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社説

授業と新聞 道教委通知こそ不適切(9月12日)

 帯広市内の道立高校が、公民の授業に教材として北海道新聞の社説を使った。

 道教委は1社のみの社説使用は「特定の政党の政策について偏った認識を生徒に持たせかねない」として、全道の道立高校長に授業への新聞活用の実態を報告するよう通知した。

 道教委はこの授業を「不適切な指導」とも断じている。本紙の社説を活用することが、政治的にゆがめられた授業につながるとする論理は理解できない。

 道教委が問題とした8月18日の社説は、衆院選公示にあたり、「歴史的な選択の幕が開く」との見出しで選挙の意義を論じたものだ。

 特定の政党を支持する意図で書かれたものでないことは、一読して分かるのではないか。

 帯広市選出の道議から「授業を受けた生徒や保護者は問題があると言っている」との指摘が道教委にあり、実態調査をしたという。

 授業は、社説の文中にある「政権交代」「マニフェスト」「国内総生産」など九つの言葉を空欄にし、用語の知識を問うた。

 教師は社説の論調には触れず、後日、各政党の政権公約について生徒にグループ討論させたという。

 そのどこが不適切なのか。

 通知は、特定政党を支持するなどの政治教育や政治的活動を禁じた教育基本法14条2項を挙げ、これに反しないよう求めた。

 条文は、教育への政治の不当な介入を排除するものでもある。

 行政が現場の教育内容に言及するのは慎重であるべきだ。議員の指摘によって通知を出す行為は、政治の介入とも受け止められかねない。

 また、14条はその1項で「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重しなければならない」とも定めている。

 社説を使った授業の意図は、素直に受け止めれば、この趣旨に沿うものだ。政治的に偏っていると解釈するにはどうみても無理がある。

 新聞業界と教育界は、新聞を教材として活用するNIE活動に協力して取り組んでいる。

 NIEは世界各国で実施され、読解力向上や社会的問題についての関心を高める教育効果が高く評価されている。

 北海道は国内でも活動が盛んな地域だ。道教委の通知が教師を畏縮(いしゅく)させ、この活動に水を差すことにつながらないか。それが心配だ。

 自由に創意工夫を凝らし、教師と児童・生徒が向き合う授業こそが教育の原点といえるだろう。

 道教委の役割は生き生きとした学校づくりを支援することだ。管理を強化することではあるまい。

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