「行列のできる法律相談所」「ナニコレ珍百景」「ガキの使いやあらへんで」など、人気バラエティー番組のディレクターやAD(アシスタントディレクター)、AP(アシスタントプロデューサー)、さらにはドラマの助監督らを派遣する会社「スクイズ」。その経営者は1990年代を駆け抜けた元人気アイドル・木内美歩さん。4年前から資本金500万円の同社の社長として奮闘中だ。
「立ち上げた当時、私を含めて社員はわずか5人。でも今では約50人に増えました。だけど、収益のほとんどは人件費で出ていっちゃって利益が残らないのが玉にきずですね」
仕事は自ら開拓。だが、「アイドル時代のコネが使えるほど甘い世界ではない」と言う。
営業の合間を縫い、派遣先の制作現場にも顔を出す毎日。繁忙期は自らAPを買って出る。
「APは裏方の裏方。主にタレントさんのスケジュール調整です。人気のあるタレントさんほど忙しいので、収録が終わるまで大変ですよ。でも、現場は大好き。ピリピリした緊張感と達成感、それに、さまざまな方との出会いがありますから」
芸能界デビューしたのは13歳のとき。90年に「Miss Momoco」審査員奨励賞受賞をきっかけに、アイドル歌手の道を歩み、93年、ゴールデンアロー賞音楽新人賞を獲得した。
その後、テレビ、グラビアで活躍。96年にはテレビドラマ「変〔HEN〕」で演じた大胆なシーンが話題となった。写真集6冊、イメージビデオ4作品をリリースし、結婚を機に芸能界を引退した。
再び脚光を浴びたのは、2005年12月。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったライブドアの広報スタッフに採用されたのだ。
「マスコミ取材が集中していた広報担当の乙部(綾子)さんのマネジャーでした。でも、正社員じゃなくアルバイト。だから、同じ時期に当社のグループ会社の『ホームラン製作所』でも仕事をしていました。ライブドアに強制捜査が入った直後に退職したんです」
秋になったばかりだが、まもなく年末年始の特番の収録準備が始まる。
「特番が多いときこそ、全員が正社員である当社の力が発揮できるんです。だって、仕事に対して責任もって真剣に取り組むでしょ」
社員の平均年齢はハタチちょいと若い。将来のテレビ業界を背負って立つ企業を目指し、2児のシングルマザー・木内さんの挑戦は続く。