絵と漫画と仕事とかの雑記

ほとんどの場合、ブログを書いた日付ではなくて記事の出来事の日付です。実際は記事を公開しても問題ない時期になってからの後日記です。
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Written By 中村珍
好きな本は電話帳
http://ching.tv
ちn

 
大事なことの決まり方、タイトルの謎
関連記事:「羣青」連載終了に関する記事の一覧


『羣青』読者であれば、
恐らく誰しも一度は思うこと。

「タイトルの"羣青"って何?」

今まで読者諸氏から頂戴したお便りにも
幾度もこのことが書かれておりましたが、
私は理由を説明しにくかったので
ずっと黙っておりました。

なぜ『羣青』であって『群青』ではないのか。
そもそも何故、「グンジョウ」なのか。
羣青のグンジョウは群青色のグンジョウなのか。
物語のどこにこの「羣青」が関係してくるのか。

皆様の疑問をスッキリ解決致しましょう。


その前にヒントです!大ヒントです。
わかるかしら。




羣青は、以前描いた読切ネームが元になっています。
元、と言っても現在は殆ど読切当時の面影がありませんが
読切の冒頭部分とラストシーンがハンバーガーのパンだとして
そこに新たに、連載用の肉や野菜やチーズを用意して
どんどん挟んで作られているのが、現在の連載版『羣青』です。

この『羣青』、
実は一話目を描いていた頃は『LastSmile』という名が
ついていました。これは読切時代の羣青の名前です。
読切版LastSmileを、連載用のネームに直すことが決まった時、
連載になるならタイトルはどうすべきか、と尋ねました。
「Last Smileはいいタイトルなので、そのままで」との事でした。

そのタイミングで担当編集者から提案されたのが、
「せっかくこのタイトルなので、主人公の2人と
出会ったサブキャラは別れ際、たとえどんな別れ際でも
最後(Last)に笑って(Smile)別れるようにしましょう。」…でした。
LastSmileなのでラストはスマイル…という決まりです。

これを守って描いたのが、ゲストキャラクターのギャルが
別れ際に泣き笑いしている、あの第一話の原稿です。
ネームの段階で複雑な表情を描いたら、
「タイトルが『Last Smile』である以上、笑顔のほうがいい」
「笑顔じゃないと読者の後味が悪くなる」という指摘が入ったので、
何故この子はここでこんな表情をするんだろう、
こんな顔でこの別れ際に臨む筈がないのに…と悩みつつも
ネームを通したい一心で泣き笑った顔を描きました。


一話目の原稿も完成の頃、担当編集者から
一本の電話が入りました。
編集長からタイトル変更の要請があったというのです。
「読切ならこれでいいけど、連載のタイトルとしては弱い」
との事でした。

ということは"LastSmileのラストはスマイル"の法則が
無効になったということです。ということはゲストキャラが
泣き笑っていなくても良いことになったわけです。
しかし当時はカナリ鯖読んだ日付を「掲載のデッド(〆切)だ」と
聞かされていたので、原稿は掲載前でしたがデッド直前だった為、
私はラストシーンの描き直しを諦めました。

『Last Smile』は人気を取る類の話ではないから3話で最終回、
うまく続いて5話、と聞いていたので、全3話のうち1話を
既に"Last Smile"で描いてしまった以上、間に挟まる第2話も
ゲストが最後に笑顔を見せるように話を纏めたほうが良いだろうし、
最終回である3話目にも主要人物が微笑むシーンがありました。
これはもう、描くなら"Last Smile"で全3話描き切ってしまいたい。
(ちなみにこれはネタバレにも何にもなりません、終盤のシーンで
主要人物がニコッと笑う瞬間があるというだけで、この、
笑うという行為に重きを置いていない以上は、笑うコマが
あるんだなということがバレても問題はありません。
"主人公は最後に険しい顔をします。"が、ネタバレじゃないのと
一緒です。全3話の連載や1話完結の読切では、容量が無い分、
一つ一つの動作が背負うウェイトが自然と大きくなりますが、
連載版は様々な感情の描写が可能です。最終回に限らず
必要があれば主要人物が笑うので、『LastSmile』のタイトルが
読者諸氏に知れ渡ったところで、困るようなことはありません。)

とにかく改題をしたくない私、編集部に抗ってはみるのですが…。

タイトル変更は避けられませんでした。

私だけでは決められないので、
担当編集から新タイトルの提案を受けます。
以下が、当時提案された全てのタイトルです。

◇セレナード セレナータ セレナーデ(夜想曲)
◇ノクターン 〜小夜曲〜
◇群青 〜ultramarine blue〜
◇ブルー・ブラック
◇バビロンまで何マイル?


私にとってこの5つのタイトルは
それぞれの持つ魅力が完全に横並びであったため
一人ではなかなか選べませんでした。
仕事に来ていたアシスタントさんにも相談しましたが、
やはり魅力が横並びであったのか、選びませんでした。

自分の絵にこれらのタイトルが載ったところを

リアルに想像しながら考えますが、難しい問題です。

私の手には負えないであろう高貴な響きの夜想曲と小夜曲。
「主に夜に行動しているから、夜らしく」という命名理由も、
生かし切れる自信がなかったので、お断りしました。


マザーグースのうたで、この漫画のイメージと合っている
という理由でご提案頂いた『バビロンまで何マイル?』も
既に同名の少女漫画がありますし東京都港区白金台から
バビロンまで逃走した場合に何マイル走ることになるのかは
興味深かったのですが、連載開始当初から、逃避行は
東日本に留めると決めていたので、お断りしました。


「自ら何か提案しなければ…」と思い代替案を用意するものの
その場で即却下されてしまい議論には一切発展せず…。




担当編集者のイチオシは『群青 〜ultramarine blue〜』でした。
青(ブルー)な人の群れ、群青。群青に含まれているグンとジョウ、
二つの有効成分によりインパクト。
担当編集者曰く「珍しいタイトル」でもある群青。
アマゾンでのヒット件数が夥しい群青…。その旨を伝えるも
「でも珍しいと思います」と一刀両断、人を強気にさせる群青。
グンとジョウ、二つの有効成分の為せる技でしょうか…。

私の出した案を検討するかどうかを検討できるのは
担当編集者のみです。担当編集者が私の案を検討しなければ、
もう私にタイトルを決める権限は残っていません。
タイトルは『群青〜ultramarine blue〜』に決まりかけました。
せめてその、ultramarine blueを外してもらえないかと懇願するも
読者が群青と聞いただけでは何なのかピンと来ないかもしれない、
だけでは何色か分かってもらえない場合があるからという
親切心と、「ブルーな人の群れという意味もあるから」という
頑なな拘りによりウルトラマリンブルーが外れる気配はせず…。

結果的に私がそれを外してしまった上に、群の字を異字体に
変更してしまったせいで皆さんはこのタイトルに込められた
本当の意味に気付くことができませんでしたよね。
群青が何故、群青なのか…
それはブルーな人の群れだからです。

人を殺してしまって「あーあ…ブルーだぁ…」
酷いDVを受けて「あーあ…ブルーだぁ…」
誰からも愛されなくて「あーあ…ブルーだぁ…」
大事な人を亡くして「あーあ…ブルーだぁ…」
恋人が殺人犯になって「あーあ…ブルーだぁ…」
そんな「私マジでブルーなんだよねー」という人たちの群れです。

この当時の私は、自分の連載が
『群青〜ultramarine blue〜』になるのか、
『群青〜blue〜』になるのか、もしかしてまだ
ブルーな人が暗い闇(ブラック)のような未来へ進む

『ブルー・ブラック』になる可能性もあるのか、
歴史的瞬間に立ち会うための心の準備に、
とんでもない精神力を費やしていました。

あと、『ブルー・ブラック』になってしまったら
ブルブラとか略されてしまうんだろうかとか
そんなことも考えていました。

又、この『群青〜ultramarine blue〜』には
担当編集者のもう一つの拘りが隠されています。
ブルーな人の群れだから、という理由だけではなく、
この漫画に対して担当編集者が持つイメージカラーが
ウルトラマリンブルーだから、という理由もあるのです。
これは、読切『LastSmile』で海が出てきたから
そうなったのだそうです。(連載版と海は関係ありません。)

「私のこの漫画に対するイメージカラーは青ではなくて
 褐色とか、錆び付いたような赤です」
と伝えたら
「でも僕のイメージカラーは青なんです」と、跳ね返されました。
私は必殺技のつもりで作者のイメージカラーを唱えましたが
相手の必殺技"そんなこと気にしない"に負けてしまいました。

どこまで手ごわいのか『群青〜ultramarine blue〜』…。
ちょっとは作者に容赦してくれ『群青〜ultramarine blue〜』…。

イメージカラーからタイトルを選ばなければならないような
話しの流れになった上に、赤系は拒絶されてしまったので、
仕方なく青系統の色の中から、嫌いではない色で、尚且つ
言葉の響きや字面がタイトルに適していそうなものを選んで
提案することにしました。悩みに悩んだ挙句、私は
縹(はなだ)色を選びました。

「どうしても青系の色じゃなきゃダメなら、
 『縹』というタイトルはどうですか?」と問うと、



…と、断られてしまいました。縹撃沈。

ぶっちゃけ鼻みたいでカッコ悪い縹撃沈。

それから、「一文字だけだと色だということが伝わらないから
この色のタイトルにする場合は『縹色(はなだいろ)』じゃないと
読者が混乱する」という理由で難色を示されました。
色だということを伝える必要までいつの間にか生じたのですね…。

でも主人公の名字を「花田」にすれば、読者にも
タイトルの理由が伝わる筈だから、どうしても『縹』なら
主人公の名字を「花田」に変えれば検討の余地はあるそうでした。

私の漫画は、キャラクターが誰一人として名乗らないので
主人公を花田さんにするには名乗らせなければなりません。
それはできません。そもそも花田さんにする理由が分かりません。

私は戦意を喪失し、戦いを諦めました。

今思えば最初からご自身の考えたタイトルに相当な自信が
あったのでしょう。作者の意見に関しては、「それはダメ」と
断りさえすれば、検討したことには一応なりますし、
作者の提案より自分の提案のほうが優れていたという編集者の
自己判断が、最終的には雑誌での正式な判断として扱われてしまう
わけですから、漫画の作者でしかない私の立場は強くありません。
仕方ないのです。担当さんが「自分で言うのもなんですけど、
いいタイトルだ思うんです。」とまで言い切った上で、
『群青〜ultramarine blue〜』を推すのですから、
それは要するに「僕はもうこれに決めています」なのです。

「中村さんのほうでもいい案があれば」なので、
それが"いい案ではない"と、直感的判断を下された場合には
何を言っても検討はされないのです。
しかし、ご自身では「相談の上だった」と言えるのでしょう。
「いい案があれば出してください」と対話をする姿勢は見せた。
その上で、私の出した案が担当者にとって良案ではなかった。
…これは形式上、話し合いをしたとも言えます。

私からすれば「何を言っても全く無駄だった。」
先方にしてみれば「作者から良案が出なかった。」
きっとそれだけのことだったのでしょう。

こうして私の連載タイトルは
『群青〜ultramarine blue〜』になりました。


しかし我に返ってから
これから先『群青 〜ultramarine blue〜』の名前を背負い
『群青 〜ultramarine blue〜』の作者として生きていかなければ
ならないことや、「何描いてるのー?」と聞かれたときに
「ぐんじょう・ウルトラマリンブルー」と答える自分を想像したら
やっぱり嫌になってしまい、もう一度話し合うことにしました。

念のため書き添えますが、私は他人が使う「群青」という
タイトルに違和感や嫌悪感を覚えることはありません。
自分のものには自分の好きな名前をつければいいと思います。
私は『群青 〜ultramarine blue〜』と呼ばれるべきではない
自分の漫画に、その名前がつくことを拒んでいただけです。

「メインタイトルは"グンジョウ"で譲りますから」という条件下で
"〜ultramarine blue〜"を外してもらい、それから私は個人的に
群青色を然程好んではいないので、色の名前だというイメージを
抑えるために"群"の字を異字体の"羣"に変えてもらい、
連載のタイトルは『羣青』で折り合いをつけることになりました。


このタイトルに関しては、様々な人から頻繁に意味を
尋ねられますが、私自身、タイトルが意味も無く『羣青』に
なってしまったことを未だに残念に思っておりますし、
(子供の名前を折り合いの悪い姑につけられてしまったような
ものなのです。)由来を尋ねられても「ブルーな人の群れ」と
答える気にはなれません。

『羣』の字の、重そうな君を華奢な一本足で真っ直ぐ支える
「羊」という字と、華奢な羊に何もかも預けてしまっている
「君」という字から受けた印象は、好んでいます。
この一文字だけは、私の考えたタイトルとして責任を持ちます。

青、"ブルー"の部分に関しては、申し訳ないのですが、
作中で責任を取る気はありませんし、取り方も分かりません。


どん…っなに私がこのタイトルを拒んでも、
どん…っなに私がブルーな人の群れを忌み嫌っても


めげない担当さんは

煽り文句で、読者ではなく作者を煽る。



漫画のタイトルは作者が決めていると
思っていらっしゃる読者さんも多いでしょうけれど
漫画にとって大事な要素でも、作者の希望だけで
決まるとは限りません。新人であれば尚の事です。

例えば、羣青の準主役は獣医師ですが、
これは担当編集者が、かつて夢見た職業だそうです。
せめて漫画の中では、と他人の人生が懸かった漫画に
自らの夢を託したのでしょう。それが中村珍が描く漫画の
足枷になる可能性もあるけれど、それはともかく獣医や、
大好きな動物が出てくれば、自分にとってその漫画を
担当することは楽しい仕事になるのでしょうから、
出したかった気持ちはわかります。

レズビアンの殺人犯の職業を、会社員から獣医師に
変えるべきだという指示にも、ちゃんと理由がありました。
「レズの殺人者というだけではあまりにも無特徴なので」
というものでした。

私は、レズビアンで殺人犯で大金持ちのお嬢様という、
自分で作った設定だけでもカナリくどいと思っていたのですが、
それだけでは無特徴に見えるとの事だったので、最終的に
彼女は獣医師になりました。
親の会社で働く社長令嬢、殺人を犯したレズビアンだけだと
読者も食いつく場所が無くて、人気を取るのが難しくなるので、
殺人を犯したレズビアンは社長令嬢で、動物病院の勤務医
という設定に変更されました。
レズビアンの殺人者が無特徴に思えるのだとしたら、
よほどレズビアンの殺人者の方と交流があるのでしょうか…。
東京には色んな人が住んでいるので、私の知らないところに
レズビアンの殺人者がゴマンと居たのかも知れません。
(結局、準主役が獣医という設定は、他の方が描く獣医漫画で
あれば思い切り生かせたのかもしれませんが、殺人犯の逃避行漫画
である私の漫画に於いては使い道が見つからなかった為、ネームを
通す必要があった第一話以降はまったく使っていません。)

残念ながら、獣医にするまではひたすら「特徴がない」
「特徴がない」「29歳なら仕事があるはず」「お嬢様は逆に
親に反抗的になって親の会社では働かないと思う」と言われ、
(しかし私の友人は、親御さんが社長なら大抵親御さんの会社で
働いているし、親が病院長の友人も親御さんの病院で医師か
看護士として働いているので、親御さんが働き口を持っていれば、
そのまま働くケースはそれなりに多いと思うのですが…。)
気が進まず、職業をなかなか獣医師に変更しなかったのですが
遂に私が折れるまでネームは通りませんでした。
職業を獣医師にしたら、動物病院での手術シーン等の未完部分は
後で詰めれば問題ないということになり、ネームが通りました。
このネームは、「面白くなった」と褒められました。

毎回だと読者も飽きるし逃避行漫画ではなくなってしまうが、
何回かに一度は病気の動物を往診したり、事故に遭った動物を
救ったり、ペットロスの人と向き合う展開も良いとの事でした。
この連載で人気を取るのは難しいから3回ぐらいで最終回だと
仰っていたのに、何回かに一度というのはちょっと…
本編を犠牲にしないと往診には行かれません。
これは逆転の発想で、獣医師にすれば人気が出て、長く続くに
違いないから時々はそういう回も作れるということでしょうか。
「人間の医者だとブラックジャックになってしまうから、
動物版ブラックジャックみたいに」と仰っていました。
みたいにしませんよ私は…。だから私は拒んだのです。
この先その設定を生かせないのは、読者に散漫な印象を
与えてしまうだけになってしまうから。
それに、簡単に獣医を描けと言われても、相手は医学です。
手術シーンなど綿密な取材無しでは描けません。

取材の必要があれば掛かり付けの猫専門の動物病院があるから
そこで話を聞いてきてくださる、との事でした。
猫専門の動物病院に取材に行くという事は、漫画に登場する
患畜も猫専門ということでしょうか…。
「手術のシーンの描写をどうしたらいいか…」と伝えたら、
「これを見て頂ければ」と、獣医学書が2冊送られてきました。
『勤務医のための』と描かれた獣医学書は難しいものでした。
せめて農学部の学生が読むようなものも一緒に送って頂ければ
助かったのですが…。結局取材も無く、「手術のシーンは
物語のメインではないので、そこまで厳密に描かなくてもいい」
と言われてしまい、仕方ないので頂いた獣医学書を一通り読み、
ごまかせる範囲でごまかし、(しかしプロの方が見ればおかしな
描写だったと思います。)第一話を描き上げました。
適当なものを描いて掲載してしまい、本当に恥ずかしいです。

この第一話は、準主役を獣医にした上に
猫を出すまでは「面白みに欠ける」「もう一押しが足りない」
という指摘が続き、絶対にネームが通りませんでした。
(担当編集者にネームを通して貰えないと、編集長クラスは
ネームを見ることがありません。「よし」と思ったものを、
担当編集者が編集長に回します。非常に重要な事なのです。)

猫が居なくても漫画は成り立つ筈だと伝えた時に、
でも居たほうが良いと返されて、ああもうダメだと思いました。
当時は連載開始前だったので、論破できなかったと言うか、
そもそも何故ここで猫の登場が必要ないか、ということは
論じて貰えませんでした。どうしても出したいのだろうから、
これ以上言っても仕方無い…と諦めました。

一話目の原稿を渡した後に言われたことは
「あの猫は猫好きが見ても納得のいく出来でした!」
だけでした。本編に関しては何も言われませんでした。

『羣青』が始まる、だいぶ以前の事ですが、読切企画を
進めていた当時、中々通らなかったネームの適当なコマに
猫を2〜3匹足したら「面白くなったので編集長に見せます」
と、簡単に通ってしまったことがあって慄いたものですが、
それでもまあ、裏技的ではありますが攻略法ですから、
猫を出そうが犬を出そうが、とにかくネームを通さないと
漫画家になれないので、多少汚い手を使っている自覚は
ありながらも、「これは出すまで絶対に通らないな」と感じた
時は、絶対に猫を出すようにしています。それだけで載るなら、
そのままお蔵入りするより(新人は特に)賢明だと思います。

ただ、猫を出そうが犬を出そうが、と言いましたけども、以前
「キャラクターに深みを出すため、趣味を持たせましょう」と
アドバイスを貰ったことがあって、男性が主人公の読切漫画
だったのですが。私は趣味と言われたので、つい、いかにも
趣味らしい趣味(造型とかそういう)を描いてしまったら、
「趣味らしい趣味で在り来りだからペットを飼いませんか?」
と言う指摘が入りました。ペットとしか言われていなかったので、
私が描きやすいペットでいいのだろうと思い、犬を飼わせたら
「一人暮らしの男には犬を飼ってて欲しくないんですよね。
男にはやっぱり猫を飼っていて欲しいっていうか…。犬だと
依存してる感じがして嫌だっていうか…」と言われてしまい、
独身男性が犬を飼っていると依存していて嫌だから男は猫を
飼うべきであるという事情によりネームが没になったので、
すぐ犬を消しゴムで消し去って猫を出しました。
瞬く間にネームが通りました。

ちなみに、こういう裏技が全ての編集者に通用するわけでは
ありませんので(というか通用しない場合のほうが多いし、
趣味というか、ディティールの部分、拘り要素の部分は
作者に一任している編集者のほうが多い筈なので)、
読者諸氏は他の作家さんがそういう小狡い手を使って
デビューしているなどとは思わないでください。
皆さん、自身のネーム力で勝負なさっていると思います。

私は猫の手でも借りたいほどネームが通らず困っていたので
猫の手を借りましたが…。

自分の人生を漫画に押し付ける編集者が居るのは事実で、
耐え切れずペンを置いていった新人を私は何人も知っています。
自分が野球が大好きだから、サッカーが大好きで野球を一切
見ない新人に野球の漫画をひたすら描かせ続けたり、自分が
犬好きだから、動物に興味がない新人に犬漫画を描かせたり。
確かにこの仕事、自分の描きたい漫画ばかりを描ける仕事では
ありません。多少の我慢は必要です。同時に、編集者も本来は、
自分の読みたい漫画ばかりを描かせる仕事ではありません。
読者にとって面白い漫画を作る努力をするのが我々の仕事です。
「それは度が過ぎるよ…」と思うような話も時々他で聞くので、
何と言うか…何事も、度が過ぎないといいですよね。

「中村さんは猫や犬は好きですか?」と尋ねられた時に、
「ええ。犬が一番好きですが、猫も好きです」と答えました。
もしかすると、そういう回答をしてしまったせいで、
漫画が動物だらけになっても問題ないという解釈を
されてしまったのかも知れません。
何の気なしに、雑談だと思って答えてしまったのですが。


『羣青』を始めてからずっと、打ち合わせから、猫の手を
借りようとする提案がなくなるといいな、と思っていました。
「猫を出しませんか?」(私のネームに明らかな物足りなさを
感じている時にされることが多い提案。)
「ここに猫は居ないかぁ…」(物語を進行するカギを探して
いる時に猫を出せる可能性を探って言う独り言。)
…これらを打ち合わせ中に言われなくなった時が、きっと
担当編集者が私のネーム自体を信じてくれるようになった時。
「猫を出さなくても人気が取れるようになった」と思ってくれた
証拠だと思うので、私にとっては、結構大事なことでした。

第六話(昨年の4月掲載分)を最後に、提案がなくなりました。
四話では、話をどう進行するかという打ち合わせをした際に
「空き家だから野良猫が居ますかねぇ…いないかぁ…
 いや、野良猫が居たら…って思ったんですけど…」と
仰っていたので、もし空き家に野良猫が居れば物語が
私が考えたものよりスムーズに展開できたのかも知れません。
第五話は新キャラ登場でキャラクター設定し放題の時期
だったので、ネームの段階で犬を配置して牽制しました。
担当編集者は犬を物語に絡めようとはして来ない筈ですし、
さすがに犬が3頭居れば、猫も…とはならないだろうと考え、
そして、もう猫は勘弁してくれ、という願いを込めて。

もう猫に私の連載を支えさせるのは勘弁してくれ…という
願い届かず第六話では、殺人を犯してしまったレズビアンに
"人を殺してしまった"ということを再確認させることになり、
担当編集者からは、「街中で出会った野良猫と触れ合って、
ぬくもりを感じることによって、ふと自分の罪の重さを…」
という提案をされたので、全然違うネームを切りました。

やっと私のネームを信じてくださったか、
私があまり出したがらないので諦めたか。もしくは…
この時期ちょうど猫の件に関する転機があったので、
そのせいかも知れません。ネームが通りました。

以前電話での打ち合わせの最中に担当編集者(在宅中)の
愛猫が羣青のネームで遊んでおり、それを担当編集が
わざわざ電話口で私に伝えたことがありました。
「今猫がネームで遊んでて、どこに何があるか
分からないんですよ(笑)」と。(議題の○ページを
探しているのだが、猫が遊んでいて、○ページが
すぐに見つからないという事。)勿論その編集にとっては
愛猫がネームにじゃれる姿は微笑ましかったと思うので、
電話口で嬉しそうに笑いながら伝えたのだと思いますが、
私はそういう時は(犬や猫が遊べそうなもので遊ぶのは
当然ですので、動物は責められるべきではありません。
飼い主のマナーとして)相手が気を悪くする可能性のある
言葉をわざわざ選ばずに、「今、手元が散らかっていて」
と言えば良いと思っています。(とは言え、私は犬より
低い場所にネームや原稿や人からの手紙などを絶対に
置かないので、そう言う機会は今まで一度もありませんが。)
テレビ電話ではないですから、相手の姿など見えません。
どうしても猫にネームを与えることを(又はネームで遊びたい
という欲求を抱いている愛猫に我慢を強いてしまうことが)
耐えられないのなら、他人には黙っていれば良いのです。

担当している他の作家さんのネームでも遊ぶとの事でしたが、
(そりゃあ、猫の居る部屋に紙の束を置いておけば当然遊ぶ
でしょうね。猫ってそういう動物ですから。)そういうことも
わざわざ他人に言わずに、胸の内にしまっておけばいいのです。
(それからこれは、"猫がネームで遊んでしまう"のではなく、
猫が遊べる場所に"人間が置いてしまう"の間違いですね。)

私は、「猫がネームで遊んでいることを伝えられたのは
気が悪かったですよ。」と伝えました。
こういうことを伝えたので、もしかすると「中村さんは
本当は猫が嫌いなんだ」と勘違いして、それをキッカケに
私の漫画に猫を出すことを諦めてくれたのかも知れません。
だとしたら、気拙い思いはしましたが、言って良かったです。
ちなみに私は犬の飼い主に同じ事をわざわざ伝えられても
大変気が悪いです。私の相手は犬や猫ではなく人間なので
ネームで遊ぶ動物の種類などは問いません。

ネームや原稿に対する気持ちは少し特殊なもので、
漫画家の中でもバラつきがあります。それほど原稿やネームの
扱いを気にしない作家さんも居られるので、そう考えると、
(他の職業で暮らしている方が何を大切にしているかを私が特に
考えたりしないように、)読者諸氏も「漫画家にとっての
ネームとは…?」「漫画家にとっての原稿とは…?」等、
しみじみ考える機会は無いのではないかと思います。
(あったらごめんなさい。ありがとうございます。)
分かりにくい例えなのですが、張り切って奮発したお土産を
渡したとしましょう。人間用の食べ物を人間にあげました。
数日後に渡した相手からお礼の電話が来ます。

「お土産ありがとね!おいしかったー!!
 うちの犬に食べさせたらすごく気に入ったみたいで、
 全部ひとりで食べちゃったんだよ(笑)」

…こんな感じの電話を貰ってしまったような気持ちでしょうか。
どうしても犬に食べさせてあげたいのであれば、
"お土産ありがとね!おいしかった!"…だけ伝えればいいのに、
と。私は思うのです。

「原稿じゃないんだから、ネームなんてタダじゃん」と
思われてしまうかも知れませんが、我々は事実上無料で、
この、ネームという原作の段階をこなします。
原稿料に原作料も含まれているのでしょうけれど、
原稿料は原稿制作費(作画費用)さえも保証されていないので
原作料について(原作者という職業はあるのに)どこまで真剣に
考えられているか甚だ疑問です。作画は大赤字、原作は無料。
そんな中、何日もかけて構想を練り、打ち合わせに臨み、
ページ数等に関する変更があれば対応し、それによって生じる
作画面での経済的ダメージもこちらでどうにかするのですから、
せめて気持ちよくお仕事をさせて頂けたら、嬉しいのになと、
いつも思うのです。

私は、…そして恐らく多くの作家さんもですが、
編集者、つまり我々が漫画関係の書類(プロットやネーム、
原稿など)を渡す、又は送る相手には、それらを丁寧に扱い
大切に思っているのだという姿勢だけは見せて頂きたいと
思っています。漫画に関するものは、何だって大切なのです。

と言うか、ネームが私達にとって大切か大切でないかは
本来どちらでも良いことです。漫画を描きながら漫画か
他の何らかの方法で暮らす漫画家達、が描いた漫画を売って
暮らしている編集者諸氏が、「ネームぐらい、いいじゃん」と、
思っているのか「ネームを作家の前で適当に扱うなんて出来ない」
と思ってくれるのか、そこなのです。自分の担当作家の人生と
その漫画の命運を賭けた漫画の設計図を、気持ちの上で、
どう扱う人なのか。勿論ネームなんて貯め続けたら
えらいことになるので、物理的処分は必要だと思います。
ネームなんてどんどん捨てて頂いて当然だと思うのですが、
「溜まっちゃったネームが邪魔だから昨日処分したんですよ」
を、うっかり言ってしまわないで欲しい。
邪魔だから昨日処分したという事は何とも思わないのだから。
ネームを描いた漫画家本人が「ネームなんて適当に扱っていいよ」
と言ったとしても、思っていたとしても、そこで
「ですよね、適当でいいですよねえ」と編集者が頷いてしまうと
そこに人間関係の結果が現れてしまうのだろうなぁ…と思います。

紙の束で遊んでいる動物に対してではなく、
遊んでいる愛猫の姿に微笑む一愛猫家に対してではなく、
ペットがネームで遊んでいるのだと作家に伝えた一編集者に対して
「伝えられたことが、気が悪かったですよ」と言ったら、

「はぁ。……………。……?………そうですか。でも
 猫ってそういう動物ですから。でも気を悪くされたなら
 謝ります。それに、うちの猫もう死にました!」

という言葉が、
普段と違う口調で返ってきました。

後日、お会いした際に、
「つまらない事で怒ってしまってすみません」と謝りました。
それから、簡単に、私にとってのネームがどういう物だったか
説明しました。そわそわしながら途中まで聞いてくれました。

普段、ファミレスで打ち合わせを済ませてから
席を立つ時は「そろそろ行きましょうか」等、何かしか
仰ってくださるのですが、私の話が終わる手前で「ハハ…」と
軽く笑ったような声を漏らし、顔を逸らしたまま2、3回
小刻みに頷いて、何も言わずに突然席から立ち上がり、
お会計のほうに行ってしまいました。

その話には二度と触れたくなかったか、可愛がっていた猫を
責められて(いると思い)、謝られたぐらいでは許せないほど
怒っていたのか、もしくは、亡くなった猫を思い出したくなくて、
思い出すまいとして気が逸ってしまったのかもしれません。
とにかく私は、言ってはいけないようなことを言ったのだろうとは
思いました。会計を済ませた後は普通に話ができたので、
その話題だけを断ち切る目的で席を立たれたのかもしれません。
私も驚いたので、それ以後、その話には触れませんでした。
別れ際は、人の好さそうないつもの担当編集に戻っていました。

この一件がきっかけになったのかどうかは分かりませんが
この時期を境に、羣青の打ち合わせから猫が姿を消しました。
羣青の打ち合わせも私の日常業務から、ふと姿を消しました。
(これに関しては、たまたま時期が被っただけだと思いたいです。)

以降、打ち合わせらしい打ち合わせも特になく、ネームも
出せば敲き直す事無く簡単に通ってしまうので、
担当編集者の嗜好で何かが変更になることは無くなりましたが、
正面からの打ち合わせがなくなったのは、残念です。


話は変わりますが、
扉絵や、ページの横に入っている"煽り"は御存知でしょうか。
「そして○○の運命は…?」とか「大反響御礼!!」とか
「単行本1巻大好評発売中!!!」とか「それぞれの青。」とか、
単行本では抜けるけれど雑誌では入っている、あれです。
あれを漫画家が入れていると思っている方もいるようですが、
ああいうものは担当編集者が考えて入れています。

時々、扉絵の煽りでネタバレされている漫画家さんが居て、
ああ…不注意な編集者に当たる作家さんは不幸だなぁ…と
思って眺めています。時々あるのです。その回のネタバレが。
私は欄外のキャラクター紹介でネタバレのオンパレードを
されそうになったことがあるだけなので、煽りのネタバレは
未経験なんですけど、されたら嫌だろうな…。
(キャラクター紹介は事前に全部チェックさせて頂いたら、
ネタバレだらけだったので掲載時に全て修正して頂きました。)

煽りに関しては「それぞれの青(ブルー)」で私が煽られすぎて
私の目の届く範囲で青(ブルー)青(ブルー)青(ブルー)青(ブルー)
言うのはお願いだからもうやめて欲しい、ということを伝えたら、
「以降の煽りはすべて事前にチェックして頂くようにします」と
言われてしまい、その時は、ええ、別に自分の思い通りに
したいわけではないから、意見が食い違った部分と一貫性のない
煽りを避けて、分かりやすいものを打って貰えさえすれば、
あとは他の漫画に打たれているような普通の煽りで良いのだけど、
…と思っていたんだけれども、
(1話目で『逃避行ではなく〜奇妙な旅が始まった』と煽り、
暫く後で『これを旅と呼ぶのだろうか』と呼ぶかどうかを悩み煽り、
その後でまた『そして旅は始まった』と旅を煽り……。
呼ぶかどうか迷っているのかそれとも旅なのか、多分気付かない
人のほうが多いでしょうけど、それでもやっぱり気になります…。
編集者の言葉選びの限界値は、煽りからしか判断できません。
傍目に見るとただの煽りでも、私にしてみれば編集者が自力で
創作したものの質を知る、唯一の手掛りなのです。だから私は
この短い一文をどう構成してくるのか、どの言葉で決めるのか、
字面が端整か、確認するようにしています。物語に対する認識が
私と同じかどうかの判断材料にもなるので、結構大切なのです。)
毎回煽りの候補が送られてくるようになったので、
以降は「これはあらすじと違う」とか「これは曲解しすぎ」とか
「これは読者が誤解する」とか、そうしたものを先に弾いて、
掲載して頂いています。やっぱりこのほうが安全かも知れない。

以前、ちょっと「これは読んだ人が誤解すると思うから困る」
という印象を受けた煽りを提案されたことがあったので、
その旨を伝えたら、「わかる人にわかればいいから、
ここは冒険してみようと思って」と言われてしまって、
その冒険心は確かに大切なものだと思うんですけど、ただ、
一応私の名前で誌面に出るものなので、冒険などはせずに、
より多くの人の心に届きやすい言葉を選んで頂けると、
こちらとしては有り難いのだけど…と思いました。
昨年の秋だったか、その時は私が自分で原稿を届けた時なので
同席しており、その場で代案を考え、差し替えて頂きました。

それとはまた別の時、
「言葉や剃刀で傷つけ合った二人に、ふっと訪れた"凪"の時間」
という煽りが入りそうになった回がありました。私の漫画では、
確かに二人が言葉で傷つけ合う場面が多々あります。しかし、
二人が刃物で傷つけ合う、剃刀でチャンバラをしたという事実は
ありません。事前に止めなければ、これが載ったかも知れません。
ちょっとそういうのは、恐いな、と思います。

手間を取らせてしまって申し訳ないとは思うんですけれども、
チェックさせて頂いて、やっぱり良かったです。
煽りが漫画のストーリーや作者の意図を超えたり外れたりして
しまった時に、ストップを掛けられるという利点があります。


逆に、チェックがあったばっかりに、話が余計ややこしく、
想定していない方向まで行ってしまうこともあります。
景色だけを見せるカラーページに、その回では一切登場しない、
3ヶ月前の場面に関する煽りが入ってしまうところだったので、
だったら、余計なものは入れないで欲しいとお願いをしたことが
ありました。場面の空気を壊す虞のある文面でしたので。

先方から届いた煽りに関するメールだったので、ただ返信すれば
煽りについての話として解釈して頂けると思い、私はこれについて
本編の進行を妨げるものは入れないで欲しいという旨の返信を
しました。そうしたら一体どういう訳か、漫画の小ロゴ(…最初の
ページが扉絵でない場合、大きめのコマ等にその漫画のロゴが
入りますよね。あれです。)を、私が、余計だから入れるなと
言ったように曲解されてしまったらしく、暫くして担当編集から
「小ロゴを入れるのは雑誌の決まりです」という返信が来ました。

そんな事はお願いしていないので、
小ロゴは入っていても問題ない旨(というか最初からこちらは
小ロゴを外せなどと言っていない旨)を返信したら、
「場面の空気が壊れると思うので、外すように上と掛け合いました」
という内容のお返事を頂戴してしまいました。
私の漫画のロゴだから、私の漫画の空気は壊さないと思う…。

これはもしかして、最後まで編集部のほうでは中村珍が
雑誌規定のロゴを外せとゴネたことになっているのかな………?
だったら嫌だな…。
私は小ロゴのことなんて気にしていないのだから、規定通り
私の漫画のタイトルロゴを私の漫画に入れてくだされば良いのに。
結局小ロゴは、入れて頂けませんでした。

その後、3ヶ月前の漫画の内容を引っ張った煽りを入れるなら
先月休載だったので、粗筋を入れてくださいというお願いを
しました。そうしましたら、また、粗筋を入れると漫画の空気が
壊れるという内容の返信を頂戴してしまい、なんだかもう、私はもう、
何でもいい、なんでもよくなってきてしまい、私の漫画の粗筋が、
私の漫画の空気をブチ壊しにすることは多分無いのではないかな…
と、思いつつも、諦めました。

作者というのは、「作る者」と書くわけですから字の如く
漫画の作者(だけ)が漫画を作っていると思っている方も
少なくないのではないかと思いますが、実は必ずしも
そうではありません。重要人物のキャラクター設定、
物語の展開、漫画のタイトル、などなど。
編集者の意思で変わることが、漫画業界では頻繁にあります。

私の知っている作家さんも、掲載されたものを見たら
主人公の名前が無断で変わっていたり、タイトルが予告なく
変わっていたり、余計なモノローグを所狭しと増やされて
いたり、そんな話が数多くあります。

皆さんのお手元にも、作者の本意ではない漫画が
もしかするとあるかも知れません。

漫画を編集者に私物化されてしまうと、
作者のテンションは落ちてしまいます。編集者が
過剰に仕切れば仕切るほど、作者の気力は削がれます。
皆さんきっと、漫画の打ち切りを悪いものだと
捉えていると思いますが一概にそうとは言えません。
過干渉状態に陥った漫画の作者は「助かった…もうあれを
俺の名前で描かなくていいんだ…」と喜んだりする場合も、
実はあるんですよ。残念な話です。

…とは言っても、色んな編集者が居るので、
すべての編集者や漫画家がこれに該当するとは、
思い込まないでくださいね。

こういう話を漫画家から聞いて
「そんなことが起きるの!?」と驚く編集者も
もちろんたくさん居るわけですから。

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