(cache) アシスト:コラム(Our World) / ビル・トッテン関連情報
アシスト
English Korean サイト内検索
people assisting people
ホーム > アシストについて > ビル・トッテン関連情報 > コラム(Our World)

ビル・トッテン関連情報

コラム(Our World)

題名:No.97 Our Worldの3周年目に際して
From : ビル・トッテン
Subject : Our Worldの3周年目に際して
Number : OW97
Date : 1997年02月19日
Our Worldの配信を始めてから今月で3年目になります。今回のメモは、私が現在最も懸念している問題、また今後取り上げたい題材を私自身の言葉で綴ろうと思います。この内容に関して、読者の皆様からの忌憚のないご意見・ご感想を是非お寄せください。心よりお待ちしております。
(ビル・トッテン)

Our Worldの3周年目に際して
ビル・トッテン

マスメディアは日本経済の衰退に危機感を抱いているようだが、私はそれよりも日本社会全体の行く末を懸念している。初めて日本を訪れた28年前、経済的には米国の足元にも及ばぬ日本であったが、社会的には米国をはるかに凌いでいると私は思った。日本人よりも米国人の方がずっと金持ちであったが、健康、寿命、教育、犯罪、家族や地域社会に対する責任など、どの点をとっても米国人より日本人の方が優っていると私は感じた。特に日本人が、自国やアジアの文化・価値観にプライドを持っていたことを覚えている。今日、経済的には米国を追い越したが、他の多くの面で後退し変貌した日本に驚いている。何よりも、私の目には日本が独立国家というより米国の植民地のように映る。

日本は独立国家かそれとも米国の植民地か?

 このタイトルを極端すぎるとお思いの方もいるだろう。もしそうであれば、以下のことを一緒に考えていただきたい。

1. 第二次世界大戦後52年経った今も、多くの日本国民の意志に反して米軍が日本に駐留している。

2. 昨年9月の沖縄県民投票で、91%の沖縄県民が米軍人と米軍基地の撤退を望んでいることが明らかになった。それに対し、橋本首相はこれを無視し、日本国民の国土に対する法的権利を無効にするよう日本の最高裁判所に働きかけ、現在、日本国民に帰属する土地を米国が強制的に使用できるよう法律を改正しようとしている。この首相の行動は、主権国家の首相というより、むしろ米国植民地の管理人のようである。

3. 日本が米国の植民地ではなく独立国であるならば、沖縄県民が9対1で米国の基地撤退を望んでいることが判明した際に、沖縄に代わって米海兵隊とその基地の受け入れを望む地方自治体が他にないか、各自治体で県民投票させるのが首相としてとるべき行動ではなかったであろうか。もちろん受け入れる都道府県などないであろう。これこそまさに日本国民の意志に逆らって日本が占領されていることの証ではないだろうか。

4. 政府の基本的義務は、国民と国民の資産を守ることである。沖縄で3人の米海兵隊による小学生暴行事件が起きた時、なぜ日本の警察には容疑者を逮捕する権利がなかったのか。また昨年1月、那覇市でスピードを出し過ぎた2人の米兵が白昼歩道にいた母子3人をひき殺した。独立国家の警察であればその場でアルコールや麻薬テストを行ったはずである。しかし、日本の警察は事件後、彼らが米軍基地に戻るのを指をくわえて眺めているしかなかったという。そして尋問や薬物テストが行われたのは数日後のことであり、体内から薬物が消えるのに十分な時間が経過していた。

5. 米軍基地は日本にどのような恩恵をもたらしているのだろうか。もしそれが冷戦時代に駐日米軍基地が日本を守るために存在していたのであれば、石原慎太郎氏が指摘するように、なぜソ連に最も近い日本の北西部の端ではなく、ソ連から最も遠い沖縄に米軍基地が位置していたのか。そして冷戦が終結した今、日本にとって米軍基地の存在理由は何なのか。日本が韓国や台湾、中国と紛争を起こした場合、基地を使って米軍が日本を守ってくれる保証があるのか。そういう意味では、日本に対して軍事的に脅威を与える可能性が最も高いのはむしろ米国ではないだろうか。

6. 日本国憲法は元々GHQによって英語で書かれたものである。植民地なら宗主国の言語で憲法が書かれるのは当たり前である。だが、独立国で憲法が他の国の言語で書かれた国が他にあるだろうか。

7. 言語に関して言えば、植民地であれば、学校で教える言葉も母国語よりも宗主国の言葉が主体になる。イギリス支配下のインドや南アフリカ、フランス支配下のベトナム、オランダ支配下のインドネシア、日本支配下の韓国がその例である。今の日本はどうか。中学、高校、大学の入試や必修科目には必ず英語が入っている。

8. 独立国家には国旗がある。日本の国旗は白地に赤の日の丸であるが、クリントン大統領が昨年4月に訪日した際、世界の新聞やテレビで報道されたクリントンは、赤と白の日の丸の周りに黄色で縁取りされた旗の前に立っていた。これは米国大使館の要求で準備されたものであろうが、日本政府にはそれに抵抗するだけの力も意志もなかったのであろうか。米国では黄色は臆病を意味する色である。日の丸の周りの黄色の縁取りは、日本が植民地であることを象徴していたのであろうか。

9. 独立国家であれば外貨準備高を金で保有する。一方植民地は宗主国に融資する。次の表を見て欲しい。

                外貨準備高
                1996年4月現在
               (単位:百万米ドル)

    国名        合計   金   外国為替 その他 金の割合

    フランス     58,890  31,658  23,588  3,644  54%
    イタリア     65,695  25,648  38,115  1,932  39%
    米国       83,710  11,050  46,580  26,080  13%
    イギリス     44,680  5,480  36,320  2,880  12%
    ドイツ      94,966  8,951  78,575  7,440  9%
    カナダ      17,364   164  14,808  2,392  1%
    日本       205,725  1,230  195,218  9,277  1%
    ----------------------------------------------------
    G7        571,030  84,181  433,204  53,645  15%
    ----------------------------------------------------

 日本が金で保有する外貨準備高は全体のわずか1%に過ぎず、残りの95%は外国為替であり、主に米ドルで保有している。マイケル・ハドソンがOWメモ『日本政府は外貨準備高をいかに浪費したか(前編・後編)』(No.74とNo.75)で説明したように、米国財務省証券を購入することで、日本政府はほぼすべての外貨準備高を米国財務省に融資しているのである。

 しかし、実際にはこれは米国政府への「融資」ではなく「贈り物」である。日本政府が30年ものの財務省証券を購入した場合、30年前にそれを購入した時には1ドル360円であったが現在は120円である。したがって、日本政府は財務省証券の購入時の3分の1でしか払い戻すことができないことになり、残りの3分の2は、日本の納税者から米国政府への贈り物ということになる。日本政府が20年前に1ドル240円で購入した財務省証券は現在その半分の価値しかない。消えた半分もまた、日本の納税者から米国政府への贈り物なのだ。また米国政府の立場から考えれば、為替レートが1ドル180円だった12年前に日本から借りた債務は、その3分の2(120円/180円)だけを返済すればよくなった。残りの3分の1は日本の納税者の損失となる。

 独立国家であれば外貨準備高で金を購入する。しかし日本政府は、その代わりに米国政府に融資した。その結果、日本の納税者は既に6兆円近くの損失を与えられた。6兆円と言えば1年間の消費税収入と同じ金額である。さらに、日本政府の現在の財務省証券の保有高は20兆円であるが、例えば今後ドルの価値が10%下がれば、日本の納税者は米国政府に2兆円の贈り物をすることになる。

 米国政府が毎年巨額の赤字を出しながらなぜ超大国であり続けることができるのか、多くの日本人が疑問に思っている。その答えは単純である。米国政府の赤字の原因は1950年代以来、一貫して富裕者や権力者、さらに大企業など、選挙の最も重要なスポンサーの税金を削減してきたためである。そして赤字分は、植民地の管理人である日本政府に植民地の住民の税金を使って米国財務省証券を購入させることで補填してきたのである。また一方で、ドルの価値を下落させ、償還時には日本が購入時に支払った金額よりもずっと低い償還額(日本の受取額)になるようにした。その結果、今度は日本政府がその目減り分を補うために日本国民に課税しなければならない羽目に陥っている。

 19世紀後半、イギリスは世界一の帝国主義国になった。国内には第三世界並みの貧困と劣悪な社会状況が渦巻いていたが、対外的には強大な力を持ち合わせていた。それを可能にしたのは、インド、南アフリカ、ローデシア、中国などイギリス植民地からの搾取であった。現在、破産寸前の米国が帝国的覇権主義を維持するために行っているのが、世界一豊かな国、日本から搾取することなのである。

10. 米国は一方的な政策や行動に対する国際的な支持を取り付け、また他の国にその財源を出させるために、国連を国務省の一部であるかのように利用する一方で、国連分担金を16億ドルも滞納している。ひるがえって日本は、戦後52年経った今も敵国というレッテルが消えないまま、国連の銀行としての役割を果たしながら、常任理事国にしてくれるよう懇願し、国連や他の国際委員会の場では米国の立場をすべて支持している。他の理事国が日本が常任理事国になるのを拒んでいるのは、それによって米国が投票権も拒否権も二票持つことになるのを恐れているためであろうか。

11. 次のような状況を考えてみて欲しい。誰かがあなたを高級レストランでの夕食に誘い、最も高い食事とワインを頼み、チップもはずみ、最後にその請求書をあなたに回したらどうするであろう。あなたは勘定を支払うだろうか。そんな人間を友人だと思うだろうか。私はこれこそ日米関係であると考える。日本政府は米国とのパートナーシップを強調しながら、米国から回ってくる勘定書を常に快く支払っている。湾岸戦争では、米国政府は日本の了承を得ることなく戦争を始めたにも拘らず、130億ドルという戦争費用の負担を日本に要求し、日本政府は従順にもそれを受け入れた。朝鮮エネルギー開発機構(KEDO)についても、米国政府は北朝鮮に対し原子力発電所を軽水炉に転換する要求をした。そして、その軽水炉のコスト50億ドルは日本と韓国が支払うと約束したのである。現在クリントン大統領と米議会は、米国がそのコストの0.5%を負担するか、あるいは0.25%を負担するかで議論をしている。いずれにしても、残りの99.5%あるいは99.75%は日本と韓国が支払わされるのである。

12. 米国政府は対日貿易で600億ドルの貿易赤字を抱え、それを理由に米国の要求を日本が受け入れるのは当然であると正当化している。しかし、このような分析は間違っている。この米国政府の主張は、米国企業が米国で作り日本で販売した製品と、日本企業が日本で作り米国で販売した製品との比較に基づいているからである。米国企業が国外、つまり日本や第三国で製造し日本で販売した製品はほとんど無視されている。したがってIBMやコカ・コーラ、モトローラ、ナイキ、リーボック、プロクター&ギャンブル、キャタピラー、インテル、ゼロックス、3M、その他の米国の多国籍企業が日本で販売している製品は、ほとんどその比較の対象には入っていないのだ。これら米国企業が海外で製造している製品も含めれば、貿易赤字など存在しない。二国間の製品貿易は均衡がとれているのである。それにも拘らず、日本政府は米国政府からの貿易不均衡に関する非難を鵜呑みにし、米国の要求を受け入れている。

 ある国が他の主権国家に対し、明らかに間違ったデータを利用して、こうしたばかげた要求を行うことが他にあるだろうか。むしろそれは帝国主義国家とその植民地との関係と考えた方が納得がいく。

13. 製品貿易だけではない。米国はサービス貿易において、20億円の対日貿易黒字を出している。日米間の旅行者の数を比較すれば、日本から米国を訪れる日本人9人に対して、米国から日本への訪問者は1人である。こうした日本人旅行者が米国で利用する航空会社や銀行、保険、株式、カジノ、コンサルタント、ホテル、レストランなどのサービスは、日本にやって来る米国人のそれに比べてかなり多い。米国政府がこの点に触れないのは、在日米国企業のために常に特別な譲歩を要求しているのだから当然である。しかし、日本政府がこの点を主張しないのはなぜであろうか。

 米国政府はサービス分野においてさらに黒字を押し上げるべく米国企業に対する譲歩を要求し続けている。その要求には次のようなものが含まれる。

1) ここ数年間、米国政府は日本政府に対して、個人向け障害保険、老人看護、ガン保険といったいわゆる第三分野に関しては、日本企業の保険販売を禁止するように要求してきた。つまり米国政府はこの分野を米国系保険会社の独占として残すよう日本政府に求めているのだ。これは、イギリスがインドに対して、塩や衣類を国内で製造せず、イギリスから購入するように要求していたのと同じではないだろうか。このようなイギリスとインドの関係は、マハトマ・ガンディーのもとでインドがイギリスから独立し、植民地支配が終わるまでずっと続いたのである。
2) 米国政府は日本が米国航空会社に以遠権を拡大するよう望んでいる。それは、日本が米国航空会社に対して、日本経由で第三国に飛ぶ米国航空会社の便数を増やす許可を与えるように要求するものである。日本は日米間の空の交通を管理する現在の日米航空協定が、1952年、マッカーサーの占領時代に無理矢理結ばされたものであり、米国寄りの不平等条約であると考えている。米国に都合の良い条件をこれ以上認めさせられる前に、この協定を何とか改正したいと望んでいる。以下にいくつか事実を列挙するので、日米いずれの言い分が正しいか、読者の皆さんご自身で判断していただきたい。
   a) 米国の航空会社3社が日本経由で第三国に飛ばせる航空便の数は週156便であるのに対し、日本の航空会社の中で米国経由で第三国に飛べるのは1社で週2便だけである。
b) その米国の航空会社3社が昨年日本経由で第三国に運んだ乗客数は1,390,000人であるのに対し、日本の航空会社1社が米国経由で第三国に輸送した乗客数は4,000人にすぎなかった。
c) 米国の航空会社は昨年、日米間で6,750,000人の乗客を輸送したが、日本の航空会社の輸送実績は日米間で3,270,000人だった。また日米間を移動した乗客の内、85%が日本人であった。

 このような状況は主権国家2カ国の間の平等な協定であると言えるだろうか。それとも帝国主義の宗主国による植民地の搾取と考えるべきであろうか。

14. 最後に、いわゆる「日米構造協議」、「日米包括経済協議」、「米国政府の日本における規制緩和、行政改革及び競争政策に関する日本政府に対する要望書」等々、名称は変わるものの、二国間交渉はとめどなく続いている。米国の大統領が替われば、交渉の名称も変わるが、茶番劇の内容はいつも同じである。まず、米国政府は政治献金を行う米国企業のために日本市場での特別扱いを要求する。すると日本政府は即座に、さもなくば少し抵抗を装った後に譲歩を行う。米国の要求が日本の最大の政治献金者の利益と真っ向から衝突する場合でさえ、日本政府が米国の要求をうまく阻止できることはほとんどない。一方、日本政府は米国に対して要求を行うことはないに等しく、米国政府が譲歩することもほとんどない。このような関係を、主権国家同士の相互の国益のための交渉と言えるだろうか。

 ちょうどこのメモを書いている間に、米国政府はブレーキパッド(摩擦材)を「重要保安部品」(日本が認証した工場で整備が必要とされる)から除外しなければ制裁措置をとると、日本に脅威を与えている。米国政府はブレーキは重要部品ではなく、日本の道路を走る自動車の安全規制を決定するのが日本政府ではなく米国政府であるとでも言うのであろうか。

米国はいかにして日本を植民地化したか

 日本が独立国家から植民地に成り下がったのは偶然の出来事ではない。むしろ1945年以来、米国の意図的な政策によって植民地化されてきたのだと私は確信している。そこでは次のような方法がとられてきた。まず、日本の文化、価値観、習慣を教える教育、その他の制度が崩壊された。そしてそれに代わり、日本の文化、価値観、習慣を蔑み、米国の文化、価値観、主観を偶像化する教育制度やその他の制度が導入された。ヘレン・ミアーズが『アメリカの鏡・日本』(メディア・ファクトリー刊)の中で、こうした米国の政策、さらにマッカーサーによる政策の実施について述べている。本書はOW91(1/8/97)の中でも紹介したが、是非ご一読されたい。

 ミアーズによれば、マッカーサーは麻原彰晃よりも悪質なマインドコントロール制度を作り上げたと考えられる。戦後教育を受けた世代は、儒教の流れをくんだ道徳教育を受けていない初めての世代である。道徳教育や儒教は、千年にわたり日本の先祖に教え伝えられ、また急成長するアジア社会では今なお教えられている。それに代わってこの世代は、米国や米国人を模倣・偶像化するような教育を受けた。このマインドコントロールがあまりにも奏効し、今日、大半の日本人は日本が米国の従順な植民地であるということに気づかず、米国のパートナーであると考えている。

 ミアーズ以外にもこのような主張をする人々はいるし、米国が日本を植民地化するために行ったことはマインドコントロールだけではない。OWメモ『自民党のスポンサーはCIAだった』(No.14)と『65年沖縄選でCIAが自民党に秘密資金援助』(No.88)でその一端を紹介したように、例えばCIAは日本の政治過程を悪用し、政治家が米国の植民地として日本を管理し、一方国民の前では独立国家として統治しているよう振る舞うよう働きかけてきた。だがミアーズの本はとりわけ説得力があるように思う。なぜなら私個人の日本での経験と合致しているからである。私が日本に初来日した1969年には、日本は偉大な国であった。松下幸之助や土光敏夫、本田宗一郎など戦前の日本の文化や価値観、習慣、伝統を身につけ、独立心をもって考え、行動できる人々が指導者的立場にいたためである。そして、こうした指導者達は、自分が築いた会社を社会の礎とした。当時日本にはバブルなどなかった。株や土地への投機ではなく、モノの生産に投資していたからである。住専問題もなかった。当時の指導者達が頭を悩ませたのは自分達の博打のつけをいかに納税者や消費者に押しつけるかではなく、新製品の開発だったからである。

 日本が1980年代頃から衰退してきた理由は戦前の教育を受けた指導者が引退し、マッカーサーの洗脳教育を受けた世代が台頭してきたためだと私は思う。米国を偶像化し、普通の国とは米国に追随することであると信じる「黄色いバナナ(外側は黄色人種であるが中味は白人」の世代が、戦前の世代にとって代わったためなのである。

ご意見・バックナンバーのお問合せ先:
E-Mail
Fax 03-5276-5895
郵便宛先 〒102-8109 東京都千代田区九段北4-2-1 市ヶ谷東急ビル

著作:株式会社 アシスト  代表取締役 ビル・トッテン
発行/翻訳/編集:株式会社 アシスト


当ホームページの無断転載厳禁