60周年 松竹新喜劇はいま 普遍的テーマを現代の切り口で
涙と笑いの松竹新喜劇が、劇団創立60周年を迎え、記念の公演が大阪松竹座でにぎやかに行われている。しかし、かつて藤山寛美時代は一年中公演が行われていたものだが、近年は公演回数が減少している。「なんとか次代にこの財産を」。劇団代表の渋谷天外ら劇団員の思いは熱い。新喜劇の“いま”を探った。(亀岡典子)
通りをはさんで隣同士に住む犬猿の仲の2人。ところが、互いに相手が金に困っていると思い、それぞれ内緒で金を用立ててやろうとするのだが…。
今月、記念公演で上演されている新喜劇の名作「裏町の友情」。互いの家にこっそり金を置いてこようとする渋谷天外、高田次郎のユーモラスな演技が下座音楽にのって展開。観客は、大笑いしながら温かな人情に涙をにじませる。
「うちの芝居は大阪の人情を新喜劇独特の演技術で描いている。ほかのどこにもないスタイルです」と天外。松竹新喜劇文芸部で、「裏町の友情」の補綴をつとめた米田亘さんも「人間をシビアな目で見ながらもう一歩突っ込んで悲劇の裏にあるものまで描いている」と新喜劇の魅力を語る。
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戦前、喜劇のルーツといわれる曽我廼家五郎、十郎の流れを汲むさまざまな劇団が活動。昭和23年、「五郎劇」「松竹家庭劇」「劇団すいと・ほーむ」が合体して、二代目渋谷天外、曽我廼家十吾らを中心に「松竹新喜劇」が旗揚げされた。
なかでも昭和40年代から60年代にかけての寛美時代は爆発的人気で、寛美は年中無休244カ月連続公演という前人未到の記録を達成した。
当時、寛美の相手役を数々つとめた小島秀哉は「自分で言うのも何ですが、そりゃあおもしろかった」と述懐する。秀哉が芸術選奨新人賞を受賞した「下積の石」。初演時、寛美と2人だけの場面の稽古(けいこ)は初日までなかった。「『けいこしたらおもしろないがな』とおっしゃって。こっちは不安ですよ。でも板に乗ったら藤山先生はリードがお上手なのでこちらは合わしていける。最初の本は薄かったが、再演を重ねるうちにせりふが増えて、いまは初演の3倍ぐらいの量になっていると思いますよ」
観客からリクエストをもらってその場で演目を決める「リクエスト狂言」では、いったん決まった演目を寛美が上手に観客を誘導して変更することもあった。小島慶四郎はいう。「そうなったら俳優やスタッフは大あわてですよ。自分は出んでええと思って風呂に入ってた役者がまた化粧して衣装着て…。そこに緊張感が生まれる。藤山先生はいつもマンネリということに気をつけておられました」
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そんな新喜劇も、平成2年に寛美が急逝。翌年、三代目渋谷天外らをリーダーに“新生松竹新喜劇”として再スタートを切ったが、次第に公演回数は減っていった。もちろん、時代の変化もある。しかし寛美の抜けた穴はあまりにも大きかった。
新喜劇は、平成という新しい時代に合った喜劇をと、積極的に新作をかけたり、客演を招いたり、わかぎゑふら小劇場演劇の演出家を招いたりと、てこ入れを重ねた。しかし、現在は年に約1回の公演となっているのが現状だ。
「涙と笑いは普遍的。ただ、そこにいまの時代をどう盛り込むか。派遣社員、老人問題…切り口をどこに持っていくかだと思う」と米田さんがいえば、天外も「もう一度原点に戻って、新喜劇の名作を現代に合ったテンポで上演したい」と力を込める。
新喜劇は名作ぞろい。それを役者が魅力的にふくらませることができれば、まだまだ活路はあるはず。新喜劇60周年。ぜひとも、次代に大阪の文化をつないでいってもらいたい。
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