合身戦隊メカンダーロボ
題名:合身戦隊メカンダーロボ(未発表版)
<リード>
'77年3月3日~12月29日 全35話 東京12チャンネル系放映
和光プロによる初めてのロボットアニメ。地球から1500光年のかなた、オリオン星雲に属するガニメデ星のヘドロン皇帝は精鋭コンギスター軍団オズメル大将軍に地球征服を指令した。またたく間に地球全土は制圧され、最後の希望は日本だけだ。ジミー、小次郎、竜介の3人は敷島博士の開発した戦闘機メカンダー1、2、3に搭乗。合体してメカンダーマックスとなり、さらにメカンダーロボに合身してコンギスター軍団と戦う。キャラクターデザインは「宇宙戦艦ヤマト」「アンデス少年ペペロの冒険」の岡迫亘弘、演出は林政行、安濃高志、長谷川康雄らが担当した。
◆異色の舞台設定◆
「メカンダーロボ」と言えば、まずは主題歌だ。「マジンガーZ」をヒットさせた渡辺宙明による繰り返しの多いテーマ曲、実はピアノでは黒鍵だけで弾けるという特殊な音階を使っているのだそうだ。途中で「マグネマン!」とイッパツ叫びを入れて、そこから「マグネロボ ガ・キーン」につなぐのは定番の宴会芸だが、正統派の音階の主題歌に飽きていたのだろうか。同時期の作品を見渡すと、「ダンガードA」ではスポ根、「ボルテスV」では大河ドラマ、「バラタック」ではギャグと正統派のロボットは影をひそめ、アニメのトレンドはスーパーカーものへとシフト。巨大ロボットものは黄昏ムードである。主題歌も異色になろうというものだ。
この作品も、野球場が変形して空母キングダイヤモンドになったり、メカンダーロボが胸から放射能の火炎を噴射するアブナイ武器(メカンダーフレイム)を使ったり、逆立ちしてミサイル撃ったり(大型ミサイル・ジョーズ)するヘンな戦闘シーンが有名である。ほとんど再放送もされずビデオ化もされず、なかば伝説化したマイナーアニメ軍団。だが、その1本として無視されてしまうには惜しい魅力にメカンダーロボは満ちているのだ。
……怪生物ヘドロン皇帝の指令で突如地球に襲来したコンギスター軍団は、ヘドロボットを搭載したコンギスター円盤の圧倒的戦力でまず南北アメリカ大陸を制圧。そこに拠点を築き、アフリカ全土を席捲するやヨーロッパを制圧すると最後の拠点ロンドンを攻撃した。
「日本からの連絡はまだないか…たのむぞミスターX」。
謎の言葉を残してロンドンは壊滅。
ついに地球全土の95%がコンギスター軍団の制圧下におかれ、急遽結成された地球防衛軍は総司令部を日本の浅間山麓地下数百メートルに移し、決戦に備えた。ついに日本にも襲来したコンギスター軍団の猛攻に、たちまち戦力の50%を喪失、東京は紅蓮の戦火につつまれた。
だが、総司令官・山本勝幸にはたったひとつ、かすかな希望が残されていた。
「ミスターXから連絡はないか…」
こんなシビアな異色のイントロから第一話はスタートする。
そう、これは地球全土を舞台にしたリアルな侵略戦争ものなのである。
宇宙からの侵略者だろうと、核兵器で対抗すれば良いではないか?
そうはいかない。コンギスター軍団は静止軌道にミサイル衛星を配備。あらゆる原子力装置に反応して衛星高度から強烈な破壊力を持つオメガミサイルが射出され、原子力空母、原子力発電所、原子力潜水艦まで破壊しつくしてしまったのだ。
ミスターXすなわち敷島博士が事態を打開すべく作った決戦兵器。それが、メカンダーロボというわけだ。何とも燃えるシチュエーションではないか。日本人の作るロボットアニメたるもの、こうでなくてはいけない。日本を舞台に戦闘が展開し、地球側が弱いという設定に納得の行く理由を加えた点で、本作品は高く評価できるのではないか。
◆タツノコカラーの拡散◆
絶望的な状況から一縷の希望を託して立ち上がる戦士たち。泣けるシチュエーションである。設定作りには、もとタツノコプロで活躍したライターと「宇宙戦艦ヤマト」の演出家がペンネームで参加しているという。なるほどと思えるハードなカラーである。
特に注目したいのが、タツノコ色だ。
この前年、タツノコを退社したスタッフが葦プロを設立。「マシーンブラスター」でタツノコっぽいメカと戦闘シーンを持つ作品を制作した。「メカンダーロボ」の制作は和光プロだが、主役メカデザインがメカマン(大河原邦男)ということに始まり、タツノコ作品経験者が多く集まり、やはりどことなくタツノコっぽい作風なのである。
ことに人類側を敗色濃い中から必死で反攻する弱い立場から描く、という点はタツノコプロの「新造人間キャシャーン」(73年)から引き継がれたものではないか。敵オズメル大将軍の配下にいる女司令官メデューサ将軍は醜い容貌だが、実は捕らえられて洗脳されたガニメデ星の女王なのだ。メデューサは、主人公ジミーの母親でもあり、たまに正気に戻って味方を助けることがある、という設定などはもろにスワニーだったりする。
タツノコで「キャシャーン」を含めた数多くのSFアクションの演出を手がけた富野由悠季(喜幸)も、この作品に各話演出で参加。補給部隊のエピソードなど戦争映画のムードを漂わせた大人の香りで演出をしていた。マイナー作品ゆえ作画の仕上がりが決して良いとは言えない作品だったが、その分、内容的には従来のメジャー作品ではできなかったような挑戦ができたのではないだろうか。
富野が総監督をつとめた同年の「無敵超人ザンボット3」や後の「機動戦士ガンダム」で、マイナーな作品づくりの中から設定をリアルにし、戦記っぽく描こうとしたルーツは、意外に「メカンダーロボ」なのかもしれない。
蛇足だが、第2話の予告では敵メカ・シンキラーが正面から写るとまたその背後から2体目のシンキラーが出現するというジェットストリームアタックなシーンがあった。ひょっとして富野演出なのだろうか・・。
◆メカンダーの戦闘シーン◆
地球側が圧倒的な劣勢に立っている理由、オメガミサイルは、ヒーローロボット・メカンダーロボに最大の弱点も与えている。三機の戦闘機メカンダーマックス(後半では自動車トライカー)が合体したあと、メカンダーロボの背中に「合身」すると、メカンダーロボの小型原子炉が作動する。静止衛星は、それをキャッチし、ただちにオメガミサイルが発射される(なぜかキングギドラの声が鳴る)。命中するまでは3分から4分。その間に敵を仕留めなければならない。「ウルトラマン」以来の伝統である「ヒーローの時間制限」は、タツノコプロでは「ポリマー」「テッカマン」などの作品で行っていたが、メカンダーでは世界設定と密接に結び付けられていたのだ。
メカンダーロボの腕がグルッと回転してミサイルを連射したり、両手の円盤についたトゲを内側に持ってきて両側からはさみ込んで敵を圧殺したりする戦闘シーンは迫力がある。だが、武器は総じてスマートではない。発射された3つのパーツが野牛型になる空中合体魚雷ブルサンダーなんて今週のビックリドッキリメカみたいだ。耳をはずして電撃ヌンチャクにしたり(ライチャック)、腕の円盤をフリスビーにしたり(メカンダーUFO)するのもちょっと趣味が悪い。この時代のロボットの武器はおおむねこんなものではあるのだが。
敵の怪獣メカ(これまたゴジラの声で鳴いたりする)は、第1話から同形のものが3体出てくる。それまでは「怪獣映画」のカタルシスを継承して、敵怪獣メカも伝統的に一体だったが、そもそも敵メカは兵器なのだから、同じ形のものが複数あっても良いわけだ。再生怪獣ではなく、同形メカを量産して出したのは、この作品が初ではないだろうか。
タイトルにもなっている「合身」はメインスポンサーのブルマァクが「ダイアポロン」のときに作った造語で、「合体」と「変身」を合わせたものだ。だが、この番組の放映中にブルマァクは倒産。最後の方は、同じフィルムを使いまわして「回想編」「総集編」「単なる使いまわし」の区別がつかなくなっていた。
オープニングにも出ているキジュウダーとの戦闘シーンは何度見たか判らない。
でも、これも量産メカだという解釈で行っていたわけである。「機動戦士ガンダム」で評価されたものの一つに、ザクのように「怪獣」とされていた敵メカを工場で量産された兵器として扱うという考え方があったが、その先駆けとも言えるのではないだろうか。
いまの目で見れば、まずその稚拙な作画に笑ってしまうであろうこと必定ではあるのだが、しかし、こんな作品もあってこそアニメは進化して行ったという点で記憶にとどめたい1本である。
【初出:動画王(キネマ旬報社)第1号 1996年】
※この原稿は文字数を間違えて、規定量の1.5倍で書いたバージョンです。掲載されたものとは大きく異なります。また、この後にLD-BOX化されています。《2007年11月付記》ついにDVD-BOX化もされました!
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