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キャリワカ

佐藤恭一の“徒然”広告論「のれん ブランド 日本人」

ネットCMは衆院選惨敗の前触れだったのか?

自民党は戦う前からすべり落ちていた?

 ネガティブ・キャンペーンは、自分の長所や意見を訴えるというのではなく、競争相手の能力や性格を否定することだけに注力する広告・広報戦略です。したがって、政治の世界に限らず、その領域のトップに位置するところが採るような方法ではないとされています。それは第二位、第三位のポジションにいる人や組織が、トップの足をすくい、権威を失墜させる戦法です。今度の選挙でネガティブ・キャンペーンを展開した自民党は、戦う前に自ら第一党の座からすべり落ちていたと言えるのではないでしょうか。

 一般的な広告におけるネガティブ・キャンペーンは、競合商品に対する誹謗(ひぼう)・中傷と紙一重でもありますから、比較広告さえ敬遠されている我が国においてはほとんど行なわれていません。だからこそ効果的だという声も聞こえてきそうですが、自民党の場合はかなりの逆効果になってしまいました。

 結果論ではあります。しかし衆院選惨敗の前触れは、そんなところにも潜んでいたと振り返ってみていいと思います。

 議席を極端に減らしたものの、私は三種類のアニメーションCMの狙いと民主党を揶揄(やゆ)したユーモアについてはかなり評価しています。投げ込まれた騒々しいパンフレットは別にして、非常に多くを失った自民党の数少ない成果の一つが、ネットCMを流したことだったと思っているくらいです。これを機に、政治広告が多様化し、表現の幅も広がっていく可能性があるかもしれません。

 本場のアメリカには豊富な例があるようですが、立候補者によるネガティブ・キャンペーン合戦は、ともすれば“泥仕合”になり、不毛な論戦や殺ばつとした結果を招きがちです。それでもなおネガティブ・キャンペーンが絶えないのは、人間が感情の動物であると同時に、それをコントロールする理性的な存在でもあるからでしょう。ただひたすら相手をひっぱたくだけではなく、大人びた判断(たとえばユーモアのセンス)を介在させることができるのです。それがないといけません。

 広告制作の現場では、「ネガティブ・アプローチ」というやり方がときどき採用されることがあります。広告メッセージを商品のメリットや機能から直接的に引き出さずに、わざと否定的な言い方をしたり、好ましくない状況を設定して逆に商品の価値を浮かび上がらせます。一見論理的のようですが、むしろ情緒に訴える手法です。

 よく知られた例では、サントリーウイスキーの「何も足さない。何も引かない。」とか、フジテレビの「面白くなければ、テレビじゃない。」など。そしてまた、古くて今日的なテーマ、「覚せい剤やめますか? それとも人間やめますか?」(日本民間放送連盟による公共広告)というCMコピーもネガティブ・アプローチです。

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