卓上四季
わからない(9月12日)
〈ああわからない、わからない。今の浮世はわからない〉。そんな明治の演歌が耳に響くようだ。道立高校が、衆院選に関する北海道新聞の社説を教材にした。道教委によれば、それが不適切な指導だという▼その理屈が、まったくわからない。「自民党批判に見える社説を教材にするのはおかしい」と保護者から聞いた道議の指摘から、道教委が調査を始めたという▼どんなに厳しい自民党批判かと読み直したが、各党の主張を併記した抑制的なものだ。先月の18日付、古新聞の束に残っているかもしれないからご覧ください。道教委も、取材に対し「社説に偏りがあったとは言っていない」と述べている▼それなら不適切ではないはずだ。だが道教委は「1紙のみの社説を活用する」ことが「偏った認識を持たせかねない」と、道議とは違う点を根拠に持ち出した。そんな理屈があるものか。1紙だから偏る、というものではない。2紙、3紙にしても、共通する論調はある▼道教委は通知で全道立高校に報告を求め、授業で使った記事を添えさせた。その中で自民党がどう書かれているのか、点検しようとすればできる。現場には圧力となるだろう。それが、通知の現実的、政治的な効果だ▼〈ああわからない、わからない〉。明治の演歌が耳に響く理由が見えてきた。お上が政権批判を封じ込めたがる、時代錯誤の気配を感じたからだ。