深刻な雇用状況は、高校生の就職活動にも暗い影を落としている。厚生労働省が11日公表した来春卒業予定者の求人・求職状況で、求人数が前年のほぼ半分になるという厳しい実態が明らかになった。特に、沖縄、青森県の求人倍率は0・1倍台。地方からは「就職氷河期の再来」と悲痛な声が上がっている。【東海林智、矢澤秀範、門田陽介】
求人倍率0・11倍と全国最悪の沖縄県。沖縄本島中央部の県立高校の男性進路指導主任(58)は「今年は極端に求人倍率が低いとうわさにはなっていたが……」とため息をついた。6月の求人受け付け開始後、学校に届いた求人票は去年の半分、採用人枠も減った。
沖縄県教委の就職担当者は「金融危機の影響で状況が悪いと聞き、4日の県立高校の校長研修会で『ここ数年で経験したことのない状況』と説明したばかり」と頭を抱える。
地元採用の枠を増やすため県教委は、ハローワークや県高等学校長協会と連携し、商工会議所など県内経済団体に求人枠の拡大を要請。那覇商工会議所(那覇市)は会員約3800社に新卒者面接会の開催などを呼び掛けているが、「この1年の景気悪化で数百社が倒産した。会員の大半が中小零細企業で厳しい」と本音を漏らす。
0・16倍の青森県。同県の高等学校・障害児学校教職員組合には、就職活動解禁となる16日を前に進路指導担当者から、「例年採用していた会社10社から1人の求人もない」「毎年4人を採用してくれる企業の採用が1人になった」といった報告が寄せられている。
不況を理由とするところが多く、製造業などが厳しい。谷崎嘉治委員長は「東北、北海道は10年前の就職氷河期と同じ状況になっている。このままでは、高校卒業と同時に失業者になってしまう生徒が多数出るだろう」と危機感を募らせる。
同県の進路指導教諭は「このままでは地域から若者がいなくなってしまう。でも、仕事がなくては引き留めることもできない」とこぼす。
一方、採用する側である青森市の建設会社の担当者は「経営で精いっぱいで、社員を減らしている状態」と採用に否定的。青森労働局は「景気が回復し、追加求人が出たころには優秀な人材が県外にいってしまうのでは」と懸念している。
毎日新聞 2009年9月12日 東京朝刊