単一の療法では明確な改善は見られなくとも、複数を組み合わせ幅広く用いることで、症状が緩和したり、進行が緩やかになったり、体や心が元気になったという声が生まれていることは、否定することができないのだ。何よりも、「まだやれる治療が残されている」という「希望」は、がん患者への大きな力となる。体にも優しい。
伝承医療、代替医療の持つ意義というのは、こうしたところにあると思っている。
西洋医学と併用して用いる
もちろんそこに潜む危険性に対しては、常に目を光らせておかねばならない。それは、患者の弱みにつけ込んだ金儲け至上主義である。「がんが治る」という謳い文句を打ち上げて、サプリメントを売りさばく業者がいることは、残念ながら事実である。
だけれども、それでも、伝承医療や代替医療と呼ばれているものが無価値であるかというと、そうは思わない。
西洋医学的な発想からだけ医療の価値を測れば、作用機序やエビデンスが薄いものは意味がないのは当然だが、医療というのは、作用機序やエビデンスだけで推し量られるものではない。
例えば、鍼にしても、その柱となる概念の「気の流れ」というのは、いまだにはっきりした実体としては解明されてはいない。けれどもなぜか鍼を打つと痛みが和らいだり、症状が改善することを、多くの人が「実感」しているからこそ、これだけ広く日本にも定着しているはずなのだ。
伝承医療や代替医療のリスクは、できるだけ少なくしなければならない。そのためには、その医療を万能のように考えることなく、近代西洋医学と併用して、客観的に見る必要がある。
だからこそ、今回の取材先は、いわゆる西洋医学を学んできた医学部卒の医者が所属する日本ホメオパシー医学会(※日本ホメオパシー医学協会とは異なる)のメンバーにしたのだ。ここが、ホメオパシーだけを医療方法とする人とは、違う。
余談だが、日本ホメオパシー医学会の理事長を務める帯津良一先生は、この「医療最前線」の22回と23回でも紹介したが、元々は西洋医学一辺倒の医者だった。
東京大学医学部を卒業して、東京大学第三外科、都立駒込病院などで、優れた外科医としてがん治療の最前線で戦ってきた。けれども、西洋医学一辺倒の限界を感じ、ホリスティック医療を取り入れるようになったのだ。
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