「松川事件」の福島大「松川資料室」が存続の危機、伊部名誉教授語る

【PJニュース 2009年9月2日】2009年8月17日、「松川事件」60年を迎えた。同事件は福島市松川町の東北線で列車が脱線、乗務員3人が死亡した事件。事件当時、警察は国鉄・東芝松川工場組合員ら20名を逮捕、一審では死刑5名を含む全員に有罪の判決を下されたものの、1963年9月12日に最高裁で被告全員の無罪が確定している。

被疑者の不在証明を確定するいわゆる「諏訪メモ」(東芝松川工場で行なわれた団体交渉の席上、会社側として出席した諏訪親一郎氏が作成した備考録)が最高裁に提出され「逆転無罪」判決が下された。

同メモは検察内部で保管、「被告の不在証明を裏付ける資料だが法廷に提出していない」旨を1957年6月29日付の『毎日新聞』「福島県版」で報道(福島支局倉嶋康記者・後に東京社会部へ異動・現在は長野県に在住)同紙の報道が契機になり、最高裁が「諏訪メモ」の提出命令を発動。「逆転無罪」判決につながった。

同事件から60年を迎え、10月17日(土)18日(日)に福島大学で「松川事件」60周年記念集会を開催する。

「松川事件」の現場から約2キロ。福島大学経済経営学類棟の3階に「松川資料室」がある。同資料室は1988年10月に開設。伊部正之名誉教授(専門は労働経済学・アパルトヘイト問題にも造詣が深い)らが裁判・メディア関係資料・被告人と家族間の書簡などを収集・整備してきた。関連資料は約10万点。

伊部氏は「07年4月に福島県松川運動記念会と福島大学が資料の整理や公開に関する協定を締結しました。しかし協定期間は来年3月末までです」と話した。同氏が07年3月に定年退職後も研究員として活動してきたが、協定期間の期限と研究員として活動できる任用期間が重なる。

今後の運営面で不安に感じる研究者らもいる。伊部氏は「大学には今後も松川資料室を存続する方向で検討して欲しい」と語る。その理由として「地元の大学が運営しているとの理由で裁判資料などを寄贈してくれる方もいます」「今後も資料の整備やレファレンス機能の充実は必要です」などを掲げた。

現在は「松川事件」資料目録の完成を目指している。時系列・人名・官職などなインデックスを充実させる方針だ。資料を利活用するためには、事情に通じたスタッフが必要。今後の人的配置問題を含めて「松川資料室」の動向を今後も報告する。【了】

■関連情報
参考 福島大学松川資料室

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参考 福島大学松川資料室 http://www.fukushima-u.ac.jp/global/institution/matsu.html

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パブリック・ジャーナリスト　高橋 健太郎