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社説:自民党 「負けっぷり」も良くない

 自民党再建に向けての本格的な論議の端緒と期待された8日の両院議員総会は、麻生太郎首相ではなく、若林正俊両院議員総会長で首相指名選挙に臨むことを決めただけで終わった。野党とはいえ、党首以外の首相候補は極めて異例だ。肝心の総選挙の総括論議は先送りされた。

 55年の結党以来、自民党はほぼ一貫して政権の座にあった。それだけに、野党転落の衝撃度は大きい。この日の議員総会でも、麻生首相は「我々は戦う政党として改めて決意を新たにする」と述べるにとどまった。選挙総括と敗因分析を避けているようだ。毎日1回はあった「ぶら下がり取材」も、最近はめっきり減った。せっかくの国民への説明機会を自ら閉ざしている。

 総選挙前に麻生首相が口にした「負けっぷりの良さ」は、まったく感じ取れない。選挙総括、敗因究明なくして、賢明な党再建策が打ち出されるはずもない。前向きな議論を引き出すことが、麻生首相に課せられた最後の務めのはずだ。

 冷戦構造と高度経済成長の終えんで自民党の歴史的使命は終わった、ともいわれている。しかし、政治改革の大きな柱となった衆院への小選挙区制の導入は、政権交代可能な2大政党制への移行が主な狙いだった。政策本位の政党単位による選挙を経ることで、緊張感ある政治状況を作り出すことに意味があった。

 小選挙区制による5回の総選挙を経て、政権交代は実現した。その一方で、真の政党主導選挙にはまだなっていない。特に自民党は、個人後援会主体の選挙に慣れ、人材供給源の拡大にも努めなかった。結果として2、3世議員が目立つようになった。4年前の総選挙で大勝利した自民党は、党首の人気に過剰な期待を寄せた。人気が無くなると、その都度、交代させ、短命政権が続いた。結局、最大の売りだった「責任力」もアピールできなくなった。

 指導者の育成を依存してきた派閥も衰退し、自民党は代わるべき育成システムも見いだせないでいる。政策レベルでも、「小泉改革」の総括をあいまいにしたことから、民主党の仕掛ける「マニフェスト選挙」に太刀打ちできなかった。民主党に対抗する旗探しが急務だ。

 野党に転じた以上、鉄のトライアングルと呼ばれた「政官業」による、集票マシンも大幅に機能低下することを覚悟しなくてはならない。マスコミ各社の調査によると自民党再建への期待度は6割を超している。万年与党の民主党、万年野党の自民党にすみ分けられた「新55年体制」となっては、政治改革は逆戻りしてしまう。目先ではなく、歴史的視点に立っての新生自民党が望まれる。

毎日新聞 2009年9月9日 0時01分

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