新政権の人事をめぐり、民主党の鳩山由紀夫代表が苦心している。当初、週内にも内閣の顔ぶれを固める意向だったのを、小沢一郎代表代行の進言を受けて15日以降に先送り。藤井裕久最高顧問の起用で最終調整に入っていた財務相人事も、小沢氏サイドから横やりが入り、流動的になっているのだ。こうした“人事介入”に屈し続ければ、二重権力批判が強まる可能性もある。
「人事が気にかかるだろうが、一番身近な者が権利を主張すると波紋を呼ぶ。『鳩山は冷たいな』と思うかもしれないが、勘弁してほしい」
鳩山氏は10日、国会近くの個人事務所で開いた自身のグループの会合でこう語り、「産みの苦しみ」を表現した。
まず、人事を決めるはずの時期が二転三転。総選挙前は主要閣僚を決めたうえで「政権移行チーム」を組む方向だったのが、投開票日の8月30日には「組閣後に電光石火で」に変更。その後は連立合意後の今週内にも決めることを検討していた。
しかし、鳩山氏は10日、党本部で小沢氏と会談し、国会と党役員の人選を担う小沢氏が「政府・与党の人事は一体で行うべきだ」と求めたため、今度は党役員人事が決定する15日の両院議員総会以降に閣僚人事を固める方針に傾いたのだ。
民主党関係者はこの経緯をこう解説する
「政権移行チームの話は、小沢氏が『なんで人事を自分に相談しないのか』と言ってひっくり返した。また、15日への先送りは、人事を再調整する時間を取ったのではないか」
その再調整の対象が、藤井氏なのだという。
鳩山氏は外相に岡田克也幹事長、国家戦略局担当相に菅直人代表代行、財務相に藤井氏という主要閣僚の構想を持っていたとされる。藤井氏も財務省関係者を交えて勉強会を開いていた。
しかし、小沢氏サイドから待ったがかかったというのだ。
ある小沢氏周辺は、藤井氏が旧大蔵省出身であることから「官僚出身者が古巣で大臣になると、改革がなあなあになるというのが小沢さんの考え。藤井財務相は疑問だ」と異論を唱える。党代表だった小沢氏が西松建設巨額献金事件に直撃された際、藤井氏が小沢氏辞任論を唱えたうえ、その後の代表選で非小沢系議員が担いだ岡田氏側についたことも「根に持っている」(同)とされる。
別の小沢系若手議員は「小沢氏は、財務省さえ押さえれば政権はどうにでもなると思っている。その役目は、国家戦略局担当相になる菅氏にやらせればいいので、必ずしも重量級を持ってくる必要はないと考えているのでは」と話す。
実際、藤井氏周辺からも「厳しくなってきた」との弱音が漏れる。
また、衆院議長には小沢氏に近い横路孝弘前副議長の起用が固まった。こちらは渡部恒三最高顧問の名前も挙がっていたのだが、ベテラン議員はこう打ち明ける。
「渡部氏は藤井氏と同様に小沢辞任論、岡田支持だった。意趣返しだろう。藤井、渡部両氏は最高顧問に留まるのではないか」
ただ、「主要閣僚である財務相人事を小沢氏側がひっくり返せば、『二重権力』の象徴的出来事といわれ続ける。そんなリスクは取らず、閣僚の顔ぶれは、鳩山氏が比較的自由に選んだ形にして、リーダーシップを演出するのでは」(永田町関係者)との見方もある。
果たして、鳩山氏はリーダーシップを発揮し、政治家主導を実現させるための最強内閣を作ることができるのか。