民主党が衆院選で圧勝した直後から新聞やテレビには「不安」「戸惑い」といった言葉があふれる。いきなり「あの公約は本当に実現できるのか」と疑ったり、小沢一郎氏の幹事長就任が決まれば条件反射のように「二重権力構造では」と懸念したり。
約束を破れば私も激しく批判する。でも新政権はまだスタートもしていないのだ。少し急ぎ過ぎではないか。
既に他の欄でも書いたけれど、多くの有権者は「それみたことか。やっぱり何もできないじゃないか」と批判するために民主党に投票したのではない。「少しでも、政治を変えてくれたら」と希望を託して1票を投じたのだ。それに応えてもらうため、民主党の尻をたたくのが私たちの仕事ではなかろうか。
「戸惑い」も同じ。官僚や業界団体などこれまで自民党と一心同体で生きてきた人たちが戸惑うのは当たり前だ。しかも例えば一口に官僚と言っても、幹部の話を聞けば確かにそんな話を口にするが、「今までは前例踏襲の仕事ばかりでうんざりしていた。今度は自分が考えてきた政策が実現できるかも」と政権交代に大きな期待を寄せている若い官僚たちが少なからずいることも私は知っている。
政権交代に戸惑っているのはメディアかもしれぬ。だが、考えてみよう。省庁の縦割りを排し、予算の骨格や外交の基本方針を首相直属で一元化して決定するという国家戦略局が仮にうまく機能するようになったとする。その時には、私は○○省担当記者だ、政治部だ、経済部だ、社会部だなどと言っている場合ではなくなるはずだ。
これはとてもいいことだ。政治報道も変わっていくチャンスだと私は考えている。
毎日新聞 2009年9月10日 0時10分
9月12日 | 20年ぶりに戻ったら=伊藤智永 |
9月11日 | グローバリゼーション=福本容子 |
9月10日 | 政治報道も変わる=与良正男 |
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9月8日 | 埋もれゆく言葉=玉木研二 |