法務省司法試験委員会は10日、法科大学院修了者を対象とした4回目の新司法試験の合格者を発表した。合格者数は2043人(男性1503人、女性540人)で昨年を下回り、委員会が今年の目安とした2500~2900人に届かなかった。合格率は3回連続低下して27・6%と初の2割台になり、過去最悪を更新した。
社会人経験者など法学部以外の学部出身者が多い未修者(3年)コースの合格率は18・9%で、法学部出身者向けの既修者(2年)コースの合格率(38・7%)を大きく下回った。新試験で3回の受験資格を使い切って不合格になった受験者も493人に上った。
今回は法科大学院全74校から過去最多の7392人が受験。合格者の最高年齢は55歳で平均年齢は28・8歳だった。合格者の出身法科大学院別では東京大が216人でトップ。▽中央大162人▽慶応大147人▽京都大145人▽早稲田大124人--が続いた。合格率トップは一橋大(62・9%)だった。
合格者数については、10年に3000人に増員する政府方針に基づき、毎年の目安が示されている。だが、2年連続で届かず、政府方針達成は難しくなった。【石川淳一】
新司法試験の合格率が低迷する背景には、全国74校で総定員約5800人まで膨れ上がった法科大学院の乱立がある。過剰な定員が教育の質の低下を招いたとの指摘もあり、過去最悪の合格率を受けて総定員見直しはさらに加速しそうだ。
「合格率7割を維持するなら、定員は3000人くらいに減らすべきだ。ある程度選択と集中が必要」。5年の銀行員経験を経て今回合格した早大法科大学院修了の男性(30)は、発表会場の法務省前でこう語った。受験者の間でも、受験には「リスク感」が漂う。
政府の司法制度改革審議会は法科大学院の創設にあたり、新司法試験の合格率を「7~8割」と例示。法学部以外の卒業生や社会人経験者など多様な法曹像を求めた。だが、今回の未修者合格率は2割弱。社会人からの法科大学院入学者は減少傾向にある。
合格率は上位校と下位校の格差が大きく、50人以上の合格者を出した11校で合格者の6割を占める。今後は学生数の絞り込みと同時に、教育内容の充実も求められそうだ。【石川淳一、伊藤直孝】
==============
■ことば
裁判官、検察官、弁護士の法曹人口拡大を目指して06年から始まった。法科大学院修了者が5年間に3回まで受験できる。合格率が2~3%で受験技術偏重と批判のあった旧試験を改め、合格率を引き上げる狙いがある。
==============
大学院名 合格者 合格率(%) 未修者合格率(%)
1 東京大 (1) 216 55.5 41.0
2 中央大 (2) 162 43.4 21.1
3 慶応大 (3) 147 46.4 29.3
4 京都大 (5) 145 50.3 30.1
5 早稲田大 (4) 124 32.6 31.3
6 明治大 (6) 96 31.0 21.4
7 一橋大 (7) 83 62.9 56.1
8 神戸大 (8) 73 49.0 35.0
9 北海道大 (19) 63 40.4 27.3
10 立命館大 (9) 60 24.7 20.5
11 大阪大 (14) 52 33.5 25.9
12 九州大 (16) 46 26.4 22.6
13 同志社大 (9) 45 19.1 10.1
14 上智大 (13) 40 27.8 23.0
名古屋大 (21) 40 33.3 28.7
16 関西学院大(12) 37 19.4 12.3
17 関西大 (16) 35 16.9 13.2
18 首都大東京(15) 34 39.1 24.0
19 東北大 (9) 30 19.5 16.9
20 法政大 (21) 25 18.1 16.7
立教大 (25) 25 22.3 20.8
22 大阪市立大(19) 24 25.0 17.0
千葉大 (18) 24 37.5 30.0
24 学習院大 (26) 21 24.4 20.0
広島大 (28) 21 25.0 22.7
26 愛知大 (30) 20 48.8 40.0
日本大 (23) 20 13.1 11.1
横浜国立大(24) 20 25.3 20.7
29 南山大 (33) 18 30.5 24.4
30 甲南大 (36) 17 18.3 15.5
専修大 (26) 17 20.5 10.5
32 成蹊大 (29) 14 20.6 16.7
新潟大 (41) 14 17.3 14.9
34 岡山大 (37) 13 25.0 26.5
35 大宮法科大(30) 12 14.8 14.8
創価大 (35) 12 15.8 12.1
山梨学院大(45) 12 26.1 17.4
38 金沢大 (55) 11 22.4 22.2
39 西南学院大(65) 10 14.9 14.8
40 近畿大 (55) 9 18.0 17.9
明治学院大(30) 9 11.7 10.4
42 青山学院大(33) 8 9.0 7.6
桐蔭横浜大(42) 8 12.9 12.9
44 関東学院大(55) 7 12.5 12.0
福岡大 (40) 7 18.4 14.7
北海学園大(65) 7 29.2 20.0
名城大 (51) 7 18.9 10.0
48 国学院大 (55) 6 10.9 11.1
中京大 (42) 6 15.8 17.1
広島修道大(45) 6 12.8 7.1
51 熊本大 (45) 5 15.6 16.1
久留米大 (51) 5 10.0 10.3
駒沢大 (37) 5 10.4 15.4
東洋大 (55) 5 7.1 3.3
独協大 (42) 5 7.6 7.6
龍谷大 (65) 5 10.4 10.4
57 愛知学院大(72) 4 15.4 12.0
神奈川大 (51) 4 6.7 7.1
静岡大 (65) 4 11.1 6.1
信州大 (72) 4 15.4 15.4
駿河台大 (37) 4 5.0 3.8
東北学院大(45) 4 12.1 10.3
白鴎大 (65) 4 16.7 11.8
琉球大 (63) 4 10.0 10.0
65 香川大 (63) 3 7.1 5.1
神戸学院大(49) 3 10.7 7.7
大東文化大(49) 3 7.0 8.3
筑波大 (51) 3 8.8 8.8
東海大 (55) 3 6.0 6.1
70 大阪学院大(70) 2 5.6 3.3
鹿児島大 (70) 2 5.7 5.7
姫路独協大(72) 2 7.7 5.0
73 京都産業大(55) 1 2.0 2.2
島根大 (55) 1 4.3 4.3
計 2043 27.6 18.9
※カッコ内は昨年の順位
毎日新聞 2009年9月11日 東京朝刊