「9月12日」。最高裁で「松川事件被告全員の無罪が確定した日」

【PJニュース 2009年9月12日】今からちょうど46年前。1963年9月12日、最高裁で「松川事件」の被告全員の無罪が確定した。同事件は福島市松川町の東北線で列車が脱線、乗務員3人が死亡した事件。事件当時、警察は国鉄・東芝松川工場組合員ら20名を逮捕、一審では死刑5名を含む全員に有罪の判決が下っていた。

しかし、被疑者の不在証明を確定するいわゆる「諏訪メモ」(東芝松川工場で行われた団体交渉の席上、会社側として出席した諏訪親一郎氏が作成した備考録)が最高裁に提出され「逆転無罪」判決が下された。

同メモは検察内部で保管し「被告の不在証明を裏付ける資料だが法廷に提出していない」旨を1957年6月29日付の『毎日新聞』「福島県版」で報道(福島支局倉嶋康記者・後に東京社会部へ異動・現在は長野市に在住)同紙の報道が契機になり、最高裁が「諏訪メモ」の提出命令を発動。「逆転無罪」判決につながった。

無罪確定から46年目の秋。「9月12日」を前に「松川記念塔公園」を訪ねた。JR福島駅から自家用車で30分前後。東北本線上り線沿いにあった。背後に急斜面が迫る。雑木林が広がり、水田は黄金色に染まっていた。

周辺にはニュータウンが開発され、コンビニまで車で5分とかからない。洋風の住宅も並ぶ。

ベンチに腰かけた。ここから事件現場はよく見えない。

「人目につかない場所を選んで列車を脱線させたのでしょう」
「松川事件の前に庭坂事件が起こりました。乗務員が死亡しています」
「手口は松川事件と同じです」
「庭坂事件で予行演習をした可能性もあります」

わたしは松川事件について説明していただいた松川資料室研究員・伊部正之福島大学名誉教授の言葉を反すうしていた。同公園は、1993年9月に無罪確定30周年を記念して整備された。それでも「現場近くの公園」をして「事件を想起」することは難しい。

「事件の記憶」を探した。辛うじて「事件を想起させる」モニュメントがあった。

公園の一画に立っている「松川記念塔」。1964年9月に建立された。碑文には『中央公論』誌上で「松川事件の被告は冤罪」とのキャンペーンを展開した広津和郎のメッセージが刻まれている。

「人民が力を結集すると如何に強力になるかということの、これは人民勝利の記念塔である」。

同記念塔は東北本線下り線沿いを望んでいる。視線の先には、乗務員の同僚らが建てた殉職之碑と地蔵菩薩が事件現場を見守っていた。

被告全員の無罪は確定。国家賠償も認められた。しかし公訴時効が成立。被疑者の逮捕・起訴には至っていない。被害者のためにも真相究明が望まれる。

10月17日・18日には、松川事件60年記念集会が福島大学で行われる。18日には関係者などが同公園を訪れ、死亡した乗務員3名や「冤罪被害者」らを偲ぶ。

「9月12日」。最高裁で「松川事件被告全員の無罪が確定した日」である。【了】

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参考 福島大学 松川資料室

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パブリック・ジャーナリスト　高橋 健太郎