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「中電帰れ」座り込み/上関原発埋め立て

2009年09月11日

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ブイを運ぼうとする台船と漁船がにらみあうなか、陸地でも反対派の人たちが抗議の声を上げた=いずれも平生町

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作業船から、反対派の漁民やシーカヤックの人々に、抗議行動をやめるよう呼びかける中国電力側(手前)

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台船と漁船のにらみ合いを前に、岸壁の外で座り込みを続ける反対派の人たち

◆反対派が結集
   「中電、帰れ!」。繰り返し叫ぶ上関原発反対派の大合唱に、「皆様の理解を得て建設させていただきたい」と訴える中国電力社員の声はかき消された。10日、上関原発の敷地のうち14ヘクタールの海面を埋め立てる準備として始まった灯浮標(ブイ)の設置作業は、反対派の漁船などによる阻止行動で先送りされた。海の埋め立てが現実味を増す中、漁業や自然環境への影響を懸念する反対派の反発は一層の盛り上がりをみせた。

  中国電力がこの日から始めた作業は、海上工事の区域を航行する船に知らせるため、平生町の岸壁に置かれたブイ9基を原発建設予定地の上関町四代の400〜500メートル沖合に設置するもの。3日間の予定で初日は2基を運び出す予定だったが、「上関原発を建てさせない祝島島民の会」(山戸貞夫代表)の住民らが早朝から、岸壁前に漁船約30隻を集結させ、作業用台船の接岸を阻み続けた。岸壁の陸側では午前6時前から、続々と集まった反対派約60人が座り込みを続けた。

  活動の盛り上がりは、反対派が海の埋め立てが自然環境を劇的に変え、漁業や生物への悪影響を与えると懸念するためだ。山戸代表は「浚渫(しゅんせつ)される予定の取水口付近はタイやヤズの一本釣りの好漁場。実際に埋め立てが進むと、漁業で生計を立てるのが困難な島民も出る」と訴える。

  「埋め立てで海が死んでしまう」と座り込みをしながら眉をひそめたのは、亡くなった夫と十数年前までタコ漁を営んでいた女性(79)。「漁業の後継者が生活できなくなる。定年後に島での生活を望んでいた娘夫婦も、原発が出来たら島には帰らないと言っている」と肩を落とした。

  また、「長島の自然を守る会」の高島美登里代表は、予定地近くで生息が確認された国の天然記念物の海鳥、カンムリウミスズメについて、中国電力が「計画地での営巣はなく、原発建設が生息に著しい影響を与えることはない」と結論づけて工事に着手したことを批判。「カンムリウミスズメの生態は分からないことばかり。3〜4年かけた調査が必要なのに許せない」と主張した。

  一方、原発を推進してきた上関町の柏原重海町長は反対派の阻止行動について、「それぞれの思いで行動されていることで、評価することはできない。中国電力には、今後も安全に配慮してほしい」と話した。

   ◇   ◇

  県は10日、現地に職員を派遣しておらず、中国電力と反対派のにらみ合いが始まった同日午前、県港湾課の担当者は「『反対をしている人たちがいて工事が始まりそうにない』ということは伝え聞いているが、特に感想はない」と話した。ある県幹部は「中国電力の社員があいさつに来た際、反対活動があれば事故がないようにして欲しいと伝えた。ただ、県が両者を仲介することはしない」と話す。この幹部は「あくまでも県は賛成でも反対でもないという立場だ」と強調した。

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