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【神奈川】

路線バス 横浜新道 すいすい

2006年9月1日

今井町のバス停では長い列ができることも多い=横浜市保土ケ谷区で

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 「この行列は何だろう?」。横浜中心部と藤沢方面を結ぶ「横浜新道」を車で走っていると、見慣れない光景に出くわす。有料道路なのに停留所があり、多くの人がバスを待っている。空港や地方都市に向かう「高速バス」なら分かるが、ここを走っているのは、つり革やシルバーシートがある普通の路線バス。「通行料金は払うの?」などと興味に駆られ、調べた。

 横浜新道にバス停があるのは、保土ケ谷区の「藤塚町」「今井町」「横浜ゴルフ場下」、戸塚区の「品濃町」の四カ所。相鉄バスの「横浜新道経由−東戸塚駅西口行き」が走っている。

 東戸塚駅を出発後、近くの川上インターから横浜新道に入り三キロほど走行。いったん一般道へ降り、再び横浜新道を使って同駅に戻ってくる。

 高速バス以外の路線バスが有料道路に止まるケースは、よくあるのか。横浜新道などを管理する「東日本高速道路」に聞くと「地方には、ちらほらありますが首都圏では、まれ」。県内では、ほかに「真鶴道路」の例があるぐらいだ。

 「有料道路の停留所なんて珍しいですね」。今井町のバス停にいたお年寄りの男性に話し掛けると、男性は「このバスなら東戸塚まで十分以内で行っちゃうから便利だよ。近所のバス停に保土ケ谷駅に行くのもあるけど、そっちは一般道を通る。三十分ぐらいかかるんだ」と重宝している様子だ。

 それにしても横浜新道は一般有料道路のため、普通車で二百円、路線バスは大型車料金の三百五十円がかかる。バスの乗客に通行料金の上乗せなどないのか?

 相鉄に聞くと「いただいてません。運賃の百七十−二百七十円だけです」と言う。

 同社によると、横浜新道を活用してきた歴史は古く、一九六二年に「横浜新道経由・横浜駅西口−戸塚駅」の運行がスタート。その後、八〇年に両駅間に東戸塚駅が設置されたのを受け、同駅を起点とする横浜新道ルートが設定された。

 大きな転機が訪れたのは二〇〇一年。五九年の横浜新道開通以来、無料で使えたインターに料金所が設けられたのだ。

 それまで横浜新道は、終点に近い戸塚料金所でのみ通行料金を徴収していた。途中には、いくつも料金を払わずに乗り降りできるインターがあった。東戸塚駅に近い川上インターもその一つだったが、ここに料金所が設けられ、相鉄も通行料を払うことになったという。

 事業者にとっては思わぬ負担増だが、値上げも難しかったという。相鉄によると「バスの運賃は一キロ当たりの距離換算で申請しており、有料になったからという理由の値上げは運輸局に認められにくい」。このため、運賃は完全に有料道路化された後も変わらない。

 ちなみに、この路線は平日で約六十五便を運行しているが、一カ月当たりの利用者数は約十一万一千人だそうだ。

 さて、経緯が分かったところでバスに乗ってみた。すると普通の路線バスが料金所のETCを通過したり、バス停に止まった後、低速ギアで懸命に、六、七十キロで飛ばしている走行車線に合流する瞬間が何とも斬新だ。

 「路線バスって、こんなに速かったの?」。快走するバスに揺られながら、そんな驚きも走る。 (井上靖史)

■速度出て渋滞少ないメリット

普通の路線バスが有料道路を運行するケースについて、横浜国立大学大学院の中村文彦教授(都市交通計画)は「首都圏では珍しい事例だがメリットは多い。もっと活用が検討されてよい」と指摘する。「有料道路は、ある程度、速度が出る上、渋滞も少ない。バスの利便性が高ければ、通行料金を上回る運賃収入を期待することもできるだろう。実際、名古屋や福岡で中心部の高速道路を走っている短距離路線バスの中には、利用者が多い事例がある」と話す。

 

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