日教組の「悪法支配」を許すな:八木秀次(高崎経済大学教授)、三橋貴明(評論家・作家)(1)

Voice2009年9月11日(金)20:00

明確になった「いちばんの敵」

 八木 大方の予想どおり、この総選挙では民主党が勝利を収め、いよいよ政権交代ということになりました。

 この選挙期間中もテレビの報道番組などに出てくる民主党議員は保守系で、若くて清潔そうな方々が多かった。だからこそ、自民党のこれまでの不甲斐なさを見て、「一度、民主党に政権を渡したほうがいい」と考える有権者が多かったということでしょう。しかしそうやって街頭演説やテレビに出てくる人たちと、実際の民主党の政策決定の主導権を握っているところとは、まったく違う。そのあたりのことをマスコミはいっさい明るみに出していないわけです。

 実際に民主党はどのような組織に支えられているかというと、まずは労働組合の連合。ことに連合のなかの自治労や日教組などの官公労組が強力な支持基盤です。さらには在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)、在日本大韓民国民団(民団)、部落解放同盟ほか、さまざまな左翼の市民運動団体が民主党を支えている。また、民主党の事務局を支えているのは旧社会党の社会主義協会派の人たちで、彼らが政策決定に大きな影響力を行使しています。このような事実は大きく報じられることはなく、ほとんどの有権者には届いていません。

 いよいよ民主党政権誕生ということになると、いままで明るみに出てきていないことが次々に表に現れ、隠然たる支持基盤であった左翼勢力が年来主張してきていた政策や法案が次々と現実のものとなるでしょう。三橋さんは人権擁護法や東アジア共同体が実現した近未来を描いた『新世紀のビッグブラザーへ』(PHP研究所)という仮想小説をお書きになっていますが、いよいよそのような社会が到来するのではないかと思われて、私としては背筋が寒くなります。

 三橋 この本のいちばんのポイントは、「情報が止められる」あるいは「意図的に間違った情報が流される」ことによって、知らないうちに社会もわれわれ自身も変えられてしまう恐怖です。人権擁護法やマスコミの偏向報道によって暗黒社会となる近未来世界を描いたわけです。

 今回の選挙でも、やはりマスコミの報道姿勢は大いに気になりました。たとえば月額26000円を中学卒業まで支給するという「子ども手当」。お子さんのいる有権者は喜んだかもしれません。しかし、その財源として所得税の配偶者控除や扶養控除などを見直すといいます。その結果がどうなるか正確に報道されたでしょうか。民主党は「中学卒業までの子供のいるすべての世帯で手取り収入が増える」としていますが、子供が中学を卒業したあと、または子供がいない家庭はどうなのか。人生全体を通してみたら、はたして収入が増えるのかどうかなど、正しく検証されたでしょうか。

 もう1つ、たとえば高速道路の無料化。その財源として予算を全面的に組み替えて新しい財源を生み出すといいます。しかし、高速道路には合わせて30兆円を超える借金がある。これを返済するときに、本当に国民の負担が増えないのか。その検証もマスコミはほとんどできていなかった。

 さらに「ニコニコ動画」というWebサイトの生放送で、鳩山由紀夫氏が「日本列島は日本人だけの所有物ではない」と発言し、ネットの世界では大変な騒ぎになりましたが、これをどれほどのテレビや新聞が取り上げたでしょうか。

 とにかく民主党の政策には「裏」がある。そこに強い光を当てないマスコミには作為的なものを感じざるをえませんでした。民主党の支持勢力に日教組や大韓民国民団などがいるというのはたしかに問題ですが、しかしべつにそういう政党があってもいいし、そういう政党をつくることは自由です。いちばんの問題は、その種の情報がきちんと国民に流れないことなのです。いま述べた財源の問題も同じです。そのようなことがオープンになり一般の国民に知られたうえで民主党が選ばれたのであれば、たしかにこれは民意でしょう。しかし今回本当にそうだったか。事実を隠している人たちこそが本当の悪なのです。そういう意味で今回の選挙では、日本国民のいちばんの敵は誰なのかが明確になったと思います。

 八木 自民党と民主党の本当の対立軸は、たとえば外国人参政権や教育政策、歴史認識など、国の在り方そのものに関わる問題にこそあるはずなのです。外交・安全保障も違いはありますが、相手のある話ですから、現実的には大きく変わらないかもしれません。まして経済政策や社会保障は、現在の体制のなかでやるわけですから、自民党も民主党もそれほど大きく変わりようがない。しかしマスコミは、国の在り方に関わる問題や外交・安全保障の問題はどちらかといえば矮小化し、経済政策的な部分ばかりを取り上げたがる。そうすると違いは見えてこないので、有権者は見栄えのいいほうを選ぶしかない。1枚皮をめくると、非常に醜いものが出てくるかもしれないのに、です。その点、インターネットのメディアはどうなっているのでしょうか。三橋さんはまさにWebの世界から彗星のように登場されたわけですが。

 三橋 ネット上では、さまざまな人がいろいろな情報を基に話します。そうなるとそこに「集合知」が生まれる。つまり、多くの意見が交換されるなかから、なんとなく正しいものが見えてくるわけです。このようなネット上の意見がどれほど現実の社会に影響を与えているかといえば、せいぜい6%ぐらいだといわれています。いまのところまだその程度ですが、逆にいえば、もう6%という言い方もできる。

 たとえば「戦時中に朝鮮人が強制連行された」という神話があります。学問的にはすでに否定されていますが、しかし、あれをここまで社会に浸透させたのは、6%どころではない1%以下の人たちでしょう。そう考えれば、6%というのはそれなりの力があるんです。目的意識をもって動くことができれば、6%でも十分社会を変えられると思います。経済学者のフリードリヒ・ハイエクが「社会主義者からわれわれが学ぶことは何もないと思っていたが、たった1つあった。それは彼らが、繰り返し語ることだ」と述べています。それを保守の側もやるべきでしょうね。

 八木 国内の左翼も、あるいは中国、韓国もそうなのですが、うんざりするくらいのしつこさがありますからね。嘘も100回いえば本当だと思う人も出てきてしまいます。

1 | 2 | 3 | 4    次のページ→

 2009年10月号のポイント
民主党政権誕生。「日本をこう甦らせて欲しい」と、一言述べたい人も多いだろう。そこで、緊急特集「民主党にこれだけは言いたい!」と題し、李登輝氏、竹中平蔵氏、花岡信昭氏など9人の論客に日本国民の気持ちを代弁して提言いただいた。日本再生へ思いを民主党に託す、力のこもった意見の数々を是非お読みください。
その他、ビル・エモット氏の中国論(力作50枚)、大前研一氏の日本経済展望など、注目論文満載です。

Voice最新号目次 / Voice最新号詳細 / Voice年間購読申し込み / Voiceバックナンバー / Voice書評 / PHP研究所 / 特設サイト『Voice+』
Voice最新号
 
 
  • ソーシャルブックマークに追加:
  • gooブックマークに追加
  • Yahoo!ブックマークに追加
  • はてなブックマークに追加
  • Buzzurlに追加
  • livedoorクリップに追加
  • FC2ブックマークに追加
  • newsingに追加
  • イザ!に追加
  • deliciousに追加
この記事について ブログを書く

過去1時間で最も読まれた政治ニュース

ニュースキーワード


注目のトップニュース
ベテラン勢は谷垣氏擁立の動き
マスコミ伝えぬ民主の政策を問う
酒井被告を待ち受ける禁断症状
メルアド、電話で伝えるには?
「秋ばて」原因は夏の冷やしすぎ
沖縄の114歳女性が世界最高齢に
杉山、涙の引退会見で婚活宣言も
9・11救援者も無保険…米の現実
注目の政治ニュース
国家戦略局は神でない…岡田氏
前原国交相・福島環境相が有力?
民主新人の渡辺氏が破産手続き
官僚でなく第三者で核密約検証へ
ベテラン勢は谷垣氏擁立の動き
マスコミ伝えぬ民主の政策を問う
他党批判CM…悪印象で「逆効果」
次期衆院議長は横路氏の見通し
写真ギャラリー
写真ギャラリー
揺れる政治
ついに政権交代
gooニュースオリジナル企画
公示:8月18日(火) 投票:8月30日(日)
立候補者名簿/海外から見るニッポン/みんなの意見/政党・選挙ニュース

gooニュース編集スタッフが気になるニュースや編集現場のようすをつぶやきます。
今週のトピックス
gooランキング
教えて!goo 人気のQ&A (政治)
高速道路無料化について
第1位の質問
福島瑞穂党首の迷言の真偽
第2位の質問
民主党のマニフェスト「子ども手当」について
第3位の質問
おすすめメルマガ
最新ニュースを、メルマガでお届け
 
おすすめコンテンツ
goo旅行
国内旅行のクチコミ情報をチェック
goo住宅・不動産
気になるあの路線・駅の家賃相場は
goo天気
生まれた日の天気・気温を見てみよう
goo自動車&バイク
新車ニュース&コンパニオン画像
gooダイエット
痩せる方法100種類
goo求人&転職
起業家インタビュー好評連載中
goo進学&資格
三日坊主も安心!まずは体験講座
gooヘルスケア
家庭の医学 病気検索
gooのお知らせ
レシピカレンダーgooグルメ&料理ランチ・晩ご飯のメニューに迷ったら、1ヵ月分の日替わり「レシピカレンダー」
新型インフルエンザ特集gooヘルスケア“新型インフルエンザ”に関するニュースやQ&Aを特集
gooニュースサービス説明