« 合身戦隊メカンダーロボ | トップページ | 獣人雪男 »

2006年12月 1日 (金)

UFO戦士ダイアポロン

題名:UFO戦士ダイアポロン(未発表版)

<リード>
'76年4月6日~9月28日 全26話 TBS系放映エイケンが巨大ロボットブーム時に制作した唯一の巨大ロボットアニメ。孤児院あおぞら園で育ったタケシは、16歳の誕生日に自分がダザーン星に滅ぼされたアポロン星の王子で、体内に宇宙エネルギーを解放するキーエナルジーが埋め込まれていることを知らされる。タケシはキーエナルジーの力でダイアポロンに合身する能力をさずかり、あおぞら園の仲間とUFO少年団を結成。地球をねらうダザーン軍団と戦うのだ。原作は、雁屋哲。後に「男組」や「美咲しんぼ」でヒットを飛ばす作者が「少年キング」に連載したSFマンガ「銀河戦士アポロン」が元になっている。

ビデオ:東映ビデオより「エイケンTVアニメグラフィティ」の1本として発売されていたが、現在は廃盤

◆ロボットアニメの当たり年◆

 ダイアポロンの放映された76年に制作されたロボットアニメは全部で7本。ちょっとした当たり年だった。
 春からスタートした4本のうち「大空魔竜ガイキング」をのぞく「ゴワッパー5 ゴーダム」「超電磁ロボ コン・バトラーV」とこの「UFO戦士ダイアポロン」の3本は、主人公チームが例の「王道五人衆」だった。熱血漢と二枚目と巨漢とチビと紅一点というあのキャラクターシフトである。「コンV」以外はチピを天才メガネ君と子供に分けて二枚目をカットしたバリエーションだが、チビちゃんのキャスティングが3作ともそろって千々松幸子というあたりが「製作者のねらい」というやつを感じて、今からふりかえると何だか微笑ましい。
  「ダイアポロン」を制作したのはエイケン。エイケンと言えば、かつてテレビアニメの草成期(当時はTCJ)に鉄人28号やエイトマンなど珠玉のSFアニメを作っていた老舗だ。76年当時も20年たった今も変わらぬ稲作アニメの代表作、「サザエさん」のエイケン。それがなぜロボットアニメを……と誰もが思った。それほどロボットものは当たるとされた時期があったのだ。

◆ロボットか変身ヒーローか?◆

 主役ロボット・ダイアポロンは、巨大ロボットアニメ史初めて「巨大ロボット同士が合体する」という快挙を成し遂げた。同年の「マシーンブラスター」では、ロボット同士が合体できず組み体操をしていたから、偉いというほかない。質は量によって支えられる。同期の「コンV」ともども合体ロボ技術革新の時だったのだ。アニメの合体シーンでは、主人公のかけ声で「不要部分収納!」というのがあって「何じゃそりゃー」とツッコんだもんである。ダイアポロンの玩具CMを思い出すと、手足をもぎとって合体していたように思う。まだ完全合体とはいかなかったようだ。
 しかも……ダイアポロンは細かく追求すると、実は「巨大ロボット」ではないのだ。アポロンヘッダー、トラングー、レッガーの3大のロボットが合体完了すると、確かにダイアポロンの形になる。だが、「その後」が恐ろしい。スペースクリアー号で中に乗り込んでいた主人公タケシが、がらんどうになった内部で「ビュルルルルー!」(なぜかウルトラセブン変身の効果音)とダイアポロンと同じサイズに巨大化変身するのだ。リアルに作画された筋肉と神経が膨れ上がり、タケシが苦しむシーンが気色悪かった。収納されたはずの「不要部分」はどこに行ったのだろう。当たって痛くはないのだろうか。まさにミステリーだ。
 このようにダイアポロンの正体は、「巨大着ぐるみ変身ヒーロ一」なのであった。巨大ロボットアニメ数あれど、主人公が巨大ロボのコスプレをして戦うのは、この作品ぐらいである。
 スポンサーのブルマァクは、この新コンセプトの主役登場儀式を「合体+変身」すなわち「合身」という新ネーミングで意気揚々と世に問うた。「ガッシーン」というのが擬音ともマッチする。同年の「マグネロボ ガ・キーン」と類似の発想である。「およげ!たいやき君」が空前のヒットを飛ばす中、子門真人の歌う主題歌(山本正之作曲)も「ガッシーン」まみれである。ちなみに主題歌は未CD化でカラオケにもまったく入っていないのは嘆かわしい。「ゴーディアン」と合わせてVAPあたりで復刻CD化して欲しい。
 初期の戦闘シーンでは、タケシがロボットの名前を呼ぶとテレパシーが走り、3体のロボットが三日月珊瑚礁に潜んだアポロンベースから射出され、合身してから敵に立ち向かうまで例によって1分ちかくかかっていた。これがまた視聴者からのクレーム対象になった。「最初から合身して来れば良いのに」ということなのだ。という理由で、シリーズ後半ではUFO少年団のメンバーが分離したロボットに搭乗することになった。タケシも巨大化せずスぺースクリアー号でドッキングし、ロボットとしてコントロールするという路線変更になった。いかんせんそこまで見続けている視聴者は少なく、ずっと着ぐるみで通したと思っている人も少なくない。

◆ダイアポロンIIとは?◆   IIはローマ数字の2です

 ダイアポロンには「謎の続編」がある。「UFO戦士 ダイアポロンII」というタイトルで、テレビ局を移し東京12チャンネルで放映された。徳間書店の「TVアニメ25年史」でも子細不明となっている作品だ。どうやら制作プロにもちゃんとした資料が残っていないらしい。再放送に別タイトルをつけたという説になっている。この辺も「ダイアポロン」の怪作色を激しく増幅している。
 私は当時見ていたので、どういう作品かはおおむね覚えている。これはTBSで放映された正編のネガを複写し、ゲストの怪獣ロボを新作で差し替えた半新作なのだ!敵の幹部も新キャラ差し替えで当時の小学館学年誌にも特集されている。その他のフィルムとストーリーは流用という変わりダネ。第1回放映は正編の第6回相当で、エイケンに残っているストーリー資料にもまったく正編と同じ話が書いてあるため、研究者が混乱するのも無理はない。確かアクションシリーズという副題もついたはずだ。要するに「ウルトラファイト」のようなフィルム流用の変種アニメと考えれば良い。この当時はウルトラシリーズのように敵の怪獣と主役のバトルにこそ価値がある、と考えられていた歴史的証拠のようなものか。

◆ダイアポロンと芦田豊雄◆

 一事が万事こんなトンデモな調子なので、かつて月刊OUTで芦田豊雄をイヂメるのにダイアポロンが使われ、あげくの果て「ダイアポロン芦田」と名乗るまでになってしまったのはよく判る。
 しかし、しかしであ~る。この風潮には「待った」をかけたい。芦田キャラ、エフェクト作画こそは、この作品の宝物なのだから。
 ギャグにしてた人は、いったい芦田キャラの実物を見たことがあるのだろうか?作画を見たことがあるのだろうか?どうかすると芦田さんご本人も当時を忘れてギャグにしてたフシがあるが……。
 主人公の顔。どこかで見たことはないだろうか?
 そう。初代「宇宙戦艦ヤマ卜」の古代君。
 それも岡迫亘弘によるキャラ表のものではなく。第1話など主要な回で「オフィスアカデミー社内班」を統一した作画監督、それが芦田豊雄。ヤマトと言えば芦田キャラ。それが「通」である。
 人なつこい目。あたたかみのある太い眉。Gペンのように強弱のつけられたナイーブな線。どれもがアニメファンの琴線に触れる。ヤマトの魅力を支えていたのは芦田さんの作画したキャラだったのだ。ダイアポロンのキャラクター設定は、その直系なのだ。しかも、芦田オリジナルキャラの第1作目だ。
 年月は非情なもので、芦田本人にもこのキャラクターは描けなくなってしまった。もともと画風は内面からにじみ出るもので、経験した作品によって変化するのだが、芦田の場合は極端に変わる。「宇宙戦艦ヤマト3」を見れば判る。
「メーテルリンクの青い鳥」の後では、もはや同じ古代君は描けなくなってしまったのだ。その後、鳥山明作品を経て、ワタル調になった今では14万8千光年ほど遠くなってしまったことであろう。
 キャラだけではない。芦田エフェクトもポイントが高い。「ヤマト」でも遊星爆弾で岩がめくれるシーンや冥王星の海のエフェクトは芦田作画によるものだ。その実力は「ダイアポロン」でもいかんなく発揮され、太陽のコロナのゆらめき、3体ロボットを射出するときの波のうねりは実に見事だった。ダイアポロンビームは黒いイナヅマが走り、初めて撃った波動砲の香り。ロボット表面のマジンガーとはまた違った金属タッチ。上手い人は何を描かせても上手いのだ。テレパシーのスパークは、芦田が総監督をつとめた「北斗の拳」で場面転換にも流用されていたような……やはり芦田本人にもダイアポロンは密かに気にいてたのだろうか。
 ダイアポロンと聞いただけで、こんなことが走馬灯のように甦る。
 そういうわけで、ダイアポロンの芦田キャラとエフェクト作画は、私には永遠の郷愁なのです(今回、芦田キャラの実物をお見せできなかったのは残念…またの機会に)。
【初出:動画王(キネマ旬報社)第1号 1996年】
 ※この原稿は文字数を間違えて、規定量の1.5倍で書いたバージョンです。掲載されたものとは大きく異なります。

|

« 合身戦隊メカンダーロボ | トップページ | 獣人雪男 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/163124/12889319

この記事へのトラックバック一覧です: UFO戦士ダイアポロン:

« 合身戦隊メカンダーロボ | トップページ | 獣人雪男 »