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2007年1月23日 (火)

トップをねらえ2! & トップをねらえ! 合体劇場版

題名:『トップをねらえ2!』遅効性の毒

 明け方――
 急に頭のなかで何かが化合して、涙がコボれてきた。なんでだかわからなかったが、どうも『トップ2!』のことらしいと、しばらくして気づく。
 そうなんだ。自分で書いてたじゃん。「明るい話かと思ったら、切ない話」って。
 これ、要するにノノのことがメインの話だと思ったら、メインはラルクだったという意味なんだ。劇場版は整理するときに、そこをストレートに出している。
 そしてクライマックス、巨大メカのどつきあい。OVA観たときには正直、滑ってるんじゃないかと思う部分もあった。だけど、でかいものが正しくでかく見えるスクリーンで、きっとスタッフの「マジ」がストレートに飛びこんできて、浴びてしまったんだと思う。
 拒絶することもできず、染みこんでしまった映像体験。それが「毒」。じわじわと効いてくる毒。1と2が「対」になることで効く毒。あ、いけね。このことも自分で書いてるじゃん。オレってバカなのか?

 次なる触媒は、「トップ2!」最終回のサブタイトル。ガイナックスの伝統に従って、それはSF小説からの引用で、「あなたの人生の物語 (テッド・チャン著)」。この「あなた」って、「ラルクはあなた」という意味なんだよね、きっと。
 そしてもっとも気になるのは、未見の方のネタバレになったらゴメンだが、「別離」のシーン。あの静謐さのせいだよね、あとでジワジワ効くのは。
 そういうのが、もろもろ頭の中でひとつになって、「永遠に戻らない人」のいくつかの記憶と結びついて、オレはそういう人たちに対して本気だったのか、真剣だったのかというような悔悟とも結びついて、それでヤラれちゃったんだと思う。
 もちろん「トップ2!」が「泣ける映画」とか言うつもりはない。表現としてはわかりにくいものだろうし、1の方がそこは圧倒的に伝わりやすくできている。でも、「2!」はちょっとぶっ飛んでいたりする点など、拒絶感もあるだけに、「毒」として良く効くものだったんだろうなあ。これ、しばらくやられてしまいそう。

 そんなこんなで「あなた」というキーワードとか再考すると、これってけっこうヤバイよね。だって、「お宅」って本来は「あなた」のよりpoliteな言い方でしょ。でも、その分だけ皮膜を張って他者を拒絶しつつ関係をもつという、そういう二人称を使うのが「オタク」。 それが「あなた」になることが物語の完結になるわけだし。ラルクが、宇宙一のオタクだったかもしれない「ノリコ」に似ていると言われたりしてることも関係があるわけだし。
 そういうわけで「あなたの物語」は、「あ、オレの物語だったのか……」という認識に時間をおいて染みわたり、そのじわじわさ加減に、急に涙が出てきたわけ。
 結局、この「オレの体験」の話も、すごくわかりにくいと思う。でも、それでいいんだと思う。その方が、ジワジワと効くかもしれないからね。いまは、速攻で答えを求めすぎの時代だと思う。でも、それは消費速度を増すことに加担することになるからさ。全部がこうである必要はないけど、じんわりと化合を楽しむこともまた、長い人生、たまには良いんじゃないのかなあ。
 そんな作品を贈ってくれた『トップ2!』スタッフには、すごく感謝してます。いまさらですが、この作品のことをすごく好きになってます。そういうわけで、この話はしばらく表には出さない。この話自体が、なにかひとつの「公式回答」のように思われたら、せっかくジワジワと染みてる途中の毒体験を阻害するかもしれないからね。
【初出:mixi日記を個人誌「ロトさんの本Vol.18」用にリライトしたもの。2006年12月31日発行】

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