ここから本文エリア 政権交代@山形 高速道路無料化が波紋2009年09月11日 ∞民主公約の目玉政策 民主党が公約に掲げ、12年4月までに段階的実施をめざす高速道路の無料化。県内では観光客の増加などへの期待がある一方で、渋滞増や公共交通機関の利用客の低下などへの懸念もあるようだ。同党を中心とした連立政権の発足を前に、目玉政策が早くも関係業界に波紋を広げている。(藤木健) ●県外からの客に期待 観光関係者は無料化によって「県外客が増えるのでは」という期待が大きいようだ。 映画「おくりびと」の米アカデミー賞受賞に沸く酒田市。酒田観光物産協会の荒生満常務理事は「ETC千円割引でも相当の影響力だった」と強調。観光スポットの山居倉庫近くでは首都圏や北関東ナンバーの車が多く見られるようになり、遠方からの宿泊客も増えたという。「無料となれば、さらに客足が伸びる余地がある」と歓迎する。 それだけに「『おくりびと効果』はまだある。無料化実施は早いほどありがたい」。さらに「日沿道がきちんとつながれば、関西方面との交流も活発になる」とも。 一方、「ETCの割引効果は実感できなかった」という天童温泉協同組合の花輪敏則事務局長も、無料化には期待を寄せる。一律千円だと遠くへ行くほどお得感が大きい。「青森など本州の先端部は観光客が増えたようだが、内陸の天童温泉は素通りされてしまったのでは」と分析。5月の大型連休や夏休み期間も、劇的な県外客の増加はみられなかったという。 だが無料化なら、利用客は高速から降りる抵抗もなくなるとみる。「これまで素通りしていた人も、天童温泉に寄りやすくなるのでは」と、実施を心待ちにしている。 ●渋滞の増加に警戒感 運輸・物流業界は警戒感を抱く。「休日千円」のETC割引が始まった直後、5月の大型連休では渋滞が増え、物流に滞りが出たからだ。県トラック協会の幹部は「高速道路が無料になれば、これまで以上に渋滞が増える心配がある」と、不安を隠さない。 さらに懸念されるのは、運送料の低下だという。「無料化で物流コストが10%削減されるという話もあるが、現実的ではない」。業者は価格競争のなかで一部を除いて荷主に高速道路の料金の負担を求めなかった。「経営の合理化や運送時間の短縮など『持ち出し』で何とか耐えてきたのが実情。無料となっても、その分を値下げすれば適正価格にはならない」と話す。 昨秋以降、景気の悪化で物流も一気に減少したという。「景気回復の兆しも中央だけで、県内ではまだ実感できない」。それだけに、これ以上過当競争を続けるのはたまらない、というのが本音だ。 ●バス路線など「利用減心配」 公共交通機関の関係者も戸惑いを見せている。 「具体的に決まっていないので、シミュレーションはしづらいが……」と前置きしたうえで、県バス協会の安藤昭雄専務理事は「ETC千円割引でも、高速道路の混雑で定時運行に支障が出る例があった。県内では数分程度の遅れだったが、無料化でさらに混雑が起きては困る」と話す。 山交バス乗合課も「『高速千円』で利用客は1割程度減った」として、さらに減るのではないかと懸念を示す。同社のドル箱路線である山形―仙台の高速バスの運賃は片道900円。山形蔵王―仙台宮城の高速料金1600円と比べての割安感が強みだが、無料となれば、それがなくなる。「100キロ未満の路線での乗客の高速料金負担は20〜30円程度。無料化で値下げの期待があるのもわかるが、100円単位の値下げができるかどうかは何ともいえない」と困惑している。 キーワード☆民主党の高速無料化公約 高速道路の通行料金を都市部を除き、原則無料にする。交通量の少ない地方の高速道路を中心に10年度から段階的に実施し、12年度から「完全実施」。物流コストを減らして物価を下げることや、地方経済を活性化させることなどがねらい。無料化後、高速道路の建設費用は税金で賄うとしている。
マイタウン山形
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