ホメオパシーという言葉を聞いたことがあるだろうか? これは、200年前にドイツの医師サミュエル・ハーネマンが生涯をかけて確立した医療で、海外では既にかなりポピュラーになっている。
英国の国会では「最も安全な療法」と認められ、インドでは第1医学として用いられている。また、インド、ドイツ、南アフリカ、メキシコなどでは、ホメオパシーを専門として学ぶ大学もある。日本ではやっと近年になって少しずつ認知され始めているが、まだまだこれからという段階だ。
日本の医療の主流である近代西洋医学の常識から考えると、実に不思議な感じがする療法だが、実に興味深く、未来における新しい可能性を感じるものがあるので、2回にわたって紹介することにする。
取材したのは、日本ホメオパシー医学会に所属する小池弘人医師。現在、東京・四谷に開設した小池統合医療クリニックの院長として、幅広い医療方法を用いて体に優しい医療を実践している。
同種の法則
ホメオパシーの根本的な原理は、「症状を起こすものは、その症状を取り去るものになる」という「同種の法則」。例えば熱が出た場合、西洋医学では解熱剤を投与して熱を下げるが、ホメオパシーでは、これとは全く逆に熱を出す作用のあるものを体内に入れ、自然治癒力を活性化させる。
東京生まれ。1995年群馬大学医学部医学科卒業。医学博士。2001年、統合医療の世界的指導者アンドリュー・ワイル博士率いる米国アリゾナ大学統合医療プログラムへ短期留学、その後も統合医療の実践を研鑽。現在、東京・四ツ谷の小池統合医療クリニック院長。
つまり、「症状を抑制するのではなく、自然治癒力の後押しをすることによって心身とも健康になる」と考えるのだ。
ハーネマンが同種の法則に注目したのは、キナという植物がきっかけだった。この植物の樹皮はマラリア患者の特効薬として用いられていたが、キナを服用すると、発熱、悪寒、腹痛、下痢など、マラリアに非常によく似た症状を示す。そこからハーネマンは同種療法の研究に打ち込み、試行錯誤を経ながら、ホメオパシー医学を確立していった。
同種療法の考え方は非常に古くからあったようで、古代ギリシャの医聖ヒポクラテスも「同じようなものが同じようなものを治す」という言葉を残している。
小池医師もこう指摘する。
「同種の原理は特殊なものではなく、漢方にもあります。熱が出ると葛根湯を飲みますが、この中には解熱剤は入っておりません。その代わり、マオウやケイヒなど、熱を出すものが入っています」
「また、水気が多い場所に生える植物は、関節痛など、湿気が多いときに悪くなるような症状を改善します。同種の原理はホメオパシーに極めて特徴的なものですが、ホメオパシーだけに見られるものではないと、私は思っています」
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