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猫の首に鈴をつける

2009年9月12日0時0分

 9月24日の米国ピッツバーグでのG20首脳会合に続き、10月6日からはトルコのイスタンブールで今年のIMF・世界銀行総会が開かれる。総会では世界金融危機対策の総括と強化策はもちろん、ドルの信認問題も重要課題だ。だが、残念ながらドルを基軸通貨とする世界経済が抱える矛盾とジレンマから抜け出せるような議論はできそうもない。

 世界一のドル保有国で発言力を高めている中国は、IMFのSDR(特別引き出し権)の活用を総会でも強調すると見られる。しかし、SDR活用案もそうだが、ドルからユーロへと外貨準備のリスク分散を図るなど、ドル離れの姿勢を強めると、ドル不安を招き、中国が世界的通貨危機の火付け役になるばかりか、ドル安でドル資産が目減りしてしまう。このジレンマはドル一極体制が国際通貨不安の元凶と主張しているロシアにも当てはまる。昨年来の金融危機下でもドル資産による外貨準備を増やしてきた新興国群も同じだ。一方、米国は強いドルが国益という立場で、ドル高が続くと、ドル信認回復に緊要な貿易収支の改善にもっとも望ましい中国人民元の切り上げが遠のく。

 こうした自家撞着(じかどうちゃく)は結局、世界のどこを見渡してもドルに代わる基軸通貨が見当たらないからだ。そこで通貨改革論議は誰が「猫(ドル)の首に鈴をつける」かという寓話(ぐうわ)に似た政治力学になる。もちろん、米国がこうした現実に安座することは許されず、各国は米国の金融節度を絶えず求めなければならないが、総会では、誰がどのようなニュアンスでドル批判を展開するか。民主党新政権が発足した日本の発言、日本の対ドル・スタンスはここでも注目の的になろう。(昴)

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 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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