【モスクワ大前仁】ロシアで、日本の次期首相となる鳩山由紀夫・民主党代表だけでなく長男紀一郎さん(33)にも関心が集まっている。紀一郎さんが現在モスクワで都市交通問題を研究しているためで、露メディアは衆院選後、紀一郎さんについて大きく報道。紀一郎さんは「モスクワの深刻な交通渋滞の改善策を示すことで、日露の関係拡大に貢献したい」と語り、次期政権で北方領土問題の解決を重要課題に掲げる父親を“側面支援”する形となっている。
東大大学院工学系研究科の助手だった紀一郎さんは、08年9月からモスクワ大の経営管理学部で客員講師として都市インフラの管理問題などを教えるかたわら、モスクワの交通問題を研究している。ロシア行きを決めたのは、専門分野の研究を進めると共に、戦後の対露外交で重要な役割を果たしてきた鳩山家の一員として「日露の関係改善に(貢献したい)思いがあった」という。特定非営利活動法人「日ロ協会」の会長を務める鳩山代表がモスクワ大のサドブニチイ学長と親しいことから、同大の教員職を紹介された。
モスクワでは近年、車の所有者が急増しているが、全面積における道路の割合(8・7%)が東京23区(16%)の半分の水準にとどまり渋滞が日常化している。紀一郎さんはさらに、信号などの交通表示が分かりにくい▽交通規制の情報が十分に広報されていない--などの問題点を指摘。これらの研究成果をもとに渋滞緩和の具体策を報告書にまとめ、モスクワ市や警察に提出する予定だ。
曽祖父の一郎元首相(故人)が1956年にソ連との国交を回復した「日ソ共同宣言」に署名したことから、ロシア国内で「鳩山」は知名度が高い。紀一郎さんは「以前よりもプレッシャーを感じるが、報告書の作成でできるだけのことをしたい」と語る。
一方、衆院選では日本に一時帰国して、鳩山代表の応援演説に加わったが、自らの政界転出については「今のところはない」と話した。
毎日新聞 2009年9月12日 東京夕刊