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2006年11月28日 (火)

マジンガー the MOVIE

題名:銀幕狭しと暴れるスーパーロボット軍団!

 マジンガーZとゲッターロボ……永井豪と石川賢の生んだ2大ロボットから、巨大ロボットアニメのブームが起きた。そして今日にいたってもキャラクターは「スーパーロボット」という愛称で、ゲームに景品にと再生産され続けている。
 1本目に上映予定されている『真(チェンジ!)ゲッターロボ』も、そんなリメイク作品の一本だ。24年前のアニメ版作品はすこし忘れよう。そのころ、まだスプラッタ・ホラーなどはそれほど流行していなかった。しかし、石川賢のコミック版は血しぶきとバイオレンスに彩られた恐るべき作品だった。そのテイストを軸にして、コミック版のストーリーとも違うまったく新しいゲッターの世界を作ろうとした意欲作だ。ビデオアニメにして1500円という信じられないプライスも話題騒然。現在進行形の新作である。
 2本目以降は、巨大ロボットブームまっさかりに、「東映まんがまつり」で公開されたマジンガーシリーズの劇場アニメ・バージョンである。
 これが連発でイッキ上映されるのは、かなり珍しい試みではないか。ゴジラを擁した東宝の「チャンピオンまつり」と双璧の「東映まんがまつり」。このイベント、学校休みのシーズンにしか見られない、まさに「お祭り」の気分にあふれていた。休み明けはどちらへ行ったか、それで新学期の流れが決まってしまう。東映は一貫して子供向けの作品を映画にテレビにと流してきた歴史がある。その点でも、子供の心をつかむのにノウハウがあったのだ。
 「映画館までわざわざ見に来るのだから、映画でしか見られないものを」
 この一見して当たり前の精神が、劇場マジンガーシリーズには満ちている。
ビデオではダメだ。みんなと興奮が共有できる劇場の銀幕でなくては。
 劇場マジンガー1本目は『マジンガーZ対デビルマン』(73年7月)。当時、人気のうちに放映終了していたデビルマンと当時人気最高潮、現役のマジンガーZが共演する。これでワクワクしない子供はいない。しかも、「空からの攻撃に弱い」Zのサポートメカ、ジェットスクランダーはテレビより早いお披露目だ。デーモン族が復活し、ドクター・ヘルと手を組んだ。その脅威の前に、不動明は、兜甲児はどうするのか。
 2本目『マジンガーZ対暗黒大将軍』(74年7月)も仕掛けが凄い。無敵を誇った超合金Zの全身をボロボロにしながら戦うZと兜甲児の勇姿に涙いっぱいの傑作だ。獣魔将軍のひきいる暗黒ミケーネ帝国7つの戦闘獣軍団。その強さに耐えながら戦うマジンガーZは震えるほどにカッコ良い。そのピンチに現れるのは、すでに放映決定していた続編のグレートマジンガーだ。一足さきに銀幕に登場させてしまったというわけだ。この作品はもうひとつの『マジンガーZ』最終回でもある。
 東映まんがまつりバージョンは、どの作品もテレビとは微妙に異なる設定のパラレルワールドだ。独自の世界を持っている。
 『グレートマジンガー対ゲッターロボ』(75年3月)と『グレートマジンガー対ゲッターロボG・空中大激突』(75年7月)は、謎の宇宙円盤からの侵略に二大ロボットチームが、ちょっぴり反目しながらも協力して戦う2本連続のストーリー。前者の敵が宇宙怪獣ギルギルガンで、後者の敵が結合獣ボング・光波獣ピグドロン。ムサシが死に、早乙女研究所が崩壊して新設されるエピソードも後者では劇場用にわざわざリメイクされている。作画監督に小松原一男を迎え、「空中大激突」では金田伊功と並ぶエフェクトの名手、友永和秀が原画を描いているのもみどころだ。
 「空中大激突」と公開当時は同時上映だったのが、『宇宙円盤大戦争』。泣かせるメロアニメでは日本一の演出家、芹川有吾があますところなくその天分を発揮した作品で、異様に気合の入った濃密な悲恋ドラマが見られる。主人公デューク・フリード(声はささきいさお)の設定など後の『UFOロボ グレンダイザー』のパイロット版的な位置づけの作品だ。主題歌も、カラオケ同一でエンディングや挿入歌に流用されている。主役ロボットは、UFOスペイザーと合体できるロボイザーだ。
 『UFOロボ グレンダイザー対グレートマジンガー』(76年3月)は、ミケーネとの戦いが終わってロボット博物館に展示されていたグレートマジンガーを、ベガ星親衛隊長バレンドスが強奪。グレンダイザーと戦うというストーリー。「ロボット博物館」という設定が誕生したのはこの作品である。この映画では、原画マンの友永和秀によるバレンドスのワイルドな表情、捕らえられた兜甲児が光線をよけて踊るコミカルなアクションが実は楽しい。
 シリーズ最後となったのは、『グレンダイザー ゲッターロボG グレートマジンガー、決戦!大海獣』(76年7月)。ついに三大ロボットが競演。兜甲児はマジンガーZでなくてダブルスペイザーなのは残念。しかし、ボスボロットやビューナスA、ダイアナンAも客演で、非常に豪華である。
 専用主題歌「いざ行け!ロボット軍団」が熱血していて燃える。この歌詞で初めて「スーパーロボット軍団」という言葉が登場し、いまにいたるのではないか。歌詞に全ロボットが日本製であるかのようなバグがあるのはご愛嬌(笑)。
副主題歌ともども菊池俊輔によるロボットアニソンひとつの頂点である。カラオケにぜひ入れて欲しい。
 劇場マジンガーは、すべてシネマスコープサイズだ。今のどことなくケチくさいビスタサイズや、映画サイズをまったく無視した比率のワイドテレビとは比較にならないほど視界が広い。そのサイズのすみずみまで活かしたワイド感あふれる画面構成にこそ注目だ。
 特に壮絶なのは、『Z対デビルマン』冒頭の機械獣との戦闘シーン。『暗黒大将軍』のクライマックス、Zとグレートのコンビネーションバトル。戦いで折れた斧が画面手前につきささる迫力を見よ。雷鳴が大地を切り裂く光景に驚け。いまのロボットアニメが忘れかけているパワフルさがここにはしっかりと記録されている。オリジンならではの魅力である。
 もう一度「お祭り」を楽しみたい世代も、ゲームやガシャポンでしかスーパーロボットを知らない世代も、いっしょになって銀幕に声援を送って欲しい。
それが銀幕に帰ってきたヒーローたちへの何よりのエールになるだろう。
【初出:不詳/1998年ファンタスティック映画祭のオールナイト用原稿だと思います】

※以下のバラとBOXは共通の映画が含まれています。BOXの方が特典ディスクが多いはず。『真ゲッターロボ』は近々再リリースされるようです。

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受信: 2006年11月28日 (火) 23時51分

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