絵と漫画と仕事とかの雑記

ほとんどの場合、ブログを書いた日付ではなくて記事の出来事の日付です。実際は記事を公開しても問題ない時期になってからの後日記です。
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Written By 中村珍
好きな本は電話帳
http://ching.tv
ちn

 
想い出がいっぱい
※交通費と現場事情に関する説明を文末に追記しました。
関連記事:「羣青」連載終了に関する記事の一覧


40ページ/手取り原稿料380,000
アシスタント人件費:245,900
アシスタント交通費:46,580
画材(トーン等追加購入):24,830
座卓(必要人数分追加):5,040
照明(必要人数分追加):8,001
トレース台(追加購入):9,660
作画資料:27,787
寝袋:5,760
通信費:3,600
原稿直参交通費:12,350
原稿直参宿泊費:1,500
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!


2007年6月26日発売号に掲載された原稿のお話。
主な原稿期間は5月〜6月の頭ちょっと。

連載決まったの4月だったけど、
その時点で既に別の読切原稿中だったり、
夏までのスケジュールがギッチギチのガッチガチに
決まっちゃっていたので、すぐ作業に着手できず…。
「締切は5月中旬」っていう話を真に受けて、
「うわ、他の仕事被ってるから間に合わない!」
とか思ってアシスタント何人も雇ってしまった。
机も照明も買ったし、トレス台も1つ買い足した。
布団を買うお金が残らなかったから、アシさんには
めちゃくちゃ薄っぺらい寝袋で寝てもらった…。

5月半ばになって「〆切は今月一杯」に変わった。
5月下旬に(うーん…どうしても間に合わないなら…
えーとギリギリ延ばせるのが…、みたいな感じで)
『デッドは6月5日です』になった。
「だから前の日には仕上げて頂かないと」って。
「もうゲタ履かせてないので、それを過ぎるともう…。」
みたいなこと言われたから急がなきゃ…と思った。

当時は〆切とか印刷とかの仕組みをよく知らなくて
今よりバカだったから何もかもを真に受けて、
人件費使ってめっちゃ急いで、デッドを守ったんだけど、
最初から本当の〆切教えて貰えてたら、20万円弱は
安く済んだのにな〜…と思う。

6月3日の夜は徹夜して、4日は始発でアシさんに
来て貰って、終電ギリギリまで狂ったように作業して、
タクシーに飛び乗って、最終の新幹線で東京に行った。

東京行ったら担当さんに
「僕もう編集部出ちゃったんで受付に預けといてください。」
って言われたから色々思いそうになったけど新人の本能で
色々思うのをやめて無心になった。えらい。

講談社に行って受付に原稿預けて、講談社を出た。この間3分。
2日間ぶっ通しで仕事してぼんやりしつつ講談社のビル見上げて
うわー私なにしに来たんだろー?と思った。
昨日の徹夜必要だったかなー…とか、別に明日の朝届けても
同じだったんじゃないのー?とか、そもそも朝届けても
編集さんって午前中から会社に居るのー?とか色々考えた。
終電で来ちゃったから泊まる場所がなくて漫画喫茶に泊まった。
1500円だった。
普通のイスの席だから横になれなくて、逆に疲れた。

東京に出てくる片道分のお金しかなかったから、
漫画家さんのところでアシスタントをして帰った。
(家に帰ってお財布の中身とアシ代足したら
1万8千円ぐらい余ったから、暫く取っといたんだけど、
翌月、打ち合わせしてたらなんかむしゃくしゃしてきて
結局残額でiPod買った。今でも仕事中ずっと使ってる。)

デッドの2日後だったか3日後だったかに
担当さんから「見ましたよ原稿〜(^^)」みたいな
別に急いでない電話が入る。
「これからセリフとかの用意するのでまたなにか
あったら電話しますね」みたいな内容で話が終わる。

セリフ相談の電話受けたのだいぶ後だったから
デッドから数日間は別にデッドらないらしい。

セリフ相談の電話で
「"てにをは"ぐらいだったら作家さんに相談しないで
勝手に変えちゃいます」って言っていて、「へー」と思った。
私の漫画でも本当に、"てにをは"が勝手に変わっていた。
「…ぅゎぁ…………」と思った。

この電話で私は「セリフをちょっと変えられたぐらいなら
そんなに気にしたりしないですけど」って言ったんだけど
(以前ヤングジャンプでちょっと変わったことがあったから。)
変なふうに変えられなければ全然気にならないってだけで、
変なふうに変えられていたら凄く気に食わないことを学んだ。

雑誌に載ったのを見たら、編集部に渡すまでちゃんと
貼ってあったトーンが剥がれて絵の途中でバッサリ切れてて
(稚拙な言葉と知りながらも、私の感情に一番近い言葉だから
敢えて使う)、むかついた。電話で言ったら「あ、そうですか。
じゃあ単行本が出るとしたらその時直してください。」
と言われた。あ、そうですよ。出るとしたら直しますよ。クッ…
私が売れっ子になったら謝ってもらえるのかなぁ…。

原稿料の手続き忘れられて
8月中旬まで無収入。

逃避行漫画だと思って描いていたし
担当さんも自分で「逃避行漫画だから」っていつも言ってたのに
煽り文句見たら
『逃避行でも、暴走でもなく。
"土壇場"を踏み越えてしまった二人の女の奇妙な旅が、始まる。』
ってあって、いやー…これ、逃避行だし、暴走でしょ。と思った。

打ち合わせの最中に
「ゲイって何であんなに誰彼構わず
やっちゃうんでしょうね?」と言われて、
「そうなの?」と思った。
ノンケも誰彼構わずやる人はやるでしょ。




36ページ/手取り原稿料342,000
アシスタント人件費:189,500
アシスタント交通費:42,040
取材用カメラ及び周辺機器:49,037
画材(トーン等追加購入):3,244
作画資料:9,060
原稿直参交通費:1,460
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!


ちょっと暗〜い感じのネーム提出したら、
設定自体が暗いんだから、話し運びはせめて明るくないと
読者が辟易しちゃって、人気が取れない」って言われて
(連載始まる前から「この漫画じゃ人気は取れない」って
言ってたから人気なんて諦めてるのかと思ってた。)
設定から起こし直すことになった。

最初のネーム、おばあちゃんが死んじゃうところに
立ち会っちゃう主人公たちの話しで、
まあ暗かったかも知れないけど。

結局、人を殺しちゃって忙しいはずのいい大人が
漫画喫茶で小学生カップルの恋のケンカの仲裁をする話に
変更することになった。
「えー」と思ったけど、実際それでネームを起こして、
「この展開凄くつまんないですよ!!」って証明しないと
多分わかってもらえないよなー…と思って、
小学生の恋のネームを言われたとおり描いて出したら
「これは面白い!」って誉められて、あー羣青終わった
これでもう終わった。と思った。どうでもよくなって
作画に入って暫くしたら、担当さんから電話がかかってきて、
"編集長がこのネームじゃダメだって言ってる"って言われた。
「ストーリーが軽すぎる、生ヌルイ!」
「1話目で感じた重みがなくなった!!!」
「叩きつけるほど暗いものを描いて来い!!!!」って言ってた。
…って言われた。あーよかった羣青まだ終わってないと思った。

描き始めた小学生原稿破棄。
もうぐっちゃぐちゃにして捨てた。
結局、最初に出したネームより遥かに暗いネームになった。

小学生カップルの打ち合わせやネームで
だいぶ時間使っちゃって、載ったほうのネームが通ったの
7月真ん中。ほとんど通ったの7月下旬の頭のへん。
取材行かなきゃいけなかったりして、その後風邪ひいたりして
本格的に原稿に着手できたの7月23日。
発売日8月9日。最終〆切7月30日。残り1週間。
36ページ。固定のアシスタントとか居ない。
あーもーこれダメでしょ、絶対ダメでしょ、連載開始早々
落とすでしょ、そんで打ち切りでしょ、と思った。
一応やるだけの事はやってみたけど案の定間に合わず
「とにかく原稿を持って東京に来てください」と言われたので
未完成の原稿と一緒に上京することになる。

都内から呼んでいるアシスタントが一緒に居ることも
伝えてあったが、私だけ単身出向く事になる。
アシスタントも同行して良ければ、3人居たから
二徹明けの私が一人で行くより、早く終わるのに…と思った…。
アシスタントは仕事場に置き去りにして私だけ上京。

グロッキーで思考能力が低下している時に
セリフの相談をされて、なんだかわからないうちに
返事をしてしまい、途中のシーンのセリフが
担当さんの意向で「放さないで…」というものに変わる。
あれ本当は「行きたくない…」だから単行本では直したい。

途中、駅の便所(洋式)のフタの上や、新幹線車内で
原稿をやる。普段使ってる机は便利グッズなんだな〜と思った。
(便所で原稿やってる写真を撮ったのは、その時だけど、
それについての記事を書いたのは後日だから
原稿ほったらかしてブログ書いてたとか勘違いしないで。)

講談社行って、1人会議室に篭って誰とも喋らず
1晩で16ページ描いた。もう最後のほうは時間がなくて
一切下描きをしないで、ペンでそのまま描いた。
寝ていない体で、誰と話すでもなく、一人だけで、
アシスタントも居なくて、原稿は16ページも残っていて
途中で何度も気が触れそうになって、不安で呼吸困難みたく
なった。息をひたすら吸うしか出来なくて物凄く困った。
あのまま息を吐けなかったら多分白目剥いて泡でも吹いて
倒れたりして病院に運ばれたりしたんだろうなーと思う。
手とかも痙攣し出して、あーもーダメだーとか思ったけど
ダメだっつったって落とすわけにいかないから描いた。

登場人物の基礎貼りが終わっていない箇所があって、
仕方ないから、背景に貼ったトーンを剥がして
それを貼った。色々最低だと思った。

あと8コマになったところで、担当さんが来て、
あとどれくらい?と聞かれたので、8コマです、と
答えたら「たった8コマだから頑張ってください!」
と言われて、(言っていることは分かるんだけど)
なんだかわけもわからず悲しいのかなんなのか分からない
よく分からない変な泣きたいみたいな気持ちになった。

そのうちわけもわからず全てのコマが終わった。
それでもう終わった。なんかもうこれで連載が
終わってしまうんじゃないかと思った。
今まで描いた中で一番惨めな気持ちになった原稿だった。

2話目の原稿終わった後、編集長から
「あのネーム(小学生のやつ)、通ると思って描いたの?」
と言われたので「いいえ」と答えた。



欄外の近況欄のコメントを書いたら、
「これでは作家の個人的な感情が出すぎていて読者が引くと
思うので直します。」とリテイクが入る。

OKが出た文章
『取材で小田原に行ってきました。相模湾に面したよい街です。
以前お付き合いした人がこの街に住んでました。
別れてからずいぶん経ちますが、お元気ですか?
伝えられなかった一言のせいで、あなたを忘れられずにいます…
貸した金返しなさいよ。』

NGだった文章
『取材で小田原に行ってきました。相模湾に面したよい街です。
以前お付き合いした人がこの街に住んでました。
別れてからずいぶん経ちますが、お元気ですか?
伝えられなかった一言のせいで、あなたを忘れられずにいます…
「貸した金返しなさいよ。」…くやしい。』

NG基準がよく分からなくて結構悩む。


…ところで
2話目原稿終了後の後日記。
>しかし「ここまでダメか…!」というほど
>通して貰えるレベルのネームを私は切る事が出来ず、
って書いてあるけど、この文章書いた時、なんだろ。
「まさか何があったかなんて書けないしなぁ…」と思ったか
それとも厭味のつもりで書いたのか、それとも心底、
それはもう100%心底そう思っていたのか、なんかもう忘れた。

ただ、自分の原稿が遅くなっていて、編集部に迷惑を
掛けていたのは事実だし、あの日講談社に居て、
ヤバイ…っていう空気をヒシヒシと感じていたのも事実で
その時私を苛んだ申し訳の無さも事実で、だからこの後日記は
感情の面では嘘は書いてない筈。なんだけど、今は今で、
こんな記事書いてるから、そんなこと言っても白々しいかなあー…。

信じて貰えないかも知れないけど、今より新人の頃って、
良くないことは全部自分のせいで、良いことってみんな
編集部のお陰だと思ってしまう節が強くて
("そう思わないといけないんだ"って思っていたのかも。
それはやっぱり出版社っていう存在の大きさと、
新人漫画家っていう存在の小ささのせいだと思う。)
だからあの頃書いた日記は、きっと嘘では無かったと思う。

でも積もり積もって、そのうち初めて気付くの。
自分が怒っていたことに。
だけど「私は今、怒ってる」っていう自覚を邪魔するのが
"編集さんに(私なんかの)漫画を載せて貰ってる"っていう
劣等感。だから当時は今より感情の始末に悩んでた。

いや、自分の非を一切認めてないとかじゃないんだ。
「編集部が全部悪くて、私は強く怒っていいはず!!」…とか
思っているんじゃないから、それは勘違いしないで欲しい。
ただ、事実以上に、悪い結果の全責任が自分にあるのだと
考えてしまう節が、まあ、あったんじゃないかな…っていう事。

でもだからって言って、自分のネームに対する
「なにこれつまんない…」っていうのは今でもいつもあって、
理想どおりの面白い漫画が描けないもどかしさや
申し訳なさも常に感じていて。情けないなと思う。
あと、編集さんの話を聞いてて面白いって思ったり、
漫画業界が凄い(これは厭味じゃなくてね。)って思うのも、
それはそれで本当で、なんだか、うーん…
やっぱり今でも感情の始末に困る。不満も感謝も憤りも
不甲斐無さも面白さも嬉しさも虚しさもいっぺんに感じる。

原稿終了後、刷り出しを見て、それはもう
ガッタガタのグッチャグチャで死ぬほど恥ずかしくなった。

「絵が酷すぎる」「絵を何とかしろ」「読む気が失せる」
ってネットでも沢山書かれていて、そりゃそうだと思った。

そういえばこの回、乱丁本が出たみたいで、
それがちょうど私のところで、どうやらページを捲ると
たまたま小田原市が舞台の今回の羣青の途中から、
元々小田原市が舞台の小田原小鳩にワープしてるらしい。

原稿持ってく交通費出て、宿取って貰えるようになった。
1泊分のお値段が私んちの家賃みたいな部屋だった。
ちょっと悲しくなった。

編集部の人に「中村さんってレズなの?」と聞かれる。





38ページ/手取り原稿料361,000
アシスタント人件費:218,500
アシスタント交通費:45,760
画材(トーン等追加購入):24,120
作画資料:6,015
通信費:5,700
原稿直参交通費:1,370
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!


打ち合わせの最中にまた
「ゲイって誰彼構わずやりますよね」と言われて、
あれ、疑問形だったのが断定になったぞ、と思った。
ゲイが各自性病に気をつけてて、その性行為がレイプじゃ
なければ、担当さん自身も「僕に被害がなければ
同性愛者の存在は構わない」って言ってるわけだし、
別に知ったことではないと思うけど…。
漫画の役には立たないし、そう何度も聞きたい話ではない。


原稿中、突然、前回講談社で一人で原稿をやっていた時の
記憶がフラッシュバックして、急に全身がガタガタ震え出して
ペンを握ったまま硬直して手が動かなくなって息が詰まって
原稿を見るのが恐くなってもしまた原稿が間に合わなかったら
またあんなことになるんだ…と考えると益々体が強張って、
まったく動けなくなった。視界がチカチカして目が回ってきて
吐き気と頭痛に襲われてうわーもうダメだコレ
明らかになんかの病気でしょ…と思った。
困った。

でもなんか当時は、見てる編集さんや読者さんとかに
「また何かやらかしたんだ」とか思われるのが嫌みたいな
自意識が働いたりして、「今回は何もなかった」みたいなこと
ブログに書いた。ガタガタしなかった!みたいなこと書いた。

別に昔の記事で私の具合が良かったとか悪かったとか
手が震えたの何だのって、私がどっち書いたって
誰も何も損はしないと思うんだけど、ただでも、ちょっと嘘
書いちゃったのは事実だから、それはごめんなさいでした。

担当さんに「編集長のチェックを一度も受けていない状態で
ネーム通したから、校了の段階で修正が入るかも」と言われ
びびる。おまけに原稿届けた翌日は別件の作業だったから、
本当は1泊で帰らなきゃいけなかったんだけど、
「ホテルは2泊取ってあるので、画材一式を持ってきて
修正に備えてホテルで待機しててください」みたいなことを
〆切前に急に言われて、もう1つのほうの仕事どうしよう!
って物凄く焦った。(実はそれで結構ガタガタした。)

結局、別件のほうの編集部さんに連絡を入れて、
事情を説明して、「まあ大手さんだから…」って承諾して貰って
納品日をずらしてもらう…っていう最低なことした。

今思えば「そんなこと急に言われたって、
すぐまた別件の〆切があるんですけど」って正直に言えば
何のこっちゃなかったんだろうけど、当時は今以上に
"そういうこと言うと編集部に嫌われて仕事がなくなるかも…"
とか思ってたから、なんか言えなかった。バカだなー。
もっと全体的に「いろいろどーでもいーや」とか思ってれば
楽だったのになー。(でも連載開始当初からどーでもいーとか
思って生きてるのまずいか。まずいよなー。)

東京まで原稿を持って行く途中、新幹線で具合悪くなって、
山手線に乗り換えて、大塚駅で吐いた。
すごい恥ずかしかった。





38ページ/手取り原稿料361,000
アシスタント人件費:468,500
アシスタント交通費:110,020
画材(トーン等追加購入):48,431
作画資料:3,191
通信費:6,380
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!


身内の介護でどうしても仕事が手につかなかった日に
「今大変だからどうしても今週はネーム送れません」
みたいなただの業務連絡したら
「作家、中村珍にとっては、すべての経験が仕事のタネに
なるでしょう」と、漫画のセリフみたいな返事が来る。

そりゃそうでしょう…。
なんだろうこの…、わたし今まさに雨に打たれてるのに
「今日は雨でしょう。」って改めて天気予報された感じ…。
そんなこと百も承知だよ〜。みたいな…。

私が描く漫画どうせ暗い漫画だから、仕事のタネが
増えていくっていうことは、悲しいことが増えていくって
ことだから、仕事のタネはもう増えないで欲しいなー。
漫画描きたくて悲しい気持ちに挑むわけではないしなぁ〜。


エエさて2007年最後の掲載(になる筈だった)原稿の話。
掲載は12月20日(になる筈だった)。

「今回は編成の都合上28ページで」っていう連絡を受けて、
その後に「30ページでも可能」っていうページ数の指定を受けた。
30ページで、ネーム初稿を出したら、
「30ページでは詰め込んだ印象を受けるので32ページに変更」
っていうネーム直しの指示を受けた。11月半ばのこと。
年末進行の人手不足と、頁数の変更に不安を感じたので、
11月下旬に入って間もなくアシスタント探し。
で、無事にちゃんとした人が見つかる。ちょっと安心。

32ページでネーム二稿目を出す。
ストーリーの展開を考えて、「この路線で進むんだったら
これ以上直しようがないよなー」と思ったので、仮押さえだった
アシスタントのスケジュールを月末からに確定。
(原稿制作期間は2週間弱。)アシスタント各位に11月末日からの
勤務開始確定の確認を取る。

で、11月29日…
「32ページとしては完璧だが読み足りないので38ページに」
という指示を受ける。

"この路線で進むんだったらこれ以上直しようがない"っていう
私の読みは間違ってなかったけど、うわー、編集部の考え方が
ボンバイエなところ計算に入れてなかったーーーーー!!!

32ページのケツにドカッと6ページ足すならともかく、隙間隙間に
合計6ページを足すわけだから、例えば10ページと11ページの間に
1ページ足すと、今まで11ページだったページが12ページになって
12ページだったページが13ページになって…19ページと20ページの
間に1ページ足すと、今まで20ページだったページが21ページで、
22ページの下半分に大きなコマを足すと、22ページの下半分が
23ページの上半分に引っ越してそれでそれで…ってなるわけで、
当然各ページ各コマがちょっとずつちょっとずつ移動になるから
ネーム全体を総工事する必要があるわけで…。

しかもネームのどこ直すか具体的に決まってなかったから
見切り発車で原稿に着手できるわけもなく、…というか
ネームで手一杯になっちゃったから、作画指示なんか出せないし
予定してたアシさんたちにそれぞれ1〜2日ほど待機して貰う
ことにした。(もしその1〜2日でネームが通ればすぐに作画に
着手できるから。)…んだけど、結局その後、キャンセルした。
ネームの再構築がうまくいかなくて、なかなか通る気配がないし、
このままスケジュールを引っ張った挙句、万が一原稿作業を
開始できなかった場合に、私は賃金全額を保障できないから、
これは早い段階で他の現場を探して貰う方が賢明だな…と判断して
(アシさんたちにも生活があるわけで、うちに仕事がないなら、
他の現場を探してもらって、そっちで稼いでもらわないと…。)
結局待機手当(ただ待たせただけの日に対するお給料)を支払って
キャンセルさせてもらうことにした。
す…っごい痛手…。

ネームが難航して、12月に入ってからやっと三稿目のFAX。
OKが出なかったから翌日また四稿目のネームをFAXした。
ここでやっとOKが出た。
作業開始が12月4日。発売日12月20日。〆切11日。
「まあまだ〆切までに1週間ありますからね!」
担当さんなんか強気。原稿38ページ白紙。
アシスタントいない。

あ"あ"あ"あ"あ"

11月にキャンセルしたアシさんたちに一応
「まだスケジュール空いてたりしますか…?」って
確認を取ってみたけど、当たり前だけどみんな
他の現場で勤務開始してたし(そりゃそうだよ…)結局、
新しく他のアシスタントさんを手配することにした。

けど年末進行中だし急な日程だし、こういう条件だと
青年誌で即戦力になる人はまず間違いなく捕まらないので、
ほぼアシ初心者と未経験者で編成して臨むことになった。

最初から「いや、これどう考えても無謀でしょ…」と
思っていたけど、案の定無謀だった…。
結局その後もう具合悪くなって、やっぱまた手とか
ガタガタ震え出して、目眩するし頭痛いし息詰まるし
体動かないし不安で夜眠れないしで寝不足だしでも眠いし、
取り返しのつかない事態になる前にもう無理だってことを
伝えよう…と思って、〆切直前の夜中
「もうダメです、どうしようもありません」っていう電話を
担当さんにしたら、
「どうにかしてください」
って言われて、あーもーダメなのもダメだ…どうしよう…と
思って現場に戻って机に就いて、それで、まあ、翌日の朝、
モーニング編集部にうちのアシさんから
「中村が倒れました」っていうモーニングコールがいった。
っていう…。

その日の夕方、担当さんから、
「意識が戻られたようで安心しました。
印刷所のほうにはなんとか交渉しますので、(原稿)できますか?
そのー…(中村さんには悪いんですけど、みたいなことをここで
言われた気がする。)…もう一晩やってどうにかなっちゃう分にも
とにかく上がりさえすれば、白くてもいいんで、どうでしょう?」
と電話。

そうか、
倒れるだけじゃなくて死なないと原稿は落ちないんだ…。
と思った。


例えば脳の血管プツーンと切れる寸前まで行ったとして
それで実際死んだら悔やんでくれるんだろうけど、
スレスレまで行って、辛うじて死ななくて、原稿も上がって
漫画家も生きてさえいれば、喜ぶんだろうな。
もうひと息で死んじゃってたとしても。
やってることは同じでも結果が違えば悔やまないんだろうな。

本当に私の血管が思いっきり切れて死んじゃったりしてたら
周りになんて説明するんだろう。
私が「もう無理です、どうしようもありません」って
電話したことも、担当さんが「どうにかしてください」って
言った事も、担当さん以外の編集部の人きっと知らないよね。

後の電話で
「あの時(もう無理ですっていう電話をした時)の
 中村さん、なんか喋ってる感じがおかしいっていうか
 本当にヤバそうでしたもんねぇ」と言われた。

そうでしょう。そうでしょう。
作家、中村珍にとっては、この経験も仕事のタネになるでしょう。

結局、担当さんからの電話のすぐ後に編集長から電話が来て、
「ありがとう、そこまで頑張ってくれて俺は嬉しい。
もう今回はいいから、落とそう。」と言って貰えた。
私は、落とした事を申し訳なく思いつつも、
原稿の描き溜めを手に入れたんだと勘違いして、
一瞬ホッとしたが、それは無駄ホッだった。
「次号、
イッキに2本載せて落とし前つけてくれればそれでいいから。」

連載が打ち切られなかったことには非常に安堵した。
私の原稿の代原は、私の原稿だった。

12月末、現在のチーフスタッフと2人で
〆切前に雑に描いてしまった部分の修正作業をした。
それから1月に、2人のヘルプスタッフさんに来てもらい、
残りの背景を描いて、きちんとトーンを貼り、原稿を仕上げた。
(この時初めて来てくれた1名は、常勤スタッフとして、
今でも毎号、羣青の原稿を手伝ってくれている。)

「食費が大変だと思うので、何か食料の救援物資を送ります」
と言ってもらえたので、生まれて初めての編集部からの差し入れが
非常に嬉しく、「ありがとうございます、助かります」と伝え、
勝手にカップラーメンだろうと思って麺の到着を待っていたら
ヨックモックのウィンターギフトが届いた。
お上品…!!




48ページ/手取り原稿料494,000
アシスタント人件費:328,390
アシスタント交通費:68,000
画材(トーン等追加購入):47,323
作画資料:28,631
通信費:5,300
寝具(必要分追加):27,300
原稿直参交通費:2,090
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!


今更書き加えるのもあれだけど、画材っていうのは
一回一回で使い切るんじゃなくて、例えばトーンも
「今回はこれとこれとこれを使うからこれが何枚必要」
…みたいな買い方はしないもので、使う可能性のあるものを
きちんとストックしとかないとアシスタントさんたちが
いざ貼るってなった時にめちゃくちゃ困る。
色々試し貼りをしたりもするから、必ずしも全てのトーンが
無駄にならないっていうことでもない。失敗したトーンは
破棄するから、その分も実はバカにならない。
から、実際原稿に貼る分よりも余計に買っておくのが普通。
(あと、トーンを使う仕事はこの連載だけじゃないから、
他の原稿で使う分も多めにストックしておく必要がある。)
安いやつは1枚200円ぐらい。高いやつは1枚500円。

ペン先は1本100円。少ない日で1本、多い日で10本ぐらい消費。
グロス(144本)で買うと12,000円ぐらい。安い時は8,000円ぐらい。
あとは画材って言うと、ペーパーセメント(接着剤)とか
つけペン用のインクとかミリペンのインクとかスペアニブとか
トレーシングペーパーとか、ホワイトとかミスノンとか
カッターの替刃とかシャー芯とかメンディングテープとか
マスキングテープとかマスキングシート(5枚で800円ぐらい?)とか
色々。パソコンのプリンタインクも資料のプリントアウトで
毎月五千円〜一万円分ぐらいは消費する。これが結構痛い…。
とにかく紙とペン以外にも消耗品は色々あるのです。

いや、実際描かない人だと、画材の何万円って結構
びっくりするみたいだし、同業者さんでも、トーンを多用しない
作風の漫画家さんは本当にトーン代がそれほどかからないから、
トーンを貼りまくる現場や、少女マンガの現場(柄物のトーンの
ストック数が物凄い)を見てびっくりするらしいから。


この回で再登場したキャラクターの髪の毛のトーンを
貼る時間がどうしても捻出できなくて、危うく金髪に
なってしまうところだったけど、専門学校時代の後輩が、
週刊のアシ現場の仕事の合間を縫って、1日だけ東京から
来てくれて、そのキャラクターは茶髪になることができた。
良かった…。
この時の助っ人は現在うちの常勤スタッフとして
橋とか車とか、やたら面倒なものばかり描かされている。


担当さんに「また何か救援物資を送ります。」
と言ってもらえたので、今度は勇気を出して
「しょっぱいものがいいです…」と伝えた。
今度こそカップラーメン!!!!と思ったら
おかきだった。
遠まわしにラーメンに近づけようとしないで
はっきり「ラーメンください!」って言えば良かった。





44ページ/手取り原稿料418,000
アシスタント人件費:382,460
アシスタント交通費:42,330
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!





32ページ/手取り原稿料304,000
アシスタント人件費:265,390
アシスタント交通費:40,600
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!





23ページ/手取り原稿料218,500
アシスタント人件費:347,870
アシスタント交通費:70,240
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!





39ページ/手取り原稿料370,500
アシスタント人件費:379,000
アシスタント交通費:149,430
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!





40ページ/手取り原稿料380,000
アシスタント人件費:347,575
アシスタント交通費:62,950
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!





40ページ/手取り原稿料380,000
アシスタント人件費:290,200
アシスタント交通費:114,760
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!





32ページ/手取り原稿料395,200
アシスタント人件費:308,400
アシスタント交通費:85,510
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!

手取り原稿料が2850円上がった。




72ページ/手取り原稿料938,600
アシスタント人件費:948,560
アシスタント交通費:258,420
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!





36ページ/手取り原稿料444,600
アシスタント人件費:416,831
アシスタント交通費:69,330
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!





32ページ/手取り原稿料395,200
アシスタント人件費:880,748
アシスタント交通費:171,560
※上記以外に全員分の食費・家賃・光熱費などを含む生活費が必要です!!
人件費に作者の人件費は一切含まれていません!


常勤スタッフが立て続けに2名現場を離れ、
1名、追い込み時期に別の仕事が重なり4日しか現場に入れず
更に1名、追い込み時期に勤務不可能となった為
作業のほとんどをヘルプスタッフで回すこととなった。

ヘルプスタッフの地力が高い低いにかかわらず、
突然入った現場の作風に慣れるまでに時間がかかるのは
当然なので、(大抵帰る日ぐらいに慣れてくる)
現場の作画に慣れ切った常勤スタッフと比べて、
時間とコストは掛かる。(これはヘルプさんを責めてるん
ではなくて、そういうもんなんです。っていう説明。)

常勤スタッフが1人抜けた穴を埋めるのに、
ヘルプスタッフが1人居れば済むとは限らない。
抜けた常勤の(私の現場に於ける)力が大きければ大きいほど、
ヘルプが必要となる。今回の場合、常勤スタッフ4名の
穴を埋めるために、倍のヘルプスタッフを必要とした為、
人件費が通常の約2倍となっている。

又、一部スタッフの引退が決まり、一部スタッフも
自身の商業活動のため、私の現場での仕事に毎回参加
できなくなってしまった為、新人を数名雇用。(既に全員退職。)

新人時代は、戦力になるまでの間(狂ったように描けば1年程)
現場の役に立つ機会はほとんど無く、商業誌面に耐え得る、
読者諸氏が納得する絵を描けるわけでもない。
新人スタッフの勉強という利益を生まない作業に賃金が発生する状態
(現場が、交通費やお給料を払って習い事をして貰う状態)になるので
育つ前に退職になってしまうと、赤字以外は何も残らない。
これも結構痛手だが、10人採用して1人育てばカナリ運がいいほう。

都心部に住んでいる作家さんだと、日帰りで試しに呼んで
ダメだったらすぐ帰すっていうことをする人が多いんだけど
地方はやっぱり漫画家もアシスタントも少ないしで、
大抵遠方から呼ぶことになるので、日帰りってわけにもいかず、
宿泊して貰って何日か頑張ってもらって、判断している。
(1万円以上の交通費をこちらで払っているので、日帰りで
帰すっていうのも…なんだか…。だから最低3日は居て貰う。)
新人(候補)さんの出入りがあった時期の人件費は結構高い。
1人呼ぶとだいたい3万円〜8万円ぐらい。






※以下補足

まずは交通費について付け加え説明。
 作者は地方在住。(私的事情により上京不可。)
 アシスタントの人材は都市部に集中しており、即戦力を
 必要とする場合は地元の人材を呼べない為(募集はしているが
 地元からは応募が無い。)、主に東京・千葉・埼玉・神奈川から
 呼ぶ。一人あたりの交通費平均額は往復で15000円程度。
 高い時で一人の交通費が往復3万円弱。
 (1万円強の範囲内で来れる人が誰もいない場合は止むを得ない。)
 交通費の欄が高額なのはこの為。

 スタッフの急なキャンセルや体調不良などで人手不足に
 なった場合、同じ日数分働いてくれる臨時スタッフが居れば
 交通費は1人分で済むが、そう簡単に同条件の人は見つからない。
 例えば5泊6日予定のスタッフの穴を埋めるとき、
 5泊6日分入ってくれる臨時スタッフが居ればそれで済むが、
 居なければ、1泊2日を2人、2泊3日を2人…等という雇い方を
 しなければならない。これで交通費がどんどん上がっていく。

 編集部から〆切を間違えられて伝えられた時なども
 現場のスケジュールがごっそり変わるので、
 急に人手が必要になったりする。
 しかし急にヘルプアシスタントを探したところで
 纏まった日数入れる人はそうそう居ない為、
 大抵の場合1〜2泊を数名雇用することになる。
 ここでもやはり交通費が思い切り跳ね上がる。


「この程度で済ませたい」という予算で収まって
「この辺に住んでる人」っていう地域に住んでいて、
「ある程度描ける人」…なんていう都合のいいアシスタントが
こちらの欲しい日数、欲しい人数、希望する予算内で、
見つかる保証は一切ない。

「人件費を減らせばいい」、と時々簡単に言われるけれど
減らせる条件が揃っていたら減らしてるに決まってる…。
そうすれば自分のお金が増えるんだから…。
「近くの人を雇えばいい」、とも時々言われるけれど、
居たら雇ってる…。そのほうが安上がりなんだから…。
地元の画材屋とかでチラシ配ったりもしたし、
探さないで居ないんじゃなくて、探したけど居ない。
居ればそのほうがいいんだ私も。

「賞与なくしたら?お給料安くしたら?」とも言われるけど
自分がどこかの会社に雇用されるときそれでいい…?

私とスタッフは、確かに仲はいいけど、独立した他人で、
それぞれの暮らしはそれぞれが背負ってる以上、
現場の経済苦しいからといって、安いお給料で
我慢しろだなんて頼むことはできない。
それは、いくら社長と社員の仲が良いからって、
会社の経営が厳しいとき、「ごめん、会社潰れそうだから
今月お給料20%オフでいい?」が通用しないのと同じ。

どうしてもすぐにお給料を支払えなかった時期、
1ヶ月以上支払いが滞ったことがあった。
待って貰って、現在は完済しているけれど、結局、
待ったせいでスタッフは暮らしが立ち行かなくなり、
待つために多くアルバイトに入らねばならず、結果的に
次の私の仕事には殆ど入れず、現場は人が足りなくなり、
ヘルプで回すことになったので、翌月もっともっとお金が
足りなくなった。今よりもっとケチだった頃、昇給を
渋ったこともあった。これもまた、上記と同じ結果を呼んだ。
最低限は払わないと、結果的に出費は大きくなってしまう。

このお金の掛かり方は、現場にある様々な事情
(これを全部伝わるように伝えたら本1冊になってしまう)を
考慮した上で、(尚且つ「クオリティを落とされては困ります」
と編集部から言われていたという部分も相俟って)、止む無く
出て行った金額であって、これを削減できて一番嬉しいのは
私なので、私が出したと言う事は、出さざるを得ない金額だった、
ということ。

それから、ここに書き難い事情…例えば、私ではない誰かが
原稿にインクを引っくり返したら、描き直しにお金も時間も
当然掛かる。例えば、私ではない誰かが…………。と、この
"私ではない誰か"の部分は、普段表沙汰にはできない。
(…ブログに「今回はスタッフが○○しちゃって」とか
「今回は編集部が××して」とか「でも私も△△を失敗して」
…って、そんなのを毎回毎回事細かに書く人は居ない。でも
人間がやってることだから、周囲の人間が真っ青になるような
事件が起きることだっていくらでもある。)


編集部との遣り取りもスタッフとの遣り取りも、(今回の件は
大っぴらにしたけれど、)普段のものは大っぴらにできない。

更に、働いているからといって全てのスタッフの体が
漏れなく健康とは限らない。(不健康であった場合にも
それが現場の疲れによる急性のものとは限らない。)

更…に言えば、漫画家である私に度々急なスケジュール変更が
起きるので、当然、商業活動をしているスタッフ(私にとっては
スタッフだが世間的には漫画家)にも、同じような変更が起きる。
漫画家でもあるスタッフに急な原稿依頼はあった時などは、
当然そちらに支障があってはいけないから、こちらの現場も
それに合わせてスケジュール変更をすることになる。
動いているのは私のスケジュールだけではない。
私のスタッフが漫画家である時のスケジュールもまた動くのだ。


日々起きる様々なことが現場の経済やスケジュールを
左右しているので、読者諸氏には頭の中の機械的な計算を元に
物事を考えることを、せずにいて貰えたら非常に嬉しい。
私にとっても、スタッフにとっても、自分以外の人間が数名
居る。自分と、自分以外の人間全員がスムーズに全ての業務を
予定通り理想通りにこなせた状態になってやっと、読者諸氏が
頭の中で思い描いているスマートで機械的な現場の状態になる。
生身の人が動いている以上、機械的計算はなかなか通用しない。
(通用するなら、そのほうが儲かるので私も通用させたい。)


画材代の中には、スタッフに支給したペン先等も含まれている。
予算の関係上毎回は難しいが、消耗品を各自で負担して
貰うのは忍びないので、時々纏めて渡すのだ。
(スタッフの入る日数・頻度、現場への貢献度に応じて
3000円弱を1箱又はグロスという単位の10000円前後を1箱。
多く来る人2人に支給すればあっという間に2万円になる。
又、それぞれ愛用しているペン先のメーカーが違うため、
スタッフそれぞれに合ったものを用意しなければならない。)

現場の事情でどうしても使って欲しい画材を買わせる場合は
補助することもある。(パース定規等、1つ4000円弱する。)
テンプレート(円や曲線を美しく描くための道具)も
1枚2000円や3000円は当たり前。車などが頻出する場合に
避けられないので、これらも現場で必要に応じて購入する。
まとめて買うとあっと言う間に数万円になる。



以上補足。

後々補足するのも良くないかな、とも思ったが、
説明不足も否めないので補足させて頂いた。

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