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2006年12月30日 (土)

テレビ東京とアニメの関係

題名不詳

※1997年当時、「デラべっぴん」というアダルト向け雑誌用の原稿です。おそらく読んだことがある方はいないでしょう。「デラべっぴん……にしては詳しすぎる」というところを笑ってもらおうと半分ギャグ、半分マジ予想で書きました。2007年現在の実情とは異なる記述も含まれています。第一、いま「東京ローカル」「12チャン」と言ったら怒られると思いますが(略称は「テレ東」)、まずは昔話であるということで、ご容赦を。
そんなに綿密な調査をしたわけでもないですが、だいたいそれから10年の予測としては途中まで当たってて、「地上波デジタル」に向けて傾向が加速中というところを楽しんでいただければと。歴史的側面にしても、驚くべき超短納期で記憶中心に書いた趣旨の原稿……にしてはけっこう正確なので再読して笑いましたが、そういうとこもギャグです。事実関係にも間違いがある可能性が大ですし、引用や典拠にするには地雷があると覚悟してください。まあ、あまり語られて来なかっただろう歴史の流れがあるんだというご参考に。

<リード>
今やアニメと言ったらテレビ東京。だが、そこに
いたるには長い歴史の積み重ねがあった。20年あ
まりの時間を圧縮して解説しよう!

■東京ローカル局物語

 むかしむかし。20年ちょっとくらい昔。
 テレビ東京は「東京12チャンネル」という名前だった。だから「12チャン」というのは愛称みたいなものだ。
 アニメや特撮のメジャー作品は、主に10以下のチャンネル番号の民放で制作されていた。12チャンはどうだったかというと、海外のアニメのふきかえか、他局の古い作品「ハクション大魔王」なんかにに「新」マークをつけてリピート放映していた。
 「自分のとこで作ってないのに新番組かあ」。子供はそういうところを見逃さない。なんだか他と違って、お金のない、マイナーな雰囲気のところなんだなあ、と思っていた。クラスにもちょっとはみ出していたり、いじめられている子供がいた。12チャンという名前にも、どことなくそういう子供に共通した哀愁が漂っている。
 やがて「東京ローカル」と呼ばれていることを知って、インパクトを受けた。文化の発信地は全部東京だと思っていたからだ。「東京と言っても、いっぱいある都市のひとつで、ローカル局があるんだ」世の中が少しだけ変わって見えるようになった。

■12チャンならではの番組

 12チャン初期のアニメに「ドンチャック物語」という作品がある。75年の放映で、動物が主人公のアニメだ。78年には特撮ヒーロー「UFO大戦争 戦え!レッドタイガー」が放映されている。
 この2つの作品の共通点は何か?
 東京の水道橋には、後楽園という大きな遊園地がある。どちらも、この遊園地が生み出したキャラクターなのだ。「レッドタイガー」は今も生のヒーローがバトルをするアトラクションショーを常設化したことで人気の野外劇場から生まれたヒーロー。ドンチャックは今でも後楽園では現役のミッキーマウス的キャラクターである。
 子供にとって「テレビでやっている」かどうかは、大変な価値の差がある。テレビでやっていないといわゆる「パチモン」の扱いを受けたりする。後楽園の方から、そういった事情をバックにスポンサーから持ち込まれた企画なのではないだろうか。
 70年代後半の12チャンネル作品には、どうもそんな受け皿的作品が多い気がする。
 例えば79年「ピンクレディー物語 栄光の天使たち」というのは、当時人気絶好調だったピンクレディーの二人の伝記だが、当人たちが多忙のためアニメになったという作品だ。声は声優が担当しており、主題歌も作詞・作曲はピンクレディーのヒットを生んだコンビなのに歌は別人だったりしてパチモン臭さを漂わせていた。
 関係者の誰かがから思いついたように出た企画が平気で通り、あとの仕上がりはおかまいなし、という感じの作品が多いのは、12チャンの特徴で、80年に放映された「まんが水戸黄門」などは他局の水戸黄門を30分のアニメにしてしまう珍企画だった。

■保たれた命脈

 12チャンであれば企画から実現までのポテンシャルが低いということは、悪いことばかりではなかった。
 70年代の後半は、「仮面ライダー」「ウルトラシリーズ」が相次いで終了、あまりパッとしてなかった。そんな中12チャン独自ヒーローが誕生していった。
 中でも77年の「快傑ズバット」は傑作だ。予算が少ないため、ズバットの戦う相手は着ぐるみの怪人ではなく、ただの「ヤクザ」だ。スタッフはひとつ間違えれば陳腐になる設定を逆手に取った。「渡り鳥シリーズ」のような気障な主人公に「仮面ライダーV3」の宮内洋を配し、得意技比べなどの工夫を凝らして盛り上げた。数年前にLD化されたときには、かなりのセールスを記録したはずだ。
 78年「スパイダーマン」も重要な作品だ。それまで変形・合体する巨大ロボットはアニメにしか登場せす、変身ヒーローとは別ジャンルになっていたが、初めてこの作品でジョイントが行われた。これが翌年の「バトルフィーバーJ」では戦隊ヒーローと巨大ロボットという夢の共演に結びついて、20年もシリーズが継続。アメリカ版「パワーレンジャー」として大ヒットを飛ばすまでにいたる。 その原点が、12チャンネルにあるということは、忘れられてしまっているかもしれない。
 だが、12チャンネルだからこそ、「え? アメコミのスパイダーマンが、巨大ロボットに乗る? そんなの受けないよ、わはは」と言って企画を突っ返されるようなことが起きなかったのだろう。それがゆえに、他局とはいえ後の特撮ヒーローの命脈が保たれたばかりか、国際的な発展に結びついたかと思うと、少し感慨深いものがある。
 これもまた、アバウトで敷居の低い分だけ自由度が高く、結果として可能性をつぶすようなことのない、12チャンならではの社風のもたらしたものとは言えないだろうか。

■打ち切り事件の波紋

 80年代早々になると、12チャンネルのアニメも本数がかなり増大する。
 「機動戦士ガンダム」の次の富野監督作品「伝説巨神イデオン」も、テレビ版は80年に12チャンネルで放映された。時代はアニメブーム、富野監督は追い風に乗る形で、後に「リアルロボットもの」と呼ばれる路線を展開していた。人々は生な感情をむき出しにして罵り合い、殺しあい、その中でも愛を育み、場合によっては同衾さえも暗示された。
 こんなアダルトな作風に、まだウブだったアニメファンたちは呆然と画面を見ていたものだった。
 ところが、ラスト前5本目で唐突に「その瞬間であった、イデが発動したのは」というナレーションとともに番組が終わってしまった。いわゆる「打ち切り」である。
 このころ、すでにアニメファンはこういう状況を許さないくらいの数にはなっており、打ち切り分はすぐさま劇場映画として公開されることが決まったのである。これがアニメファンの団結力を高めた。「イデオン祭り」と称したキャンペーンが組まれ、いまはオタク評論家として有名な岡田斗司夫や、「パトレイバー」の原作者のゆうきまさみたちもハッピを着て踊っていたのである。
 今なら「続きはビデオを買ってください」であろうが、打ち切りさえもイベントにするパワーがアニメファンにあった。それをもたらしたのも12チャンだった。

■80年代、90年代の12チャンネル

 80年代中盤、テレビ局がこぞって大方針を変えるという大事件があった。
 それまで夕方の6時の枠は子供番組だった。新番組でなくても、再放送をよく行っていた。
 時代が流れ、子供がこの時間に必ずしもテレビを見なくなった。学習塾に通ったり、ファミコンを見たり。ビデオデッキの普及が拡大し、テレビ局の方も考えを改めなければならなくなった。つまりテレビの第一義の機能はリアルタイムな「報道」にある、としたのである。そこで夕方6時台はのきなみニュースで埋め尽くされてしまった。
 ところが、ここでも12チャンは迎合しなかった。予算がなかったのかもしれないが、ずっとアニメを放映し続けたのである。その中にも意外なヒットが生まれた。例えば「ベルサイユのばら」などは、12チャンの再放送で再評価され、中高生を中心に爆発的なヒットになったのである。「元祖天才バカボン」のリピートも12チャンの全番組でナンバーワンといわれるほどの視聴率を取り、赤塚不二夫の再ブームに結びついた。
 やがて90年代も半ばには、月曜日から金曜日まで全部新作アニメで埋まるようにすらなっていった。いつの間にかアニメと言ったら12チャンというほどにまでなっていた。その中の一本が95年の「新世紀エヴァンゲリオン」である。
 継続は力なり。敷居を低くして連綿とアニメを流し続けたことで、ついに経済効果を云々される作品まで12チャンから生まれたのである。もうはみ出した感じは12チャンにはない。

<コラム1>
 テレビ局はもともと新聞社の資本が入っている。その流れを見てテレビ局の特色を見ると面白い。
 日本テレビは読売新聞だ。読売ジャイアンツの放映権は日テレ優先。野球やスポーツに積極的だ。TBSは毎日新聞。三大紙の中ではいまいちマイナーだがドラマに強い。フジテレビは、産経新聞である。いち早くカラー化を打ち出した新聞社傘下らしく、バラエティが得意。かつては、アニメもフジテレビが中心だった。テレビ朝日は朝日新聞。朝日は一種の権威を持つゆえ、報道色が強い。
 ではテレビ東京は、どの新聞の系列だろうか?「社会人になったら日経を」とまで言われた「日経新聞」が正解である。
 日経が他の新聞社とは別の地位を占めているように、テレビ東京は「我が道を行く」が社風なのかも。なにせ、やんごとなき方が亡くなっても、アニメを流し続けたのはテレビ東京ぐらいだから。

<コラム2>

<リード>
テレビ局は時間を切り売りする商売。
アニメは深夜枠の開拓者だ!

 深夜枠は、もともとは絶対視聴者数が少ないため、商売にならないと思われてきた。やけにダイヤモンドのCMが多いのも、水商売の女性ぐらいしか見ていないという意味らしい。
 だが、それをアニメが切り開いた。「スーパーヅガン」「行け!稲中卓球部」といった有名な青年コミックを早くにぶつけたのはフジだったが、どうも印象が泥臭かった。「エルフを狩るモノたち」というアニメ絵のどことなくエッチな作品を放映したのは例によって12チャンだった。ご丁寧に「エルフ」のビデオ版は、女性の胸もとなどが写るように再撮影して商品価値を高めるという。
 12チャンの枠開拓が容赦ないと判ったのは「CLAMP学園探偵団」という作品が放映されたときだ。これは何と土曜日早朝7時台。徹夜で遊んだサラリーマンにはまだまだ深夜という意味だろうか。
 刺激されて他局の深夜アニメも出現しつつある。日テレの「剣風伝奇ベルセルク」、テレ朝の「深海伝説マーメイド」などがこの秋から放映中だ。

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<キャッチ>
97年は、果たしてアニメブームなのか?

<大見出し>
テレ東アニメの進路は?

<リード>
■テレ東アニメ「エヴァンゲリオン」に揺れた97年。
テレビアニメの本数も激増。その両者に潜む「狙い」に迫ってみよう!

■12チャンアニメ増加の理由

 97年12月現在、テレビで放映されているシリーズものアニメは43本、そのうちテレビ東京の放映は13本。実に三分の一である。
 現在の傾向は大きく二方向に分化している。ひとつは「爆走兄弟レッツ&ゴー」「ポケットモンスター」のように、子供たちの人気の中心となっているアニメ。もうひとつは、「少女革命ウテナ」「大運動会」のように、マルチメディア展開と密接に結びついたヤング・アダルト向けアニメ。これは深夜枠を活用して急増しつつある。
 「新世紀エヴァンゲリオン」の放映された95年より少し前から、アニメの状況に関しては変化が見られるようになってきた。
 アニメの制作にはお金がかかる。もともとテレビ局から支払われる制作費ではまかないきれない。従来は作品のキャラクターを使用した商品の売り上げで補填するという方法が取られていた。それが進み、主役のロボットの玩具を売るためのCMとして企画され、その分、作品のストーリー等にはオリジナルでも良しとする流れが発生した。「機動戦士ガンダム」を筆頭とするロボットアニメや「美少女戦士セーラームーン」もその系統だ。
 だが、エヴァは違った。
 初号機のプラモや綾波のフィギュアは何種類も出てよく売れているが、それは結果のことであって第一義の目的ではない。エヴァの目的は、「作品そのもの」の二次使用でペイすることを前提にしていたのだ。したがって、仕掛けたのは玩具メーカーではなく、各種メディアでのソフト配布のキーとなるレコード会社。また、権利関係もクリエイターを擁する制作会社で原作権を獲得したことにより、従来と違う資金の流れができたと想像がつく。
 エヴァが異例のヒットになって業界のポテンシャルが上がった。
 エヴァの経済効果は各誌で熱く報道されたように数百億にのぼる。「ウチもエヴァのように当てたい」と考えている会社は多いだろう。
 現在のアニメ、特にアニメオリジナル作品は、レコード会社、出版社、アニメショップ、テレビ局などなど多岐に渡る会社が資本を出し合い、トータルで商売にしようという流れが主流だ。よく「**制作委員会」といったクレジットを見かけるが、それがそういった各社の総称である場合が多い。「みんなで幸せになろうよ」というコラボレーションの時代を反映したものとも言える。
 企画が持ち込まれたときに、比較的に障壁の少ない局として、12チャンは認識されているのではないだろうか。自ら積極的にアニメを増やし流すほどの主体性を持ってアニメに接しているとは思えず、基本的に持ち込みを受けてるというスタンスに見うけられる。、そうならば増やそうとしているのは持ち込む側で、それはアニメ会社であったり、アニメ作家であったりする。それは吉なのか凶なのか?
 アニメには良いやつも悪いやつもいない。
 「受ける儲けるやつ」と、「受けない損するやつ」の二種類しかいない。
 「質は量によって支えられる」という言葉があるとおり、クオリティ確保、新しいタイプの作品のブレイクスルーは量産によってしか生まれないだろう。
 12チャンアニメは、量によってその底辺を支える役割を果たしているのだ。

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<キャッチ>
12チャンには、未来のアニメ像
が凝縮されている!

<タイトル>
どうなるこれからのアニメ?

■多チャンネル・マルチメディア時代へ

 12チャンアニメが急増している理由。それを追っていくと、これからのアニメの時代がどうなっていくのか判るかもしれない。
 ビデオアニメも、しばらく前から企画としては陰りが見えていた。単品の知名度は低く、どれもこれもギャルが大量に出るだけで似たりよったりでは、一定の数のファンには売れても頭打ちになる。
 だがうまくアレンジしてテレビと連動できるなら話は変わってくる。最初に実現したのはLDCの「天地無用!」だ。ビデオアニメのヒットを手がかりにテレビでも同じキャラクターを使い、設定・ストーリーは新規に展開。その次の「神秘の世界 エル・ハザード」は最初からビデオとテレビの両面で展開することを前提にしていた。
 いずれもテレビ放映はテレビ東京が受け持った。
 いま、空前の多チャンネル時代とも言われている。衛星放送・ケーブルテレビなどメディアは激増の方向だ。廉価版ビデオやDVDの台頭が、追い討ちをかける。だが、流す映像ソフトウェアの量にも質にも限界はある。だから今のうちにソフトを作り溜めしておいた方が、先行投資になる。当然の考え方だ。
 それには、ビデオアニメの6本シリーズよりは、テレビで半年分の26本のパッケージとして持っておいた方が有利である。ビデオとテレビ、両方あれば、なお良い。長く売り上げになる作品はどこだって欲しい。
 出版社も積極的にこういう動きに参入する。テレビ東京でのアニメ化に顕著なのが、たとえば角川書店・富士見書房(角川の子会社)の原作ものだ。雑誌や若年層向け文庫での小説・コミックのヒットとアニメ化を巧みに連動させている。
 声優ブームも、拍車をかける。アニメーションのフィルムとしての出来以前に、どの声優が出演しているかで視聴率や売り上げが決まるとまで言われる時代である。作品は多い方が受け皿も多いし、「声優オリジナルドラマCD」のような番外編パッケージでまた売り上げに貢献するからだ。
 ゲーム業界も黙ってはいない。マルチシナリオ、新キャラクターを配しての展開など、定番のものが増加している。
 これらの中心にあるのは、やはり毎週定期的に無料で視聴できるテレビアニメだ。それが「無料だからこんなもんだろう」という旧態依然のクオリティでは誰も見向きもしない。
 そんな理由で、「今までのテレビアニメよりはちょっとクオリティは良いけれど、ビデオアニメと比べてしまうとちょっと落ちる」という作品が増えているのだろう。それは、ビデオアニメが普及してきたころ、「劇場アニメよりはちょっと落ちる」というような作品が多かったのに似ている。
 時間帯も「夜討ち朝駆け」になっている。それだけひとびとの生活様式が多様になり、価値観も多元化しているということなのだ。アニメの放映される時間は今後はますます隙間を縫うようになっていくし、価値を選ぶためのチャンネルが増えるに従って有料チャンネルふくめて拡散していくだろう。
 この動きは青年層だけにとどまらない。コロコロコミックなどの年齢層でも類似の現象は起きている。ミニ四駆ブームから来た「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」やピカチュウ人気の「ポケットモンスター」などだ。
 多チャンネル・多メディア時代にアニメは様々な分野の要請を受け、再び中心的役割を果たそうとしているのだろうか。

■12チャンアニメの今後は

 このように作品の増加傾向はとどまるところを知らない。さらに来年以降は、富野由悠季や高橋良輔などかつてアニメブームの中心となった巨匠や、かつての若手が中堅に育って指揮をする作品が激増するという。その背景には、13本(12本)・26本という単位でのアニメ制作が、放映局未定でアニメ会社とレコード会社、出版社主導で進められているケースも少なくない。
 地上波は時間枠をいくら縫ったところで限界に近づいている。有料のWOWOWなどが生き残りをかけて人気アニメパッケージを獲得し、ユーザ数拡大の牽引役にする計画もあるらしい。熾烈なアニメ増加と顧客獲得戦が、これから幕を開けようとしているのだ。 この秋から冬に向けての12チャンアニメ増大は、単にその前触れだったのかもしれない。デジタル技術により、セル画工程を省略した作品も目立たない形で投入が始まっており、増加への抵抗を低くするだろう。
 アニメ作品は増える。
 だが、それは本当に「アニメブーム」の到来を意味するのだろうか。
 確かにこれまでは魅力ある作品数に限りがあり、ファンが作品を選んでいるというよりは、作品に選ばれているというような兆候すらあった。その選択肢が広がることは基本的には良いことだ。
 しかし、それぞれ個別の嗜好を持ち、個別のメディアの事情から個々のユーザ層へ特別にアレンジしたような作品が増えるなら、単に既存のパイの食い散らかしになり、求心力を失うのは目に見えている。
 いま必要なのは、新しいパイを焼き上げることと、それを食べたいと思っている新しいお客を呼び込むことだ。それには作り手・受け手ともどもそれぞれの立場で、何が受けて何が受けないのか考えつつ、せっかくめぐってきたチャンスを活用することではないだろうか。
 いまはエヴァに続く「次の時代」を模索する時期。本当の「アニメブーム」になるのは、これからではないか。次世代の作品。それはこの量産の流れを追うことで予見可能かもしれない。
 独特のスタンスで、新タイプのアニメを常に提供してきた12チャンの果たす役割は今後とも大きいだろう。

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《テレビ東京アニメ・特撮代表作年表》

■ダメおやじ(74)
 テレビ東京アニメの第1作目。古谷三敏の代表作のアニメ化。原作の最後の方のホノボノしたところに行く前に終わった。
■忍者キャプター(76)
 テレビ東京特撮の第1作目。7人の現代忍者が悪の忍者と戦う。もう一つの戦隊シリーズのような作品。
■グロイザーX(76)
 テレビ東京最初のロボットアニメ。ゴキブリのようなグロイザーXがファイトアップしてグロイザーロボに変形。ガイラー星人と戦う。
■快傑ズバット(77)
 エヴァの庵野監督もハマっていた人気特撮変身ヒーロー。「チッチッチッ、日本じゃ二番目だな」主役の宮内洋の決めゼリフに痺れる。カッコ良さ、ここに極まれり。LDもヒットした。
■スパイダーマン(78)
 米国マーベルコミックから版権を取得。巨大ロボ・マーベラーの乗ってマシーンベムと戦う。
■ずっこけナイト ドンデラマンチャ(80)
 ほとんどの回は凡庸だが6話「ドンはカウボーイ」が異常にハイテンション。アニメーター金田伊功がコンテ・作画のすべてを担当。暴走アニメの原点となった異色作だ。
■宇宙戦士バルディオス(80)
 ロボットアニメだが、地球が洪水に見舞われ、大津波が画面いっぱいになって「完」となる。壮絶な打ち切り最終回が話題になった。
■銀河旋風ブライガー(81)
 前口上とともに始まる金田伊功作画のオープニングが人気。ルパン調のキャラが評判で、同人誌が大ブレイクした。
■まんが水戸黄門(81)
 他局の人気番組をアニメ化するところが12チャンらしい。助さんのアイテム「力だすき」と地平線からせりあがる葵の御紋は衝撃的。
■ドン・ドラキュラ(82)
 広告代理店倒産により、第4話で終了という史上最短で終わった事実が作品内容より有名。これでも手塚治虫原作のアニメだ。
■魔法のプリンセス ミンキーモモ(82)
 今日に続く新世代の魔法少女アニメの元祖。ミンキーステッキで夢をかなえる職業婦人に変身。三匹のお供を連れた桃太郎が原案。打ち切り後にまた延長となったりもした。
■装甲騎兵ボトムズ(83年)
 題名が主役メカの名前ですらない、ハードボイルド調ロボットアニメ。無骨なメカ、スコープドッグを駆るキリコのクールさが人気。
■マシンロボ クロノスの大逆襲(86年)
 ロボットアニメ冬の時代に好き勝手な作品世界で暴れていた異色作。ヒロイン・レイナが大人気。
■ミスター味っ子(88年)
 「うまいぞーー!」味皇さまの口からまばゆい光が飛び出す。味への感動をあらゆるアニメ的表現を駆使し常識を超えまくった作品だ。
■絶対無敵ライジンオー(91年)
 校舎が変形して秘密基地に。子供の究極の夢をかなえ、生き生きとした18人の子供キャラの性格描写が輝く。高年齢層にも人気の高かったロボットアニメで、ビデオ続編も3本制作された。
■赤ずきんチャチャ(94年)
 音楽に満ちあふれた世界も楽しげな少女アニメ。SMAPを起用しミュージカルにもなった。
■天地無用!(95年)
 ビデオ先行し、テレビ化された初期の作品。年中お祭り騒ぎ、主人公の周囲ヒロイン回転寿司状態の「うる星やつら」的アニメ。
■新世紀エヴァンゲリオン(95年)
 包帯少女綾波レイがブレイク・・と思うまもなく作品そのものが大ヒット。テレビ東京の底力を思い知らされた。
■天空の城エスカフローネ(96年)
 ほとんどビデオアニメの作画の細やかさ、画面に融合したCGの使い方が話題のファンタジー作品。でも作品の本質は「少女らしさ」。
■機動戦艦ナデシコ(96年)
 アニメのパロディも、オタク世代のトラウマも、対人関係のスレ違いも、「すべていまある自分たちらしさ」であるという認識から始めた。メタアニメ論的なSFアニメ。
■エルフを狩るモノたち(96年)
 女性のエルフを脱がして脱がして脱がしまくるという深夜枠ニーズに忠実に応えたアニメ。
■少女革命ウテナ(97年)
 シュール描写とギャグの交錯する果てに突き抜けるものは何か? 今年一番の問題作。
【初出:デラべっぴん(英知出版)1997年12月発売】

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