「わが家の投票率は66.6%でした」。衆院選後、取材先で出会った男性が私に言った。長男がダウン症だという。「37歳になりますが、選挙権を得て17年間、投票をしたことがありません」。男性と妻は投票したので66.6%というわけだ。
男性はさらに説明した。「候補者の名前の書き方を教えれば、息子は何とかその通りに書けるかもしれませんが、誰に投票すればいいかの判断はできないんです」
今回の衆院選小選挙区の投票率は、男性宅のそれより少し高い69.28%。現行制度下で最高だったという。一方で選挙権があっても行使できない人がいる。その実態は投票率が上がるほど浮き彫りになるのかもしれない。
選挙のたびに彼のところにも投票所入場券が届けられてきた。これからも届き続ける。彼の1票を生かす手はないのか。【平川昌範】
毎日新聞 2009年9月8日 地方版
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