【第5回】 2009年08月13日
大手メディアが決して報じない、
「メディア改革」という重要政策の中身
しかし、記者会見の開放には、大手マスメディアから既得権益を剥奪する以上の重要な意味がある。それは記者会見というものが、ジャーナリズムが基本的な機能を果たす上で、必須の要素だからだ。会見がオープンになれば、記者は政治家に何を聞いてもよくなる。厳しい質問をして政治家や党職員から嫌われても、オープンである以上、記者会見から排除される心配をしなくていいからだ。そのため記者会見が真剣勝負の場となる。
夜討ち朝駆け等々、日本のメディア固有の密室談合に参加して、記事にできないインサイド情報をもらい、酒の席でそれを披瀝して悦に入るか、何でも聞けるし何でも書けるが、談合の輪には入れてもらえない記者となる道を選ぶかは、それぞれの記者の判断になる。要するに、オープンにすることでやっと記者会見が国際標準になるのだ。
ところで、やや話が横道に逸れることをお許しいただければ、記者会見の開放をより実効性のあるものにするために、民主党にはもう1つやるべきことがある。それが、番記者懇談など会見以外の形で政治家と記者が日常的に接触する制度を廃止することだ。
残念ながら、民主党はまだ党の主要幹部と記者クラブ加盟社の記者との間の番記者懇談を毎日のように実施している。せっかく記者会見をオープンにしても、そのような制度があれば、会見で厳しい質問をする記者や、党やその政治家に不都合な記事を書く記者に対しては、そうした一見非公式の形をとった(実は公式な)場から外すなど、懲罰的な処遇が可能となってしまう。
本来、大臣や副大臣など行政の長となった政治家は公務員法に縛られるはずなので、そうした地位にある政治家が、行政の長として知り得た情報を特定の報道関係者を選別して提供する行為は、公務員法の守秘義務や中立性原則に反するものだ。
日本の大手新聞社やテレビ局の記者が、夜討ち朝駆けこそがジャーナリズムの神髄であるかのようなことを得意顔で話すのをよく見かけるが、そもそも政治家や公務員が特定のメディアのみに公務員として知り得た情報を提供する行為は、他の国と同様、日本でも違法行為なのだ。
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著者プロフィール
- 神保哲生
(ジャーナリスト)
1961年生まれ。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。AP通信などを経て1994年独立。以来、ビデオジャーナリストとして活躍。2000年1月、日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立し代表に就任、現在に至る。
この連載について
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