2009年9月10日
突然高座に現れてジョーク集を披露する立川談志=篠崎写す
糖尿病のため年内の仕事をキャンセルして入院・療養中の落語家、立川談志が5日夜、東京・吉祥寺の前進座劇場で開かれた「立川談志一門会」に突然出演し、客を驚かせた。
一門会には立川文都、志遊らが出演。当初は談志がトリの予定だったが、入院を受けて弟子の志らくが代演することになり、劇場もその旨を入り口に掲示していた。
志らくの「短命」が終わっていったん幕が下りたが、その後、再び幕が上がって談志が登場した。ジャケットにジーンズという普段着姿の談志は「山の中の病院から抜け出してきました」とあいさつ。座布団にあぐらをかき、20分余りにわたっておなじみの小話やジョークを披露した。
談志はこの日、病院から一時帰宅し、医師とも相談の上で高座に出たという。
やや足取りが弱く、高座への上り下りも手をつきながらだったが、声には力があり、「病院から抜け出したとは思えないね」と自ら言うなど、談志らしさは健在だった。
楽屋では「3の力を持っていた人間が病気や何かで2の力しか出せなくなったら2のやり方がある、なんて言うけどね、そりゃウソだ。2になったら自分でも我慢できないんだ。3の時を聴いてた客にとっても、2なんて余り物みたいなもんだ」と語った。
文都も、実は闘病中だ。7月から出身地の大阪で治療に専念していたが、この日のために上京した。談志が突然駆けつけたのも、文都への見舞いの色合いが濃い。楽屋でも文都を気づかう場面が何度もあった。
人騒がせなサプライズ出演はいかにも談志らしいが、その裏にある弟子思いの優しさも、めったに見せないが談志の確かな一面だろう。
所属事務所では「今回はあくまでも例外的な飛び入り。年内は療養するとの方針は変わらない」としている。(篠崎弘)