々しい言葉の裏には、「政権選択=国家思想の選択」である、この十分な認識がなされていないようです。来る衆議院選挙では、国家をあげての「保守主義x社会主義の大対決」という隠された構図があることを指摘したいと思います。

 自民党は今の苦しい時を乗り越え、国家国民のため、国民の思想的選択肢の受皿として、しっかりと保守主義思想を堅持し続けていく責任があります。そのためにも、自民党が国民との接点をとり戻す自浄作用を促すことが大きな課題です。

 私は都議選が終了した後から、地方選挙における自民党の6連敗につき、党の総括を早く行い、衆議院選挙に向かった党の方針を打ち立てる両院議員総会の開催を求める活動を行いました。「麻生降ろし」とのレッテルを張られたようですが、当初から「私の最大懸念は自民党の危機による国家危機への発展であり、麻生降ろしなどでは毛頭ない」旨、私は報道の方々に説明し続けております。

 今後ともひたすら、「国家国民のために、今の自民党を正し、保守理念の大きな受け皿としての党再生を図ること」を、自民党をお支え頂いている党員のためにも訴えてまいりたいと思います。

2009.05.12

『クワイヤ ボーイズ』(Choir Boys)を見て

 5月の連休中に久しぶりに夜テレビを見る時間ができ、NHK BS放送で放映した『クワイヤ ボーイズ』という3部作を視聴しました。イギリスのある中学を訪れた合唱担当の教師と生徒たちのとても良く構成されたドキュメンタリー物語ですが、私が日頃感じていることと重なり合う部分も多く、ここに記したいと思います。

 ドキュメンタリーの大筋は以下です。合唱を教えている若い男性教師ギャレス・マローン氏が、少年合唱団設立の目的で9か月の任期でランカスター校に赴任します。ここはスポーツが強い学校で、赴任当初は、「歌を歌うなんて女の子みたいだ」と見向きもしない男子生徒ばかり。実際、教会の合唱団に属する数人でさえ、同級生にはそれをひた隠しにし、休み時間に校庭で、ラップ音楽に踊るイスラム系生徒数人にマローン教師が近づけば、彼らは逃げてしまう始末。しかし、マローン教師の熱意と生徒たちに「本物」を体験させる努力の数々が、いずれ、反抗期で自分たちの世界に余念のない中学生の彼らの心を開き、惹き寄せることに成功するのです。

 まずマローン教師は、歌ったこともない集めた生徒たちを前に、合唱団をつくり、ロンドンのロイヤル・アルバート ホールで公演をしよう、という一大目標を宣言します。ロイヤル・アルバート ホールと言えば、世界中のアーティストが厳しいオーディションを経て、公演の機会を獲得する名門のホールです。これを彼の任期中9か月以内にやろうと言うのですから、生徒たちから見れば、そう遠くない夢のような話です。「そんなことが本当にできるなら、すっげ~!」と数々の生徒はこの夢に惹き寄せられました。

 実際、生徒たちを惹き込むマローン教師の戦術は、まず第一に、生徒たちにその世界の「本物」にチャレンジし、それに向けた練習工程で「本物」の数々を体験させ、「本物」が持つ説得力で彼らの心を動かしていくことです。そして、さらに素晴らしいのは、マローン教師がどんなエスニック(人種)の生徒も取り込む努力を行い、ベトナム生まれの生徒をソロに抜擢し、イスラム系の生徒を引き込み、融和の空気を創りだすことで、一大目標のもと共に励む生徒たちの輪を広げていったことです。

 マローン教師が手がけた「本物」とは、まずロイヤル・アルバート ホールでのオーディションでした。できたてのこの合唱団には、初回審査で公演許可は下りず、半年後の再審査で何とか特別枠で通過します。反抗するイスラム系生徒たちには、ラップ音楽のプロアーティストを学校に呼び、ラップ調に変調した合唱団の一曲を彼らの前でコーラスしてもらい、彼らの土俵で惹き込みを試みます。さらに、名門のキングスカレッジ聖歌隊との合同練習の場も設け、歌声の音色のちがいに愕然とする生徒たちに、一流がどんなものかを気づかせ、激励することも忘れません。

 こうしたある日、「こんなに素晴らしい機会をくれているマローン先生に反抗していた僕は、馬鹿だった!」とイスラム系生徒リーダー格のイムランが仲間の前で宣言します。彼はそれ以来素直さをとり戻し、彼の仲間も合唱団にフルに加わるようになります。こうして合唱団が、ランカスター校の一大プロジェクトとして皆の関心の的になりました。マローン教師の最終日、ロイヤル・アルバート ホールでの公演当日。イスラム系生徒イムランの出演を会場で見守るお母さんが、息子の成長に感動の涙を流している姿がありました。

 私は、『クワイヤ ボーイズ』を視聴して、次のように思いました。イギリスのスポーツ校の中学生にとり、ひとつの心の壁であった「皆の前で歌うのは恥」という羞恥心。この心の殻を打ち破る体験を通じて、大人への成長の一歩を手助けしたマローン教師。マローン教師は、たまたま合唱担当の教員でしたが、本人の熱意でみずから歩み寄り、生徒たちに夢とやる気を抱かせるため、「本物」を見せる場面作りの努力を惜しみませんでした。そのやり方は、若いマローン教師がまさに心も行動も一流の教育者であることを示していたと思います。私たちの日本でも、「本物」や「真実」にしかない心を動かす説得力に生徒たちを触れさせ、夢を掲げる大きな人間へと、成長の機会を創り上げていきたいものです。

2009.04.03

正しい政治なしには、景気回復なし!

正しい政治なしには、景気回復なし!政治の抜本改革、いまこそ!


 今回の民主党小沢一郎代表秘書の逮捕に始まる政治とカネの問題を通じて、日本の政治の信頼が大きく揺らいでいます。100年に1度の経済危機の今こそ、国民に頼れる政治が求められます。政界につきまとう古い利権政治の影。「日本のしがらみ政治を大改革する」という、4年前の衆議院選挙での初立候補に際する私の一大決意は、今も揺るぎないものです。


 民間のエコノミスト時代、私は政府の審議会で経済政策の企画立案にも関わりましたが、「景気回復の足を引張るのが、英断できない日本の古い政治体質である」との究極的な認識に至ったのです。今こそ、グローバル社会に生きる日本国家として、民間の常識で政治の抜本改革を進める。これこそ、しがらみのない議員の私に与えられた使命だと思っています。


「ガラス張りの政治1番地」宣言


 郵政民営化に次ぐ改革の大動脈。政治資金の抜本改革は、私の持論である国会議員の定数削減などの国会改革や、政治をガラス張りにしバラマキをなくす、予算税制上の政治規律を高める意味で改革の大動脈です。目下100年に1度の経済危機のただ中にあり、大型景気対策と政治規律は表裏一体の必要性にあります。


 できるだけ経済効果の高い景気対策を作るには、対策の中身が大事です。いくら財政投入しても、単なるバラマキで景気が回復しない、などという過去の轍を踏むことはできません。国家としての新たな成長基盤創りや新規雇用創出など、5年後10年後の日本が、21世紀のアジアの繁栄のなかに再び返り咲くことができるような、経済の道筋を今しっかりと創っておくこと。これとセーフティネットとの2段構えの大型対策が今回は求められるのです。


 民主主義は、手間ひまがかかるといいます。選挙で選んだ国会議員に地元の声を反映し、国会でルールを決めてもらう政治制度です。このプロセスを支えるための時間やひとやコストという社会的負担を誰が担うかによって、民主主義がどれだけその国に根ざすかも異なるでしょう。明治憲法以来100年以上が経過し、日本は開かれた議会制民主主義へと発展しました。私のように、二世議員でもなく、役所出身でもない、サラリーマン出身者が、国会議員になれる門戸が開かれたことは私たち国民にとり前進です。しかし、民意を代弁するにも、若者の政治不参加や、議員個人の資金力に活動が依存する側面が残される以上、日本の民主主義はまだ発展途中なのです。


目黒・世田谷から政治を変えよう!


 私は現在、党内議論において経済を専門とする者の立場から、大型景気対策の迅速さや経済効果の高い中身への発想転換、政治規律の必要性など、積極的な議論を展開しています。景気浮揚効果を少しでも高めるため、古いしがらみ政治に引張られるバラマキ体質を改め、政治を国民のものにしていくことが重要です。


 政治改革の機運をこの目黒・世田谷から高めるため、地区大会を今月、開催予定です。私と一緒に皆の力を結集して、日本の政治を抜本的に変えていきませんか。より多くの皆さまのご参加をお待ちしております(詳しくは、ホームページお知らせ欄をご覧下さい)。

2009.01.20

「政治・経済・モラルの逆立ち日本」立て直し宣言!

 平成21年の幕開けにあたり、今年が皆様がたにとり健やかな一年となりますことを祈念申し上げます。旧年中は多くの皆様がたに誠にお世話になりました。心より御礼を申し上げます。


 東京5区への選挙区替えからはや1年弱、この間、国会議員として後援会も名簿もゼロからの厳しい再スタートとなるなか、温かいご理解のもと、ともに地元活動に邁進くださいました多くの皆様がたに心より深謝をいたします。今年は国会議員の試練の年、引き続きご指導ご鞭撻を賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます。


 百年に一度の経済危機のなかでの年明けとなり、丑年に習い、危機の時こそ軸をぶらさず、じっくりと経済対策のひとつひとつを着実に国会で通すことに徹してまいります。ことある度に政局の打算へと事の本質を塗り替えるマスコミの今の論調が、すべての国会議員の真意を反映し、健全な世論形成に貢献しているとは思えません。いま議員として私にとり重要なのは、政局という川の流れの中を一歩一歩踏みしめ、国民の声を汲みとりながら、水の流れに遡って上流まで登りつめる堅実さと根気です。


 さて、今年は「経済が逆風のなか、政治も逆立ち、モラルも逆立ち」で日本の年明けとなりました。耐震偽装から食品偽装、新卒採用の内定取消問題へと、近年の一部の企業モラルの低下も社会の混迷に輪をかけています。今年は日本の政治経済を根本から立て直す「治癒の元年」となるべきです。しかし、政治や経済は、国の社会の上に成り立つものです。互いにいたわり合い助け合う地域社会の結束、文化やスポーツの振興から新たな活力を生み出す社会のダイナミズム、規則を守りフェアプレーに徹する国民民度の高さなど、こうした社会の懐の深さや人間力が、「日本社会の総合力」として、危機的状況のいまこそ試されています。


 急がばまわれ。目先の大幅な景気対策の早急な実施が不可欠である一方で、私はこうした「日本社会の総合力」を養う教育や社会政策の充実にも、同時に政策の軸足を向けることが我が国の長期的回復力につながると思います。国民生活へのいたわりと癒し。深刻になりつつある派遣問題や若者の貧困問題、高齢者生活の安心の確保、自立と相互扶助を教える社会教育、勤労者の子育て・介護支援などに対する政策的拡充は、我が国の潜在成長率をも引き上げます。保育園や介護施設を増設し、勤労者が安心して職場に出かけられるような共存共栄の社会インフラの具体的整備に国が踏みだす時です。


 「社会力の育成戦略」と「経済の成長戦略」。互いに相乗効果を生み出すかたちでこれらふたつの戦略を推進するため、私は「財源捻出の改革」も同時に訴えています。いまの人口減少時代には、低潜在成長率のもと税収減少から政策的充実を税でまかなえきれず、他方、借金を増やし続けてまかなえば将来的重税に若者世代は夢や希望が潰れてしまいます。打つべき政策は山ほどあるのに財源が見当たらない。ジレンマの打開には、行政の無駄削減や埋蔵金の有効活用、国有財産の売却にとどまらず、国会議員の定数削減に踏み込む「聖域なき国会改革」も必須です。今こそ政治の決断で聖域なきあらゆる財源捻出の努力を行わずには、日本の将来の道は開けません。


 2006年の自民党プロジェクトの報告では、国有資産のうち金融資産を含む140兆円程度が削減可能、削減の対象には独立行政法人の保養所や独法・政府関係機関等への出資金・貸付金なども含まれています。財投機関債発行による独自資金調達への切り替えや、将来的な資産譲渡所得を償還財源に限定した国債発行による財源捻出は可能なはずです。他方、私は2年ほど前から一貫して、国会議員定数の3割削減を訴え続けてきました。当初困難とも言われたこの提言も、最近は政策フォーラム「新しい風」や「プロジェクトJ」など私の属する自民党若手中堅議員の各グループの政策提言に盛り込まれ、つい最近では小泉元総理や麻生総理もその必要性の表明にいたるまで党内の賛同が広がっています。特別会計の剰余金があくまで単年度の税外収入になるのに対して、国会議員の3割削減は毎年度1000億円弱の経常経費の削減になり、より恒久的な政策経費の財源にまわせます。


 国の財政投融資特別会計の金利変動準備金10兆円について、21~22年度の基礎年金の国庫負担引き上げや減税措置ための財源活用の方向性は既に出されましたが、加えて道州制の時代を目前に、国会議員みずからが「聖域なき国会改革」に果敢に取り組む時です。私は将来を見据えた責任ある政治を実現するため、そして今日の政治を国民本位の政治に戻していくため、元民間人・エコノミストとしてのスピード感と蓄積を生かし、国民的目線で国会での戦いを続けてまいります。