【第5回】 2009年08月13日
大手メディアが決して報じない、
「メディア改革」という重要政策の中身
メディアの構造問題と「やれるものならやってみろ」
記者クラブの開放を党代表が明言する一方、『民主党政策集INDEX2009』には、冒頭で挙げたように、クロスメディア(新聞社とテレビ局の系列化)の見直しや、日本版FCC(行政から独立した通信・放送委員会)の設立と総務省からの放送免許付与権限の剥奪、NHKの放送波の削減といった、メディアの世界における言わば「聖域」に踏み込んだ政策提言が続々と登場する。これらはいずれも自民党政権下では、ほとんど手つかずだった問題だ。
筆者は日本のメディア業界がこうした構造的な問題を抱え、そのために国際競争力をつけることに失敗しているばかりか、ジャーナリズムの公共的な機能さえも果たせなくなっていることを、機会あるごとに指摘してきた(詳細については拙著『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』の第18章を参照されたい)。
特に「記者クラブ」、「クロスオーナーシップ」(新聞とテレビの業際保有の英語表現。民主党は「クロスメディア」と表現しているが意味は同じ)、「再販売価格維持制度」(メーカーの定めた定価での販売を小売業者に義務付ける制度。日本では独占禁止法で原則禁止されているが、例外として新聞や書籍などに認められている)のメディア特権3点セットが、産業としての、そしてジャーナリズム機関としてのメディア業界をダメにしているとして、メディアの構造改革の必要性を訴えてきた。
最近筆者はこれに、政府が放送免許を直接付与する制度を改めるための「日本版FCC=独立行政委員会」問題を加え、メディア構造問題4点セットとして、問題提起を行っている。
政府が放送免許を直接付与している現在の制度は、どう考えてもおかしい。報道機関を兼ねる放送局にとって、政府は監視対象のはずだ。その政府から免許を頂いていては、ジャーナリズムの機能など最初から果たせるはずがない。
しかも、日本では先進国の多くが規制をしているクロスオーナシップを認め、放送局利権を新聞社に与えてしまっている。そのため、本来であれば免許も不要で権力から自由であるはずの新聞社までが、政府に取り込まれる余地を自ら作ってしまっている。
Special Topics
バックナンバー
- 特別編
- 鳩山外交論文の謎:危惧される情報管理の甘さ (2009年09月05日)
- 特別編
- 圧勝した民主党政権の最大の使命は「ガバナンスの回復」 (2009年08月31日)
- 第6回(最終回)
- 霞が関の権益を引き剥がせるか? 政権の試金石「学校理事会」という爆弾 (2009年08月17日)
- 第5回
- 大手メディアが決して報じない、 「メディア改革」という重要政策の中身 (2009年08月13日)
- 第4回
- 「理念」を掲げれば票が減る? 人気優先マニフェスト選挙のジレンマ (2009年08月06日)
- 第3回
- 国民総背番号制で税金・社会保険料を徴収。実は強面な「3つのフェアネス」政策 (2009年07月30日)
Pick Up
新着トピックス
- 野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む
- 進化するウェブでの経済データ提供: 固定表形式からカスタマイズ方式へ
- 思い通りに相手を操る 交渉力養成ドリル
- 出だしで躓かない交渉の順序
- 「婚迷時代」の男たち
- プロポーズ大作戦で生き抜け! 新政権「限界」後には冬が来る
- 本荘修二の実践講座! 社員を動かすウェブ
- 日本が誇る社内SNSの成功例! NTTデータ「Nexti」の秘密
- トップコンサルタントが教える 強い企業の作り方
- 非常時を乗り切る『動かす力』 ~人を動かす力編~
- 追跡!AtoZ ~いま一番知りたいテーマを追う!超リアルドキュメント
- 新政権発足前に、激しいバトル開始! “脱官僚”なるか? 民主党vs霞ヶ関の攻防
- アマデウスたち
- 樫本大進 「神童」が手に入れた強かな情感
- デジトレwatch
- みんなの知恵を活かす「クラウドソーシング」で言葉の壁を破ろう!
- シネマClose-Up
- 『TAJOMARU』 柴本幸インタビュー
- 1000円台で楽しむ おとなの居酒屋
- 新鮮なもつの刺身を堪能、ホーデンも鮮度抜群! こん平(西大島)
ダイヤモンドオンラインplus 知っておきたい価値ある情報
最新の連載一覧
経済・時事
経営・戦略
スキル・キャリア
Diamond Premium 最新記事 無料会員登録すると全文が読めます
- 週刊ダイヤモンド 企業特集
- スカパーJSAT(下) 秋山政徳社長インタビュー 「戦略を決めてベクトルを合わせ、再び組織の“規範”を取り戻す」
- 金融市場異論百出
- 米国と違い産業界に大影響 英国の二大政党制の「コスト」
- 不況前の常識では勝ち残れない! 業界別「経営戦略実践講座」
- 偶発戦略により将来を“面”で捉える! HDD業界に見る「柔軟経営」の極意
- 週刊ダイヤモンド 企業特集
- スカパーJSAT(上) 伸び悩む多チャンネルの元祖が 「通信と放送の融合」で捲土重来
- ビジネスパーソンならこのカード
- 進化するクレジットカード機能。ビジネスパーソンにおすすめのカードを達人が厳選!
- キャメロン・ディアス最新作の試写会に50名様ご招待
- 映画「私の中のあなた」試写会に抽選で25組50名をご招待します。9/29(火)19時開映、東京・中野サンプラザにて。
Business information
著者プロフィール
- 神保哲生
(ジャーナリスト)
1961年生まれ。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。AP通信などを経て1994年独立。以来、ビデオジャーナリストとして活躍。2000年1月、日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立し代表に就任、現在に至る。
この連載について
いよいよ迫る解散総選挙!政権交代の可能性が高まるなか、いま一番知っておくべきなのに、意外と誰も知らない民主党の理念や政策を徹底解説!
「政権交代」が取り沙汰される次期総選挙!実際にそれが起きたとき、私たちの生活はどう変わるのか?民主党が主張する政策を約100の項目に分けてわかりやすく解説。個別政策を徹底解説した完全ガイド。日本人の必携ツール! 1500円(税込)
- DOLブックストアで購入
購入金額に関わらず送料無料! - Amazonで購入
アクセスランキング
- 1位
- 週刊・上杉隆
- 真のリーダーとしての総裁選びを放棄した自民党の再生は遠い
- 2位
- 柏木理佳 ビジネスで勝つ!中国人との付き合い方
- 中国で人材を採用する際、履歴書には要注意
- 3位
- エコカー大戦争!
- トヨタ・GM合弁工場NUMMIを買収? 米新興自動車メーカー「フィスカー」の謎
- 5位
- 不況前の常識では勝ち残れない! 業界別「経営戦略実践講座」
- 偶発戦略により将来を“面”で捉える! HDD業界に見る「柔軟経営」の極意
Recommend 話題の記事
- 週刊・上杉隆
- 真のリーダーとしての総裁選びを放棄した自民党の再生は遠い
- DOL特別レポートSP
- やんちゃな男の買い物はいくらまで? ――「妻の許し」に攻略法はあるか
- 不況前の常識では勝ち残れない! 業界別「経営戦略実践講座」
- 偶発戦略により将来を“面”で捉える! HDD業界に見る「柔軟経営」の極意
- 柏木理佳 ビジネスで勝つ!中国人との付き合い方
- 中国で人材を採用する際、履歴書には要注意
- 若手社員を辞めさせず成長させる 「適度なかまい方」マニュアル
- 他者と関われない「便所飯」学生が急増中
- 山崎元のマルチスコープ
- 金融マンのボーナスをどうしたらいいのか?
- インターネットは本を殺すのか
- ネットの利便性と戦う「本」という存在
- ビジネスモデルの破壊者たち
- スターバックスの生みの親 ピーツに学ぶ拡大戦略の“質”
- News&Analysis
- 日本の政権交代は語っても、自国政治は語らない中国ネット世代たち
- 社員とモメない就業規則のつくり方
- 「雇用」を円滑に管理しムダなコストの削減にもつながるルールづくりの秘訣とは。
- 景気は底打ち、しかし実感は…。
- コスト削減と収益確保、人材の育成や環境整備と、たえず忙しい中小企業に成長のヒントを提供中。
雑誌定期購読のご案内
特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。
1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。
「ザイ」は年間12冊を予約購読すると、市販価格 7,200円→6,600円(税・送料込み)で、1冊分お得。
※別冊・臨時増刊号は含みません。
偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。
お知らせ・ご案内
- 会員専用ページ開始のお知らせ
- 7月より一部の記事で、無料会員登録した方だけが全文を読める形に変わりました。詳細はこちらをご覧ください。